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アクシデント 7


あれからどのぐらい時間が経過したんだろう。
寝返りを打ちたいけれど、
彼女の方を向くのは気が引ける。

背中に耳が付いたように、彼女の気配を察知しようとしているが
少しも音がしない。
まるで、彼女が消えてしまったみたいに。

そうだ、あれはすべて夢。
それとも、季節はずれのユーレイか?

まじで??

俺は、そぉっと、顔だけを彼女の方に向けた。
いる。
そこに、彼女は、いた。
こっちを向いて丸くなった体勢で、目をつぶっている。

安心した、ような
夢じゃなかったんだ、と、がっくりしたような。
そんな気分だ。

「名前・・・」
突然彼女が口をきいた。
「え?」
「あなたの、名前、聞いてもいいですか?」
彼女は、もう一度言った。
「ああ・・・」俺は彼女の方へ寝返る。
「言ってなかったよね。ごめん。ササキです。ササキコウヘイ・・・」
「ササキコウヘイさん?」
目をつぶったままで、彼女は聞き返した。
「そう。君は?・・・あ、、、」
そっか。

クスッと彼女は笑って、そして目をあける。
暗闇の中でも、わかる。
「コウヘイさん、、、」
彼女が俺の名前を呼ぶ。
なんだか、不思議な気分だ。
「もうちょっとそばに来てもらえませんか?」
「え?」
一気に動揺する俺。
「心細いんです、すごく・・・だめですか?」
「いや、だめってことないけど・・・」
いいんですか??

新手のナンパか?
いやいやいや。
そんな、体張って飛び出してくるわけないだろう!

「お願い。手をつないでいてください。。。」
彼女は、布団からそっと片手を出して俺へ伸ばした。
なんだか、切なくなって、俺は・・・
手を握った。
その手は冷たかった。
「冷たいね。寒い?」心配になる。
「うん。寒い・・・」
そう言ったかと思うと、彼女は俺の腕にしがみつくようにして
こちらの布団へ滑り込んできた。

え、あの、あ、ちょっと、、

「あったかい。ごめんなさい、こんなことして。」
彼女は体を俺の体にピッタリと寄せてくる。
「いや、別にいいけど・・・」
全身が、かちこちに固まる。
頼むから、頼むからおっきくならないでくれよ、オレ!

「これで、眠れそうです。ありがとう」
安心しきったように目をつぶる彼女の顔を間近で見つめる。
なんで、こんなにも俺に気を許してるんだ?
やっちゃうかもしんないぞ!

でも、できない俺。
それを見破っているような、彼女。

それにしても、
ああ、なんて
ここちいいんだ。
俺の体は、徐々に脱力する。

いつしか、俺も寝ていた。


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