non title

non title

アクシデント17


君のくちびるを開かせる。
まるで
甘くてやわらかいケーキを食べるみたいに
君のくちびるを味わいたい。
君はこれから俺がしたいこと、進みたいこと
わかっているのかな。

ああ、とってもおいしい。
俺は、君のケーキに夢中になる。
もっと食べたい、食べたいよ。

くちびるを少し離したその瞬間
彼女が言葉を口にした。
小さな声で、囁くように。
「こうしていると、なにか、思い出しそうなの。」

俺は一瞬固まった。
彼女は続ける。
「だから、もっと、してほしい。」
「・・・うん」
もう一度くちびるを重ねる。
けど、さっきみたいに気持ちが入らない。

彼女の記憶が戻るかもしれない。
こうして俺がキスすることによって
彼女は自分のことを取り戻すかもしれないんだ。

いいじゃないか。記憶が戻ることは彼女の望みだし、俺だってほっとする。
だけど、それは彼女を失うこと。
このままキスを続けたら
彼女を失うことになるのだろうか。

そんな俺の想いを知らない彼女は
思い出そうと必死なのか
俺にしがみついて、くちびるを強く押し付ける。
彼女の舌が、俺のくちびるから分け入って
俺の舌先を刺激した。
そして俺の背中に回した手は
誘うように動いて
俺の理性を剥ぎ取ろうとする。

このまま二人してキスに没頭して
流れに任せて彼女を裸にして
あんなところやこんなところも触って
彼女のカラダのあちこちにくちびるを這わせて
ひとつになって
彼女を気持ちよくして
俺も気持ちよくなりたい。

だけど、
彼女が「なにか」を見つけ出して、思い出して
さっさと着替えて
そそくさとこの部屋を出て行くのを想像したら
俺は、、、。

俺のキスとカラダは
閉じ込められた彼女の記憶を、取り戻す鍵なのか。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: