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玲子14~嘘つきな女~


『玲子さん、先日は楽しかったです。
プロジェクトが軌道にのらなくて、ちょっとヘコんでいます(笑)
玲子さんがなぐさめてくれたら、元気が出るんだけどなぁ。
また逢えるのを楽しみにしております。                北山』

私は早速返事を打つ。
『北山さん、メールありがとうございます。
私も最近ついてなくて、落ち込んでいるんです。
今週お時間があれば、お付き合いしていただけると嬉しいんですけれど。
ご都合をお聞かせください。                     久賀』


北山は、すぐに食いついてきた。
約束の木曜日に、北山と食事をした。
そのあと近くのバーのカウンターで、私たちは乾杯していた。

「玲子さんは、お酒強いね。僕より強いんじゃないかな。」にこにこして言う北山。
ほんとうに楽しそうね。どうやら慎司からは何も聞いていないようだわ。安心した。
「お酒呑みの女は、きらい?」甘えるような目つきで、アタシは誘う。
「ううん、そんなことないですよ。僕は好きだなぁ。
玲子さん、なにかあった?落ち込んでるってメールに書いてあったから。」
「ヘコんでいらっしゃるのに、私の相談にのってくれるの?北山さんって、優しいのねぇ」
「まあ、僕のは玲子さんに逢うための『言い訳』ですからね。気にしなくていいですよ。
で、どうしたんです?」心配そうに、覗き込む。
「実は・・・変な男につきまとわれて、困っているんです。」
「もしかして、ストーカー?うちの会社のやつ?」
「まだそんなにひどくないんだけど。会社の人じゃないわ。ちょっとした知り合い」
「で、どんな具合なの?」
「『会ってほしい』って、頻繁にメールがあって・・・断っているんだけど、諦めてくれなくて。
その人と、2人では会いたくないんです」
「何かされそうで、心配なんだね?」
「ええ。・・・なんだか、怖いの。」そう言って、アタシは、怯えた目で北山にすがる。
どう?ほっとけないかしら・・・アタシのこと。
少しの間、自分の手の中のグラスに目をやったのち、北山は、しっかりとアタシの目を見てこう言った。
「いつでも僕に言ってきてほしい。どんな些細なことでもいい。なにかあってからでは取り返しがつかないからね。・・・玲子さんの、力になりたいんだ」

こいつを手なずけておいて、損はないだろう。
何かの時に、役に立つかもしれない。
それにしても・・・と、アタシは思う。
女をそう簡単に信じてしまってはダメよ。女は、嘘つきなのよ。
やすやすと信じ込んで、鼻の下をのばしちゃって。
なんて、バカな男なのかしら。心から、ご愁傷様。


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