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玲子49～残り香～

どうなってもいいと思った。
とにかく慎司のものを、自分の中にねじ込みたいだけだった。
「ひとつになる」などという、生半可に柔らかなものではなく、慎司にねじ込まれるのだ。
そうしたら、そうしたら私は、救われるような気がする。
なぜそう思うのか、自分でもわからない。でも今はそれしか方法がないのだ。
一刻も早く、この苦しみから解放されたい。
幸いにも慎司は、私に何があったのかなどと尋ね気遣うような、余計で押し付けがましいやさしさは
持ち合わせていない男だ。
慎司のそういうところが好ましかった。
いつも同じ場所にいて、ずかずかと入り込むようなまねをしない、
慎司のそんなところが私は好きなのだ。
泣きながら服を脱ぐ女に、ドラッグを突きつけるような男。
なんて私にお似合いなのだろう。
自分も裸になって、ベッドに横たわる私の上に覆いかぶさってきた慎司にしがみつきながら、
頭の中で冷静にそんなことを考えていた。
慎司に、痛いくらいに突かれる。もっともっと突いて！壊れるぐらいに。
なにも考えられないぐらいに！
だんだんと、頭がもうろうとしてくる。意識が遠のいていく。
私の腕の力が弱まっていくのを見計らったように、慎司の動きがゆっくりとなって
私の耳元で囁きかける。その声は、とても、やさしい。
「玲子、聞けよ。今はイクことよりも、眠ること。ゆっくり眠るんだ。そばにいるから」

気がつくと、朝になっていた。
慎司はいなかった。傍らには慎司のぬくもりと、微かな匂いが残されていた。
慎司が手渡した薬はドラッグなんかじゃなく、睡眠薬だったのだ。
いつもの私じゃないことを電話した時点で察知して、慎司は用意してきたのだ。
きっと尚子のものだろう。
「どうしてよ、どうして・・・」
私は、しゃくりあげて、泣いた。
憎ませてほしい。もっと傷つけてほしいのに、なんでよ。
憎んで、蔑んで、それでも、欲しい。
私も、尚子と同じだ。
私は、私が軽蔑し、嫌悪している、あの女と同じなのだ。
そう思うと、自分がとても弱くて無力で、一人では到底生きていけない女だと
思い知らされた気がした。
でも慎司は、そばにいてくれない。朝になったら、私はこうして一人でいる。
私が慎司に、ずっとそばにいてほしいと懇願したら、慎司はなんと言うだろう。
慎司がもし、ずっといつまでも私のそばにいると言ってくれたら？
私は、喜んで飛びつくのだろうか。
慎司の残り香に鼻を擦りつけながら、泣きはらした顔で、私はぼんやりと思った。

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