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ヒトヅマ☆娼婦18


最後のデザートとコーヒーを水島さんはキャンセルして、ひとりでワインを飲んでいる。
もちろんあたしはデザートを平らげた。
その食べっぷりに
「僕のデザートも食べればよかったのに」と、水島さんが少し笑う。
「いいえ、自分の分だけでいいです」
「そうだよねぇ。太るよなぁ」水島さんの語尾がちょっと延びてる。
酔ったのかな。
「水島さん、酔ってませんか?」聞いてみると
「うーん、ここのところ疲れていたから酔ったかもしれないなぁ」と、椅子にもたれかかって答えた。
いつも隙がなくて頑丈な水島さんの胸の中が、ほんのちょっと柔らかくなったよう。
柔らかくなった水島さんの胸の中に、触れてみたくなる。

「さっきさ、」水島さんがあたしをまっすぐに見て話す。
「はい」あたしは水島さんの次の言葉を待つ。
「詩埜はカラダを委ねたいって言ったよね。だんなさんに委ねてないの?」
「・・・・」あたしは黙っていた。
「君はお金に困ってるようだけど、それでも愛人になろうなんて考えるタイプの子じゃない。
そんな君がどうしてこういう手段をチョイスしたのか、気になるんだ」
あたしがずっと黙っているので、水島さんはちょっと後悔したような顔になった。
「ごめん、立ち入った事を聞いた。今の、忘れて」
「いえ。いいんです。あたしとやっちゃん、、、だんなさんとは、、、その・・・
そういう関係がないんです」
「そういう関係?」水島さんが聞き返す。
「つまり・・・」水島さんが最後まで言わないうちにあたしは答えた。
「そうです。そういうことです」
「・・・そうか。そうなってから長いの?」
「知り合ってから一度もありません」
「一度も?!」水島さんは驚いて身を乗り出す。
「はい」
「・・・それって、どういうこと?」
あたしは小声になる。
「だんなさんは、、、その、、、、できないんです、、、そういう状態にならないっていうか、、、」
「・・・・なるほどね」
「だから、あたしがこういうことをするのを、だんなさんは嫌がっていないんです。
っていうかむしろ、その、、、したほうがいいよって、、、変ですけど・・・」
あたしは水島さんにここまで話しちゃっていいのかなぁと思いながらも、打ち明けていた。
「ふうん」
水島さんは興味深げに聞いていた。
「そういう男性と、よく結婚したね。というより、よく付き合おうと思ったね」
「やっちゃん、、、だんなさんは、すごく優しいんです。あたしのこととっても大事にしてくれるから。」
「でも、そういうことはできないんだよね?それで充たされているの?
そういうことって男と女にとって、男と女がお互いを知る上で、必要不可欠だと思うんだけど」
水島さんが真剣になる。
「詩埜がこうやって僕と契約して、昼間も働いているってことは、彼の稼ぎはたいしたことないってことだよね?で、なおかつそういうこともナシだと。
それでも関係を維持していることが、僕には信じられないんだけどね」
「やっちゃんは、学校に行ってるんです」
「学生?!」水島さんは驚く。
「公認会計士の資格を取るために勉強してるんです。
あたしは、そういうやっちゃんを応援したいんです」
「・・・へぇ。つまり君はだんなさんにカラダを張って貢いでるってわけだ」
水島さんが呆れたような、そして不機嫌な顔で言う。
「自分のために稼ぐなら理解できるけど、男のためになんて、いまどき珍しいね。
金もなくてセックスもできない男が、そんなにいいんだ」
「あたしは・・・あたしはやっちゃんがいないとだめなんです。やっちゃんじゃないといやなんです!」
水島さんに呆れたように言われて、あたしは言い返すような口調になる。

水島さんは黙ってしまった。黙ってあたしを、怒ったような表情で見つめた。
なんだか険悪な雰囲気。
沈黙の後、水島さんが口を開いた。

「君にそう言わせる、そのやっちゃんて男に会ってみたいよ」







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