このCDを買う何年か前にもJAZZ4EVERレーベルのカルテット作を入手していたが、特徴のないソプラノサックスを多用した今一歩の演奏だった。 それにめげず何故このCDを買ったかというと、バックのメンバーの素晴らしさに目がくらんで・・・特にピアノが全曲チック・コリアなのに。 特にチックのファンでもないのだけれど、言っちゃ悪いがあまり名の知れていないB級アーティストの作品にチック・コリアが参加していることに興味が湧いたのだ。 1曲目のイントロからチック・コリア・ブランド全開の個性に溢れたピアノの音に耳が自然と引きつけられる。リーダーのエイリンはアルトサックスを使用。 メンバーを先に述べておくとHERVIE SWARTZ(B)CARL ALLEN(DS)PETER LEITCH(G)LOUIS BAUZO(PER)EDDIE HENNDERSON(TP)同業者のVINCENT HERRING(SAX) といったオールスター編成アルバム。 チックのソロがきらびやかでやはり光っていますねぇ。 2曲目は急速調のLIMEHOUSE BLUESを元にした曲で、エイリンがAS,ヴィンセント・ハーリングがTSを吹く。 3曲目はスタンダード「YOU ARE MY EVERYTHING』。この曲はやはりトランペットのワンホーンが一番しっくりくるかな。3管編成でソロが廻される。 チック・コリアがここでも一等賞。 4曲目はリズミックなエイリンのオリジナル曲だが、エイリンのソプラノの音のピッチがあまり良くない。苦しげに聴こえて息がつまりそうな気分になる。前のアルバムでもそうだったが、この人のソプラノはとてもいいとは思えない。続くエディー・ヘンダ―ソンのソロがなんと晴々と聴こえれる事よ。そしてチックのピアノソロにて快晴になるのだ。 5曲目はハーリングの「FOLKLORE」エイリン、ハーリングの順でソロが展開されるが、ここはやはり雄弁で冗長すぎるきらいはあるが、ハーリングの方に軍配があがるかな? 好みの問題ではありますが・・・ 6曲目はエリントン「WARM VALLEY」エイリンのこのアルバムでの一番の出来ではないか?ピーター・レイチとのデュオでねっちり、こってりした厚手のアルトサウンドを聴かせてくれる。途中からリズムが加わって実にいい雰囲気のバラードが展開される。 同じ編成の8曲目「THE TOUCH OF YOUR LIPS」が次点かな? アルバム単位でみれば、あれやこれやせずにカルテットかせいぜいクインテット編成で スタンダードをもっと増やした方がよいアルバムに結果的には良くなったのかもしれない。 但し、ソプラノ抜きで。
2000年の初秋頃だったか、梅田ワルツ堂EST1店で出張の折買ったもの。 朝靄のかかったような中をテナーサックスを抱えた男がこちらに向かってくる情景の写真だが、テナーの代わりに斧かショットガンならば、恐怖映画のワンカットみたいなジャケットだと思う。CDケースもちょっと普通あまり使われないタイプのものだし、こんなところにも自費製作なのが表れている感じ。 ANTON JAZZレーベルのオーナー兼プレイヤーのANTON SCHWARTZのこの作品は2作目で、ワンホーンのテナーカルテットだし、「MIYAKO」や「ALONG CAME BETTY」「COME RAIN OR COME SHINE」「BORN TO BE BLUE」など好きな曲を演っているし、SJの輸入盤欄でも悪く書かれていなかったので、買ってみたのだ。 1曲目の「MIYAKO」は可も不可もなし、悪い出来ではないが、ショーター曲の神秘性を表現するレベルまで深い演奏ではない。 2曲目に幸福がおとずれた。いい曲に出会ったときの喜び、それが無名の若いプレイヤーのものだったら、すごく得をした気持ちになってくる。 出だしはちょっとグローバー・ワシントンJrの「ワインライト」に収められている曲に似ていない事もないが、サビからブリッジにかけて躍動的なテーマになって実に明るく楽しい雰囲気のいい曲だと思う。3、4曲目とオリジナルが続くがどちらも結構作品と演奏が対等のレベルでマッチしていて悪くない。 5曲目からジャズマンオリジナル、スタンダードが3曲続く。テナープレイヤーとしてのANTON SCHWARTZのお手並み拝見といった感じだ。 イントロからアレンジしていて、ラテンのリズムで演奏される「ALONG CAME BETTY」。そのプレイは圧倒的な個性は見受けられないが、ジャズに対するひたむきさ、情熱を充分に感じさせる演奏で、アメリカの若いローカルミュージシャンの心意気を垣間見る思いだ。ピアノのPAUL NAGELもスインギ-な演奏を披露。 「CHELSEA BRIDGE」は若干のビブラートをかかった丁寧な吹奏、「COME RAIN」はダウン・トゥ・アースな黒っぽいノリを披露。あくまでも中庸の路線で無理をしない等身大のプレイをしているのに逆に好印象を抱く。 10曲目は表題曲「THE SLOW LANE」こういうジョージア・オン・マイ・マインドみたいな少しカントリーテイストのする曲は個人的には苦手だが、これも悪い出来ではないと思う。最後にもう一度2曲目でプレイされた名曲「THE CURVE OF THE EARTH」が短く演奏されて終る。 録音は1999年11月2-4日 OAKLAND CA
エリック・オラム・フォン・スペレケレセンと呼ぶのだろうか? 正確な日本語表記がわからないまるでクラッシックのジャケットの様なCDだけど、STUNTからリリースされた前作もよかったので、このアルバムも発売と同時に買ったはず。 なんといっても大好きなテナー奏者ボブ・ロックウェルが前作に引き続き参加していたことが購買動機のほとんどと言って過言でない。 1曲目の「NEW ORLEANS」はほんのり甘い食前酒、キールの様に酔わせてくれるナンバー。SPRECKELESENのタッチは繊細でありながら音の粒立ちがよく、歌心に溢れている。 OLE RASMUSSENのベースソロも素晴らしい。しかしこの作品ピアノトリオはこの1曲だけで、本番は2曲目からといってもいいと思う。 2曲目はSPRECKELSEN流インプレッションズ「INITIATIONS」。 モーダルな奏法も安定した実力を発揮していて危なげがない。セカンドソロはボブ・ロックウェル・コルトレーンの登場。最近はややコンサバ系のプレイが多くなってきているロックウェルだが、この素晴らしいテナー奏者の実力の真価が一番発揮されるのはこういう曲だと思う。デイブ・リーブマンやグロスマンみたいにクロマティックなフレーズの多用やスケールアウトする事もなく、マイケル・ブレッカーの如く超絶テクニックを展開するわけでもないが、このボブ・ロックウェルというテナー奏者、テナーの王道を一直線に進んでいく男気溢れたプレイをいつでも披露してくれる。 こういうアップテンポのモード曲でも歌心のあるフレーズを紡ぎだしていて、テクニックの為のテクニカルフレーズを吹かない点も気に入っている。 3曲目のバラード曲「EVERYTHING HAPPENS TO ME」では、べた付かないハードボイルドな歌心でいぶし銀のテナープレイを展開。ビリー・ストレーホーンの「MY LITTLE BROWN BOOK」でもそう。ビタースイートなんだなぁ、表現が。そこに痺れるのである。 ミディアムテンポで演奏される「IF I SHOULD LOSE YOU」「NIGHT AND DAY」もエンターテイメントと創造性がうまくバランスを保った好演。 SPRECKELSENの作品、5曲目、6曲目はそれぞれブルース曲、モード曲と続くがピアニストとしての才能を垣間見れる素晴らしいプレイが聴ける。 でも一番耳に残るのはボブ・ロックウェルのテナーサックス。 全体的にカルテット全体のグループ表現としても高水準の現代メインストリームジャズの王道を行くような演奏が展開されていることに大きな評価をしてもよいと思う。 メンバーはERIK ORUM VON SPRECKELSEN(P)BOB ROCKWELL(TS)OLE RASMUSSEN(B) MICHAEL PAULSEN(DS) 録音は1999年1月21,22日 COPENHAGEN
MPBの1月号に掲載されていたのを見て興味深く思っていたCD。最初はジャケットの感じから70年代くらいの録音盤かなぁと思っていたが、新録と知って一層興味が湧いてきた。 いいタイミングで中南米音楽さんが20%OFFセールを実施中だったので、先週注文して届いてから毎日のように聴いている。 ジャケ写の様に、リズム隊+BS,TS,AS,TPのブラス陣にボーカリストといった布陣でブラジル音楽の名曲が演奏されていく。 ジョビン「O MORRO NAO TEM VEZ」エド・ロボ「CASA FORTE」と続きギターのGABRIELのオリジナル3曲目「DELMIRO Y ANINHA」のドリーミーなボーカルとブラスアレンジに60年代初頭のブラジルの卿愁が感じ取れ「これは、いいぞ!」と鑑賞に身が入りらインナースリーブを食い入るように見つめるが当然ポル語の為全くわからない。 4曲目ジルベルト・ジルの曲とあってエスニックな肉体の運動性の高めの曲・・・なんのこっちゃ?サビ部分で「TIM DOM DOM」にジョイントされてセルメン風テイストがなんとも心地よい4月の春風に吹かれているようで気分がウキウキしてくるような感じ。 シコ・ブアルキのバラード「CAROLINA」でクールダウンして、6曲目はインストナンバー。ジャズのような分析的な聴き方はブラジル音楽の場合、ほとんどしないのでこういう書き方はやめよう。 素晴らしい楽曲をほのぼのと、幾分ユルメなところもあるけど、要所要所はバッチリと決めた「GARRAFIEIRA」お薦めです、本当に。 今ジョビンの「LAMENTO NO MORRO」になった。 いい曲だわぁ、この曲! 一番のお薦めは3曲目です。お忘れなく! 録音は2002年
このアルバム、GERARD HAGENトリオの名義になっているが、数曲スペシャルゲストの形でゲイリー・フォスターが参加しているので、聴いてみたくて福岡の「キャットフィッシュレコード」から入手した。 ゲイリー・フォスターのレコードはウォーン・マーシュとの共演盤などを含めて数枚所持しているが、コンコードから90年代半ばに出たCDを最後に最近の演奏を聴いていなかった。 結構学究肌の奏者で昔、ジャズライフ誌上でサックスセミナーのページを担当していた事もあったはず。ジャズライフの最初のサックス講師は、ルー・タバキン、次がデイブ・リーブマンだったなぁ。いつかの号でフラジオの運指が掲載されていてそれを見ながら練習したのも懐かしい思い出。 このCDに話題を戻そう。 1曲目から3曲目はごく普通のピアノトリオの演奏と言っておこう。 悪くもないが良くもない、こちらの琴線に今一歩引っ掛かってこないのだ。 4曲目「YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC」でフォスターが参加してカルテットに。 以前より角が取れてより歌うフレーズをプレイするようになって、リラックスした雰囲気を味わえる。音色は70年代以降のコニッツに似ているか? 5曲目のバラード曲なんか、スタン・ゲッツがアルトを吹いているかのようなムーディーで味わい深い大人のバラード演奏。ヘイゲンのピアノもカルテットの方が映えて聴こえるのはこちらの思い過ごしか? 6曲目アルバム表題曲「FAR HORIZON」でも歌心満載のアルトプレイが聴ける。 瞬間的にはいる高音のノートはやはりコニッツや後期ペッパーの音色に良く似ていると思う。 7曲目はケニー・バロンの名曲「VOYAGE」プロフェッショナルな演奏と言っておこう。 ベースソロから始まる「I HEAR A RHAPSODY」ではヘイゲンのエバンス~コリア、ハンコックを消化したこのアルバムで一番のソロが聴かれる。続くフォスターのアルトも白人アルトサックスの伝統を感じさせるプレイ。 9曲目ショーターの「BLACK NILE」はやや期待はずれ。 好きな曲にはついつい高いハードルを要求しがちなのかなあ? 9曲目はヘイゲンのソロで、映画のサウンドトラックに使われそうな曲で幕を閉じる。 メンバーはGERARD HAGEN(P)DOMENIC GENOBA(B)JERRY KALAF(DS)GARY FOSTER(AS) 録音は1998年1月9,10日 LA
このCDも値段が高かったが、1991年末に大阪の「ライトハウス」から通販で入手した。 グロスマンのテナートリオという事で即買いを決め込んだ。 確かテナートリオはREDの「WAY OUT EAST」以来のはず。 アルバム収録曲はスタンダード2曲とジャズマンオリジナル5曲で以下の様な曲が・・・ 「MEAN TO ME」「REFLECTIONS」「WHIMS OF CHAMBERS」「IN WALKED BUD」「SOULEYES」「ANGELICA」「I FALL IN LOVE TOO EASILY」 この録音当時ほぼ完成したと思われるロリンズ7割コルトレーン3割の折衷スタイルで快調に吹き進んでいくといった感じで、アルバムの出来自体決して悪いものではない。 しかし、どうも引っ掛かるのである。 RED盤の一部や「LIVE AT SOMEDAY VOL.1」を除いて80年代後半のシーンにカムバックしてからのグロスマンのマナーに。 確かに一頃より安定したプレイが出来てバラードにおける感情表現も巧みになってアルバム一枚一枚の作品としての評価は一定の水準をクリアしているものがほとんどだろう。 でも何か面白くないのである。「ライトハウス」や70年代の少々エキセントリックな、時には鬼気迫る何が起こるか分からないハラハラ・ドキドキの怒涛のテナーブローイングや破綻してしまうのではないかと聴いているこちらが心配するような後先考えない天才性を感じさせる吹奏にスリルを感じグロスマンのファンになった私としては、なんか面白くないのだ。 老成といったら言いすぎだが、大人になった演奏パターンが読めてしまう最近のグロスマンのプレイに・・・
ほとんどのグロスマンのアルバムを収集するぐらいだから、大ファンを自称しても許されると思うのだが、大ファンだけについつい自分の好きなグロスマン像が肥大化して型にはめてしまっているのかもしれない。 ファンの勝手な思い込み、身勝手なのかも知れない。 でも、グロスマンのクレジットを少しでも発見したら今でも必ずCDを買っているが、ついつい期待してしまうのだ。 あの何かに取りつかれた様な切迫した、暑さで喉が渇ききって砂漠の中をオアシス求め、彷徨っている様な印象を抱かせる怒涛のサックスプレイが聴けるんではないかと思って・・・ 録音は1990年9月16日 PARIS
MONから昨年リリースされたトロンボーンのワンホーンもの。 このCDは寺島さんがオーディオ雑誌かなにかで誉めていたで、知って「サニーサイドレコード」から通販で入手した。 実は、トランペットやトロンボーンのワンホーン物に目がないのであります。 このCDはLUDWIG NUSSの4枚目のリーダーアルバムになり、現在率いているレギュラーカルテットによる吹込み。ピアノは兄弟のHUBERT NUSSが担当している。 アルバム表題曲の一曲目「UPS&DOWNS」はミディアムテンポの今日のような初夏を感じさせる晴天のような爽やかな曲調のナンバー。 NUSSのトロンボーンの音色はさすが、WDR BIG BANDで長年ソロイストとして活躍しているだけあって、まろやかでハリがあり、同時に煌びやかなところもある花形奏者タイプ。 2曲目ではやくも幸せがおとずれる。「NIGHT OVER LAKE TARAWERA」。 静かな湖畔に夕闇迫って、明かりと暖をとる為の焚き火の炎がバチバチと火の粉をなって舞い上がる。そのオレンジ色と濃紺に染まった辺りの景観が微妙なコントラストを描いている。去りし日々を回想しながらゆっくりと時間が流れていく静かな湖畔の夜。 そんなイメージの絵が思い浮かぶバラードナンバー。 3曲目はうって変わってラテンロック調のナンバーで賑やかに。 4曲目は唯一のスタンダード「ALONE TOGETHER」。 音色に魅力があり唄心もバッチリなのでこういう曲を吹いて悪いはずがない。 ドラムの硬質に取られている音と温かいNUSSのボントロの音の対比が良くて録音的にも素晴らしいのではないだろうか? 6曲目の「`TIL THERE WAS YOU」も青春時代を想い懐かしむような爽やかで少し感傷的なテイストをもつミディアムテンポの曲。 NUSSの吹奏はマイルド、スムース&ウォーム。 全9曲。LUDWIG NUSSの素晴らしいトロンボーンと統率力、レギュラーカルテットの一体感を満喫できるワンホーンものとしてお薦めしたい。 メンバーはLUDWIG NUSS(TB)HUBERT NUSS(P)JOHN GOLDSBY(B)JOHN RILEY(DS) 録音は2003年9月28日