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<あらすじ>
時代背景は1915 (
大正4 )
年、田舎の方では電気が十分に普及しておらず、停電はしょっちゅうあった。列車がレールを外れて脱線することもたまに起った。
主な舞台は長崎県。Kという小さな町に三階建ての洋館があり、屋根の上には巨大な時計塔が載っていた。そこで、6年前に殺人事件があり、その時の当主は行方不明になったきりだった。それ以降、だれも住んでいない。町の人からは幽霊塔と呼ばれていた。
この建物を元判事の児玉丈太郎が購入した。甥の北川光雄が下見に来た時、野末秋子という同世代の美人と出会い、光雄は一目ぼれした。彼女は、児玉にも気に入られ、彼の養子になり、幽霊塔に一緒に住むことになった。
そうこうするうち、光雄の許嫁・三浦栄子が他殺体で発見された。また、児玉が毒殺されそうになった。状況証拠は、秋子が犯人であることを示していた。彼女の疑いを晴らすため光雄は奮闘する。
<良さんの解説>
本書の原作は、アメリカのアリス・マリエル・ウィリアムソンという女流作家の小説『灰色の女』。これを黒岩涙香が日本語に翻訳し、それを江戸川乱歩が彼なりにアレンジした。1937年~38年に『講談倶楽部』に連載された。日本が中国に侵略を拡大し、アジア・太平洋戦争が始まる3年前に当たる。つまり、戦争中だ。
本書の基本は、幽霊塔そのものである。九州の大富豪・渡海屋市郎兵衛が別荘として建てた。彼の趣味で隠し部屋が、いたるところにあるのが特徴だ。時計塔の機械室には入れない。ゼンマイを巻いたり、時間を調整したりするのは、秋子にしかできない。
この幽霊塔で殺人事件、その他が起こる。また、ここには、渡海屋が貯めた金銀財宝が隠されているという噂があった。
基本ストーリーは、容疑者になった秋子を、真犯人を探すことによって救おうとする光雄の活躍である。養虫園という怪しげな蜘蛛屋敷に潜入したり、東京のモグリの医者に会ったり、東奔西走する。
なお、アニメ映画の製作・監督として有名な宮崎駿が、この作品のファンで、巻頭に16ページを使い、マンガで幽霊塔を表現している。
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