あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

京都島原殺人事件

京都島原殺人事件 ~京都島原殺人事件~


推理作家の沢木麻沙子は、縁あって京都放送のニュースキャスターを務めることになった
番組で取り上げる特集で、観光バスに乗って祇園の舞妓や島原の大夫を見て廻るバスツアーの取材に出ることになった麻沙子は、慣れない事に緊張しつつも仕事をこなしていった
島原で大夫道中を取材していると、大夫行列の最中、桔梗大夫が突然恐怖にひきつったような表情をし、そのまま奥に引き返してしまうというハプニングに出くわす
体調を崩しただけという話であったが、桔梗大夫が見せた尋常ではない表情に麻沙子は何か引っかかるものを感じた

数日後、ニュース番組の生放送を終えると事件の一報が飛び込んできた
桔梗大夫が亡くなったという
現場に急行した麻沙子たち番組スタッフ一行は、野次馬たち数人に聞き込み、ショーが終わって帰る途中で道端に倒れたという情報を得る
その後の調べで死因は、毒物のついた針で刺されたことによる毒物死ということが判明する

麻沙子は、桔梗大夫こと吉野千代の死の謎を探る為、千代の妹のさくら、同僚であった鈴虫大夫から千代の話を聞き出す
話によると、千代は失恋が原因で京都に来て大夫になった事、大夫になる前には有名代議士の娘の家庭教師や、テレビ番組のリポーターをやっていた過去を突き止め、千代の失恋相手として、冬川代議士、番組制作会社スタッフの上草二郎、制作会社社長の峰山修一、番組共演が縁のタレントの江木さとる…と次々と男性の名が挙がる
麻沙子は千代と関係があったであろう男性たちに近づくが、思うような成果が得られない
事件が進展を見せないなか、京都駅のコインロッカーで千代の日記を見つけたというさくらが京都駅で絞殺死体で発見されてしまう
現場から消えていた千代の日記には何が書かれていたのだろうか?

鈴虫大夫から千代が『61・7・17』と書いたメモを自室で撒き散らして悩んでいたという情報を得る
折りしも、麻沙子たちは、桔梗大夫の大夫行列を撮影したVTRをチェックしていると、客席から『7・17』と書かれた扇子が映っているのを見つけ、それを見た桔梗大夫が顔色を変えたことを突き止める

7月17日は祇園祭りである
一体、その日、千代の身に何が起きたのだろうか?
その日、千代と噂される男たちはそれぞれが仕事やプライベートで全員京都に来ていた
61年の7月17日に何かが起きたと睨んだ麻沙子は、その日に京都で何か事件が起きていないか調べてみると、2つの事件が起きていた
1つは幼児誘拐事件、もう一つは主婦失踪事件である
はたして一連の事件と、過去の祇園祭の日の事件は関係があるのだろうか?

美しき大夫が封印した祇園祭の日の出来事を紐解いていくと、そこには意外な事実が隠されていた…



~感想~
何人かの容疑者の名前が浮上してくるのが、そのうちの数名は動機があまりにも弱すぎて、とってつけたかのように容疑者として名を連ねているので、犯人の見当は大体絞り込めてしまう
犯行に至った経緯の裏には愛があったのだが、その部分があまり描かれていないのと、この事件自体が主人公の予測・推理のみで成り立たせていて、ラストになっても真相は明かされることがない
全体的に消化不良のような作品

という事で、私的評価は星【★★☆☆☆】2つです



◆この原作のドラマ化作品◆
平成2年12月1日放送
土曜ワイド劇場
『京都島原殺人事件・女性レポーターの観光案内・華麗な太夫道中のトリック崩し!』
出演/沢木麻沙子…加納みゆき/朝田克也…国広富之/狩矢警部…若林豪/江木さとる…北詰友樹/吉野千代…山本みどり/川村友子…山村紅葉/上草二郎…小野進也/冬川代議士…田口計/橋口警部補…伊庭剛/吉野さくら…大橋雅子 ほか


…ドラマの内容
テレビ京都の番組『京都再発見』のレポーターを務める沢木麻沙子は、カメラマンの朝田らと共に、島原の太夫道中を取材中、ショーの最中に桔梗太夫が突然怯えた表情を浮かべて舞台の奥に引っ込んでしまう場面に出くわす

翌日、撮影所でドラマ撮影している俳優・江木さとるのインタビューを終えた麻沙子は、帰り道、嵐山で一人佇む桔梗太夫こと吉野千代を見かけ、思い切って声を掛けるもたいした話は聞けずじまいであった

どうしても桔梗太夫が舞台上で見せた怯えた表情が気になる麻沙子はふたたび島原へと向かうと、そこはパトカーや警官たちで騒然としていた
ショーに出演していた桔梗太夫が舞台上で体調を崩し、舞台奥に引っ込むとそのまま絶命してしまったのである

姉の死を知って東京から上京してきたさくらや置屋の女将の話によると、千代が太夫になったのはまだ半年で、以前は、上草事務所というタレント事務所で江木さとるのマネージャーしていて、事務所を辞めてからは冬川代議士の秘書を務めていたという

数日前、千代から“大事な物を贈るから保管しておいて”と言われたというさくらと一緒に東京に同行した麻沙子
さくらが荷物を引き取りに管理人室へ行っている最中、部屋で一人で待っていると、突然後頭部を鈍器で殴られ麻沙子は気を失ってしまう
気がついて、真っ暗な部屋に明かりを灯すと、そこには目を見開いたまま絶命しているさくらの姿があった…


…ドラマの感想
小説で広がった枝葉をバッサリと落とし、展開や人間関係がコンパクトになってはいるものの、良い意味で簡略化に成功している
小説では満足に描かれていなかった犯人と太夫との恋模様もドラマではしっかりと描かれていて、ラストも犯人逮捕という形で幕を閉じる
小説で感じたモヤモヤ感を、このドラマを観てすっきりさせてもらった感じ
太夫を演じた山本みどり氏はとても美しく、太夫姿がさまになっていた
このドラマで山村紅葉氏は、原作にない京都府警の川村友子という役で出演しているが、とってつけたような役なので、しゃしゃり出ている感が強く、どうもいただけなかった




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