あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

黒百合の棺

黒百合の棺 ~黒百合の棺~


女性同士(レズビアン)の愛を誓った石田麻美と早川百合
その百合が、京都旅行へ出たまま行方不明となった
心配する麻美のもとに、一通の封書が届いた
その封書には、乱暴された百合の写真が数枚入っていた…

ほどなくして、百合が彼女の故郷でもある大分・別府湾で水死体となって発見されたという報せが入る
悲しみに暮れる麻美
遺体確認のために出向いた別府から戻ってくると、一通の手紙が届いていた
その手紙の差出人は百合だった
手紙には、京都旅行中に道に迷ってしまい、通りすがりの車に乗せてもらったのだが、その車に乗っていた5人の男性に次々と犯され、数日間のあいだ連れ回されて屈辱的な日々を過ごしたということが赤裸々に綴られていた
数日前に送られてきた百合の恥辱的な写真は男たちが撮影し、送りつけてきたのだ!

愛する百合を酷い目に遭わせ、死に追いやった男たちが憎い!
麻美は5人の男たちへの復讐を誓う
手紙には男たちの特徴は書かれていたものの、人物を特定する手がかりはない
手始めに、百合が京都旅行で宿泊をする筈だった旅館に問い合わせてみると、堀久美子という女性から百合宛に電話があった事を知る
久美子は、旅行中に雨でずぶ濡れになった百合に、上着を貸した女性だという
京都まで出向き、久美子に話を訊くと、5人の男たちのうちのひとりは久美子の恋人で、他の4人はその友人だということが判った
そのうちの一人は、タレントの野上次郎だという
百合の手紙には、ひとりの男の特徴として、“名前が思い出せないがタレント”と書かれていたので、まず間違いないだろう

1番目のターゲットは野上次郎に決まった
麻美は、百合と住んでいたマンションを引き払うと、美容整形を受け、名前も石野マリコと変えた
麻美のその美貌は人目を惹き、芸能事務所のスカウトを受け、女優デビューとトントン拍子に話は進み、野上次郎に接近すると、言葉巧みにホテルに誘い出し、殺害
遺体のそばには黒百合の花を添えた
それは、百合への鎮魂の意味を込めたメッセージであった

5人は日頃からつるんでいたのか、野上の存在が判ると、芋づる式に他の男たちの正体も判明した
会社社長、政治家の息子…
憎き男たちを、麻美は女の武器を駆使して、破滅と死に導いていく
その復讐計画は成功するかに見えたが…



~感想~
冒頭の残酷にまで生々しい性的描写は読むに堪えないが、ドラマチックな幕開きだけに物語の世界に一気に引き込まれる
一通の手紙だけを手がかりに始まった復讐譚
トントン拍子にうまい具合に話が展開していくのはご愛嬌か
ただ、中盤以降、復讐することだけが生き甲斐だった主人公にも心情の変化が現れ、自分の幸せを夢見るようになる
そのあたりから、物語の軸となる部分がぼやけてきた感は否めない
復讐と幸せを両天秤にかけるのではなく、どちらかに的を一本絞ったほうが、主人公が辿る道の悲劇性が高まったような気がする
物語は不完全な形で幕を閉じ、その後の展開がどうなったのか気になるような終わり方をしている
結局、復讐も成し遂げられず、幸せも逃した主人公…
“二兎追うものは一途獲ず”ということだろうか

という事で、私的評価は星【★★★☆☆】3つです



◆この原作のドラマ化作品◆
ありません




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