あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

京都大原殺人事件

京都大原殺人事件 ~京都大原殺人事件~


大学生の名木麻由子は、京都へと向かった
恋人のタケシに振られての傷心旅行である
以前アルバイトをしていたデパートで、客としてきた水尾悠子と親しくさせてもらっている麻由子は、以前から悠子に京都に遊びに来ませんか?と声を掛けていただいていたので、これを機に、大原にある水尾家を訪ねようと思ったのだ

水尾家を訪ねるまえに、大原を散策した麻由子は、三千院で松田文彦という京都大学の大学院生と知り合う
すっかり意気投合した二人は、京都観光の約束をして別れた

悠子が住んでいる水尾家は、麻由子の想像を絶するとても大きな邸宅だった
その大きな屋敷には、当主である水尾嵐をはじめ、長男の潮、長女のなぎさ、嵐の妹である霞、妾の小夜、長年仕えているお手伝いの生野に書生の奥山と、一癖も二癖もある人物ばかり
嵐の後妻として迎えられた悠子と長男長女は血が繋がっていないせいか折り合いが悪く、さらには一緒の屋敷に妻と妾を住ませるなど、常識的には考えられない複雑な人間関係が、水尾家には張り巡らされていた

深夜、離れの和室で休んでいる麻由子は、電話が鳴ったので無意識のうちに受話器を上げてしまう
親子電話であることに気づいて電話を切ろうとした麻由子だったが、受話器から漏れてくる会話を聞いて驚いてしまう
それは奥山が悠子に宛てた電話で、嵐を迎えに行った奥山が、滋賀にあるマンションで、死体を発見したというのだ
傍には愛人の杉田雪子も死んでいるという
それを聞いた悠子は、慌てて電話を切ると、車で出かけてしまう
その一部始終を麻由子はただ呆然と眺めていた

水尾家の当主水尾嵐は、愛人の杉田雪子とともに滋賀のマンションで服毒死体となって発見された
司法解剖の結果、雪子は嵐の子供を身籠っていたことが判る
死亡推定時刻が23時前後で、夜遅いこともあってか、誰しもがハッキリとしたアリバイがないなか、悠子のアリバイだけは、親子電話で話を聞いていた麻由子が証言をする

翌日、長男の潮が胸を刺されて死亡している状態で自室で発見される
しかも現場は密室だった
警察が部屋の中を調べたところ、嵐が遺した遺言状が発見される
それには、潮は自分とは血が繋がっていないため、遺産は渡さないことが明記されていた
潮が遺言状の中身を知り、その事に腹を立てて嵐と愛人を殺害し、自殺したのだろうか?

相次ぐ事件に巻き込まれてすっかり萎えてしまった麻由子は、松田に連絡を取る
松田と、今回の事件を担当している京都府警の中村警部補は顔馴染みであることから、外出を許された麻由子は、気晴らしに松田とともに観光へと出かける
しかし、話題は自然と水尾家の事件のこととなってしまう
そのなかで、麻由子は、松田の口から水尾家は呪われた家だという話を聞かされる
嵐の最初の妻で潮の母である静は、病死ということになっているものの不自然な点が多い
嵐の二番目の妻でなぎさの母であるしのぶは、交通事故で亡くなったのだが、車のブレーキに細工した跡があった
悠子と嵐の間に出来た長女の千早が、三階から誤って転落死したこと
と、水尾家に関係する人物が相次いで不審な死を遂げていっているのである
そして、今回の当主とその愛人、次いで長男の死…
その話を聞いて麻由子はすっかり気味が悪くなってしまった

そんななか、なぎさが腕を切られる事件が発生し、さらにはお手伝いの生野が、血の色に染まった湯船のなかで遺体となって発見される
生野の手には、麻由子のヘアピンが握らされていた…

京都での休暇を楽しもうと訪れた旧家で起こる謎の連続殺人
事件に巻き込まれた麻由子は、松田とともに事件を推理していく
その結果突き止めた真相の裏には、あまりにも哀しい真実が隠されていた



~感想~
京都の旧家を舞台にして起こる、複雑な人間関係が織り成す連続殺人
そして密室とアリバイのトリック
これぞ山村美紗!といった醍醐味が詰まった作品
細かい突っ込みどころはあるものの、先の展開が気になって一気に拝読した

どんな理由があれ、人を殺めることは許されることではないが、罪を犯した者が辿った運命が哀れで、読み終えたあと、なんともいえない暗い気持ちになった

という事で私的評価は星【★★★★★】5つです



◆この原作のドラマ化作品・1◆
昭和60年5月4日放送
土曜ワイド劇場
『京都大原殺人事件・三千院で出逢った女』
出演/名木麻由子…片平なぎさ/水尾悠子…山口果林/松田文彦…並木史朗/水尾嵐…金田龍之介/狩矢警部…井上孝雄/田沢洋一郎…小泉博/水尾潮…岡本富士太/生野…中原早苗/奥山…大門正明/杉田雪子…泉じゅん/水尾なぎさ…山村紅葉/小夜…志麻いづみ ほか


…ドラマの内容
銀座の画廊でアルバイトをしている名木麻由子は、顧客の一人である水尾悠子と親しくなる
悠子は京都大原に住んでいて、京都に遊びに来ることを勧められていた麻由子は言葉に甘えて、水尾家を訪ねることにする

水尾家を訪ねる前に、大原を観光した麻由子は、松田文彦という男性と知り合う
はじめは身構える麻由子だったが、松田の人柄もあり、二人はすっかり打ち解ける
松田の車で水尾家へと送ってもらった麻由子は、屋敷の大きさにただただ驚いてしまった

麻由子の訪問を、とても喜ぶ悠子
そんな悠子に屋敷を案内してもらうにつれ、麻由子は水尾家の複雑な事情を垣間見てしまう
水尾家の当主である水尾嵐の後妻として迎えられた悠子は、長男の潮と長女なぎさとは折り合いが悪く、さらには広い邸内には、嵐の妾の小夜が同居しており、常識では考えられない内情が、一見すると平穏そうに見える一家のなかには渦巻いていた

夜中、離れの和室で休んでいた麻由子は、電話が鳴ったので無意識のうちに受話器を取り上げてしまう
受話器から声が漏れたとき、親子電話だと気づいた麻由子は切ろうと思ったが、話しの内容に驚いてしまう
それは水尾家の奥山と悠子の会話だった
嵐を迎えに行くために琵琶湖畔にあるマンションに行った奥山が、嵐の死体を発見したという
傍には、嵐の愛人である杉田雪子も一緒に死んでいるという
それを聞いた悠子は慌てて電話を切ると、車で琵琶湖畔と向かう
その一連の様子を、麻由子はただ呆然と眺めていた

嵐と雪子の二人は、ワインに混入された青酸カリにより服毒死した
アリバイを聞かれる水尾家の面々たち
潮たちは悠子を疑うが、たまたま親子電話で会話を聞いていた麻由子の証言もあり、悠子のアリバイは立証される
そんななか、潮が自室のベッドの上で刺殺死体となって発見される
しかも部屋は密室状態だった…

京都の旧家を舞台にして起こる連続殺人…
複雑に入り乱れた人間関係…
密室、アリバイ、ダブルトリック…
自分にも嫌疑を掛けられた麻由子は、恋心を寄せる松田とともに事件を推理していく
すべての謎を解明したとき、そこには世にも哀しい真実が待ち受けていた…


…ドラマの感想
原作に比べると、役者さんたちの年齢設定が全体的に上のような気がするが、それでも、それぞれが登場人物のキャラクターにあっていて、ほぼ原作の世界観どおり
密室とアリバイのトリックも忠実に再現されていて、話の内容も無駄な枝葉は取り払われているものの巧みにまとめられている



◆この原作のドラマ化作品・2◆
平成10年5月23日放送
満開の桜の下で人が死ぬ土曜ワイド劇場
山村美紗サスペンス
『花の京都、美人姉妹の推理2~満開の桜の下に夫と愛人の死体が…・真犯人は妻か娘か息子かそれとも…』
出演/谷川百合子…とよた真帆/谷川すみれ…千堂あきほ/狩矢警部…小野寺昭/西条寺美佐子…安永亜衣/加藤鈴子…山村紅葉/西条寺夏彦…デビット伊東/西条寺冬美…南谷朝子/大垣一郎…遠藤憲一 ほか




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