極東の翼 -With beautiful sky-

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2008.12.08
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いきなりブレーキがリリースされ、体が座席に押し付けられます。

ドンドンと後ろに流れていく景色。この感覚たまらない!っと離陸の瞬間を楽しみます。

そして機体は宙に浮き上がりました。しばらくしてギアアップ。ドンドンと高度が上がって行き、

下には防府の町が見えてきました。一昨日通って来た道や、防府駅。空からの眺めは

最高です。ただ、天気が悪かったために、低空での気流は乱れており、常に機体が

揺れている様子。さらに、エアポケットに入り、急に体が浮き上がりました…。

これにはさすがに怖かったですが、小型機はこんなに揺れるものなのか!?とかも思いました。

さすがにだんだん慣れてきて、揺れも何てことなくなりましたが、酔うんじゃないだろうかと

相変わらずビクビクしていました。ちなみに同じ5波で出た先ほどの受験生は手を振った瞬間に

もう酔うとかは忘れていたとか(笑) 機は何重にもなった雲の隙間を縫うように上空に上がり、

ついに下層雲を抜け、中層雲との間に出ました。揺れもいつの間にかなくなっており、

安定した飛行になっていました。高度は大体6000~8000ft(約2000m~2500m)くらいの

高度で水平飛行に移行。ここで教官が飛行についての教示がありました。降下した時、

上昇した時の基準線(地平線・水平線)の見え方や、旋回時の基準線と翼の位置関係など

一通り教えていただきました。

「それじゃあ操縦渡すからね。You have control.」

「アッ…アイハブコントロール…」

緊張でガチガチになりながら恐る恐る操縦桿を握り、指示された操作をして旋回などを

やってみましたが、いまいち分からない…。何が分からないかというと、自分が操縦している

と言う自覚。ただ分かったのは、操縦桿がほとんど動かないこと。操縦桿を握って

みると、地上では全ての方向に 15cmづつくらいは動いていたのですが、

上空では数cmも動きません。まるで固定された棒を握っているように全く動かないのです。

これは、飛んでいる間は翼についた動翼(文字のまんま動く翼。気流に変化を与え姿勢を変える

飛行機はこの翼を動かして姿勢を変えます。)に当然、風圧がかかります。

水中では進行方向に手のひらを向けてを動かすのに力が要るのと同じようなものですね。

このとき翼にかかる圧力がそのまま操縦桿にかかるから操縦桿が動かないと言う事のようです。

ちなみにその圧力を舵圧と言うそうです。

もう1つ今回の試験で知った事なのですが、操縦桿は一度引いて、機体が上に向けば、

操縦桿を中央に戻せば上昇すると思う方が多いでしょう。実は間違いで、上昇し続けるには

上昇している間ずっと、操縦桿を一定の位置まで引いとかなければならないのです。

もちろんこの間も舵圧がかかるので、腕が辛くなってくるんですよね…。降下も同じ。

じゃあ筋トレすればいいじゃないか!って言う問題じゃなくて、この舵圧を無くしてやれば

良いのです。ここで登場するのがエレベータートリム。細かい原理はほっといて、

エレベータートリムを操作すれば上昇姿勢で操縦桿を固定したり降下姿勢で固定したり

出来るのです。逆を言えば、エレベータートリムを操作しているのに水平飛行を

キープしようとしていると操縦桿を中央位置に保たなければならないので、

動く操縦桿を押さえとかなければならないのです。と言うわけで次はトリムの操作の練習。

操縦を渡されて、先ずラダートリムの操作。続いてエレベータートリムの操作。

教官が機体が上昇するようにトリムを操作します。それに対して自分は操縦桿を離すと

上昇するので操縦桿を前に押し、機体を水平に保ちます。そして自分がトリムを操作して、

操縦桿を前に押さなくても済むように舵圧を抜いていきます。

続いてその逆。

「機体が降下しないように操縦桿を引いてね~」

と言われたので、操縦桿をめいいっぱい引くと当たり前ですが機体は急上昇を始めました。

体にかかる少し強いG。そして…けたたましく鳴る

失速警報…。パニックにはなりませんでしたが、焦りました。そしてすぐに教官が

「アッ…I have control!」

「You have control」と言う前に機体を水平に戻してもらえました(汗) そして

教官「驚いた?」

自分「は…はい…」

教官「でも、自分でやったんだからね~」

っと…。そして再び同じ練習をして、いよいよ検定課目の教示(デモンストレーション)。

教官が上昇旋回を行いながら、基準線の見え方など、細かく説明してくださいました。

続いて練習。手順などを言ってもらえるので、その通りに操縦していました。そしていよいよ検定。

「You have control」

「I have control」

操縦が渡され、上昇している機体にバンクをとります。教官は喋れないので

聞こえて来るのは無線のノイズだけ。

「右旋回行きます。ロールイン!」…「ロールアウト!」

「左旋回行きます。ロールイン」…「ロールアウト」

緊張で自分が正確に課目をクリアできたか分かりませんでした。

続いて、教官より「レベルオフ高度XX00ft」と水平飛行に移行する高度が指示されました。

「了解…高度…レベルオフ…XX00ft」と復唱したものの、テキストの通りではない…。

そして高度計、基準線を見つつ水平飛行になったところで教官に

「レ…レベルオフ終了……………………XX00ft」

とコール。高度計が読みきれず、指示されたままの高度を読み上げてしまいました。

そしてCP-1の全ての検定が終わり

教官「パワー忘れてたね。I have control」

自分「アッ!ぁ……You have control」

見事に手順を忘れてい、さすがにショックでした…。続いて水平旋回。

こちらも教官の教示と練習の後、検定を実施。やはり高度が下がったり基準線がブレたりと

納得の行かない飛行。そして最後の課目、降下旋回及び降下から水平飛行への移行。

教示、練習とやって行き、いよいよ検定。目標物や基準線は見えにくいまま…。

今度は手順も間違わずにやり遂げました。まさにやり遂げたと言う言葉がふさわしい。

緊張と興奮で頭は真っ白。練習で体に残った感覚で飛んでいたような感じでした。

操縦桿を教官に渡すと、色々な注意点を言われた後、「じゃあこれから基地に戻るからね~」っと

言われ、機体が高度を下げていきました。耳はギリギリ耳抜きが出来ない状態。

何とか耳の中の気圧を保っていました。更に高度が下がっていき、

地上がはっきりと見え出しました。初日に降っていた雪がところどころ残り、更に

紅葉した山はとても綺麗と言うか…優美でした。教官が「雪の中入るよ~」と言って

山の上にかかった雲の中に入って行きました。回りに見えるものは雲だけ。

キャノピーには水滴が付き、風で流されていく。上が明るくて下が暗い。

真っ白な世界。下には山。高度を上げては居ましたが、F-1のパイロットだけあって

こういうのは慣れているのでしょうか。雲を抜けると海に出てきました。

そして海側から基地に接近。基地が見えるとグーッと旋回していき、

きっちりと滑走路のど真ん中に合わせて着陸。技量の高さに感動。

進入角指示灯を見ていると尚更その技量の高さを思い知らされました。

着陸すると雨が降っていて、前席のキャノピーを教官が開けると水滴が飛んできました。

そのままピットに入り、停止。エンジンが切られ、そのまま指示を待ちます。

飛行幹部候補生の方がやってきて、キャノピーが開けられ、ヘルメットを取ると、

「袋拾って足のポケットに入れて」と言われたので、太ももの上部に付いた書類止めを

見ると、挟んでおいたお守りが無くなっているではないですか!見渡すと、床に散らばってました…。

使わなかったから良かったものの、もしも必要な事態に陥っていたら、袋に手が届かず、

機内にぶちまけてました…。終始酔うんじゃないだろうかと考えていたのですが、

昼飯セーブして損しました。


救命装備品室に戻って来ました。救命胴衣を戻そうとした時、声がしました。

「ブログやってるえぬわい君?」

ハッとして振り向くと救命装備品を扱っているOBの方…。

自分「はぇいっ!?」

「見られてるよ~全部(笑)」っとOBの方…。飛行幹部候補生の方も

「ブログ?何のことですか?」と言って聞いていましたよ…。ハハハ…。

教場に戻り、尿検査のコップをもらい、納得の行かず、後味の悪いフライトを終えて

肩を落としつつ、トイレへ行きました。

さて、以上でCP-1が終了したわけですが、天候悪化のためにCP-2は実施されず。

体は風邪やら何やらもろもろでクタクタだったので、丁度良かったのですが、

教場に戻るとみんな机に伏せて寝たり、元気の無い姿があちらこちらで見受けられました。

自分も飛んだ感想を他の受験生と話したりしていると、呼び出しがかかりました。

レインコートを受け取り若干名で医務室へ移動。医務室で眼圧(?)や色覚を調べられた後、

心電図の検査となりました。心電図を受ける前の待ち時間、うたた寝していたのは秘密(笑)

心電図は普通に横になって計った後、階段の昇降運動をやってから再び測定する

と言ったものでした。一通り検査が終わり、教場に戻り、しばらくして全員夕飯。

部活終わりのような雰囲気で飯を済ませ、食堂からの帰りにPX(売店)に寄って

石鹸を買って居室に戻りました。

そうして今夜も10時に消灯。また、パリッパリのシーツに挟まって横になりました。

横になると、フライトしている時のGの感覚がよみがえってきました。

「飛んだのか…」

実感の湧かないまま、疲れですぐに眠りに入っていきました。






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Last updated  2009.03.11 04:53:10
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