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第2話
魔導戦騎 リッタールベリア
第2話『知らない世界と
黒
い石』
―1―
「それじゃあ、説明してもらおうか」
燐と楓とヴェニティリオ、エアデとアルムと町長が机を挟んで対峙していた。
『あー、集団面接ってこんなかんじなんだろうなー受験まだだけど』
などと場違いな感想を燐が抱いていると、エアデから改めて質問が投げかけられた。
「なんであんな無茶をした?!あの魔導機は?!一体いつ契約を?!精霊について知らないと言っていたのは嘘だったのか?!」
「ちょ、ちょっと待って!」
矢継ぎ早に繰り出されるエアデの質問に燐がストップをかけた。
エアデはかなり興奮しているようで、町長やアルムも表面上は冷静を装ってはいるが、内心は疑問と疑心で一杯だった。
「まず、私から質問しても良い?」
「・・・・・・・・なんだ」
「魔導機って・・・・・・なに?」
「・・・・・・は?」
燐の口からでた質問は彼の意表を突いたものだったようで、彼の口から思わず気の抜けた声が漏れだした。
「だから、さっき説明しただろ?俺が呼び出せる機械の巨人だって」
「あんまりにもザックリし過ぎだから訊き直してんでしょ?!て言うか、自己紹介とかしないの?あんた!!」
「名前知ってんだから別に良いだろ」
「良くない!!」
「まぁまぁ、二人とも・・・・・・」
「そうね、まずは自分で名乗るのが礼儀と言うものじゃないかしら?」
楓が二人の仲裁に入っていると、アルムから提案が出された。
このままでは埒が明かないと思ったのか、ヴェニティリオが口を開いた。
「ヴェニティリオ・ブレンネア。属性は火。魔導機を召喚できる・・・・・・こんなんで充分だろ。」
まぁ、適当にヴェニットとでも呼んでくれ、と付け足して彼の自己紹介は終えた。
「だから、その魔導機ってのが分かんないんだけど・・・・あのエアデが乗ってたあれも?」
「えぇ、あれは私が呼び出せる土の魔導機、シルトティエラ。」
「本当に知らないのか?」
「はい・・・・私達がいた所には魔導機・・・・と言うか、精霊もいませんでしたし・・・・・」
「君達はアクナイトに連れて来られた、と言っていたが、何処に住んでいたんだ?」
燐と楓は自分達が日本出身である事、公園で寄り道をして、気付いたらアクナイトと呼ばれる男の下にいた事を伝えた。
すると、エアデから帰って来た返答は、ある意味予想通りの答えだった。
「・・・・・・ニホン?それは何処の地名だい?」
「は?えーっと・・・・なんて説明したら良いんだろ・・・・日本海って・・・・分かる?」
「いや、だからニホンと言うモノ自体を知らないと・・・・」
「・・・・カエデ?どうしたの?」
燐とエアデのやりとりを聞きながら、楓の曇った表情が気になったアルムが声をかけた。
楓は恐る恐ると言った感じで口を開いた。
「多分、恐らく、なんですけど・・・・ここは、私達がいた世界とは違う世界・・・・なんじゃないかな、って・・・・」
「楓・・・・・・」
「違う世界・・・・・・だと?」
「な、何を言ってるんだ?君達が・・・・違う世界の住人?そんな馬鹿な事・・・・」
「ありえない話じゃないでしょう?」
楓の言葉を否定しようとしたエアデの言葉をアルムの言葉が遮り、その言葉を町長が続けた。
「黒晶の例もある・・・・あれも異世界の産物だ。納得できない事もない」
「でも、あれは無機物ですよ?!人間を呼びだすなんてそんな・・・・」
「それで否定するなら、人間の転送だって不可能、って事になるんじゃないかしら?」
「それは・・・・・」
当事者である二人を置いてけぼりにして白熱する三人に、二人は思わず口を挟む。
「えーっと・・・・単語の意味が全く分からないんだけど・・・・」
「できれば、最初から全部説明してもらえると・・・・・・」
「そうそう、精霊について、とか、魔導機が何なの、とか・・・・・・」
その言葉を聞いて、諦めが悪いと言うべきか、慎重と言うべきか、改めてエアデが問い直す。
「・・・・本当に知らないのかい?魔導機を呼びだしておいて・・・・」
「あれはほとんど俺がやった。簡易召喚だったからフルコンディションじゃなかったけどな」
「こことは違う世界の住人なら、ここまで何も知らないのも無理は無いだろう?」
「エアデ・・・・そろそろ諦めたら?」
アルムと町長に諭され、納得はしないものの、話が進まないと言う事で、不本意そうに引き下がった。
それを確認し、アルムが話題を仕切り直す。
「それじゃ、まずは何がしりたいかしら?」
「えっと・・・・じゃあ精霊についてからお願いします」
おずおずと律義に手を挙げながら楓が問いかける。
その質問に先に答えたのは町長だった。
「精霊、と言うのは要するにあらゆる事象が具現化したものだ」
「すいません、全ッ然要せてないんですケド」
「じゃあリン、火とか水、風とか土とかは、分かる?」
「それはまぁ、うん」
「それが形をもったもの、と思って貰って構わないわ。多少ニュアンスは違うけれどもね」
「なるほど」
「燐、本当に分かってる?」
「んー・・・・・・あんまり?」
「・・・・・・だと思った」
燐の答えが予想通りで、楓はがくっとうなだれた。
その質問に燐が続く。
「んじゃ、さっきちょっと言ってたけど、契約ってのは?私とベニットに関する事?」
「ん?」
ヴェニットが燐の発言に違和感を持ったようだが、それを追求する前に議題が進んでいく。
「契約と言うのは、人間が精霊の力を借りる為に必要な儀式だ」
「契約する条件としては、人間側の紋章が空いている事と、紋章の図形と精霊の属性が一致している、って言う事。もちろん、両者の合意は必要だけどね」
「・・・・・・契約って、紋章が必要なんでしょ?」
「えぇ」
燐の質問にアルムが短く答える。
「私、紋章なんて持って無いよ?そもそも、この世界の住人じゃないし・・・・」
「あら、持ってたじゃない?ここに」
「へ?ここって・・・・・これが?!」
アルムが指さしたのは右鎖骨下あたり。燐はブラウスの胸元を開けて確認する。
昨日までは歪だったアザの形が、今では炎の様な形に変わっていた。
「それが貴女の紋章よ。異世界の住人である貴女になんで紋章があるのかはわからないけれど」
「ヴェニットさんは火の精霊だから、燐の紋章は火・・・・って事だよね?」
「あー、なんかそんな形っぽい。・・・・んで、力を借りるってあの魔導機って奴?」
「まぁ、それも協力の一端ではあるんだけども・・・・」
「全ての精霊が魔導機を呼び出せる、と言うわけではないのよ」
ここくらいは、とエアデが質問に答えようとするも、アルムに先を取られてしまった。
やる気の行き場をなくしたエアデの姿が少し小さく見える。情けない限りである。
「魔導機を呼び出せるのは、ごく一部の強い力を持っている精霊だけなのよ」
「へぇー、あんたもすごいんだ」
「当然だ。俺だからな」
「ごめん、全く意味が分からない」
「それじゃあ、普通・・・・?の精霊の力を借りるって言うのはどういう事なんですか?」
「精霊の司る能力の一端を借りる・・・・まぁ、自分の意思で火を出したり、風を吹かせたり、といって感じだな」
「んじゃ、私も火出したり出来んの?」
「えぇ。ヴェニティリオが魔力供給のラインを開いていれば、だけど」
「どうやんの?こう・・・・指パッチンとか?・・・・うわっ?!」
「馬鹿!!屋内で火を出す奴があるか!!」
燐が指を鳴らすと一瞬、空中で火が燃え上がった。
驚いたエアデが思わず声を荒げる。もっともである。
「あはは、失敬失敬・・・・・・すごいじゃん、あれだね、魔法少女の仲間入りだね、私!!」
「燐って、あんまりそういう系統のキャラじゃないよね・・・・・」
「・・・・・・私だってさ、憧れた頃くらいあるんだよ?」
「うん、知ってる。小学校の頃――」
「あー、あぁー!あーー!!その話禁止!!きーんーしーっ!!」
「・・・・・・続けても良いかな?」
「・・・・・・・・はい」
「すいません・・・・・・」
勝手に盛り上がる燐と楓を町長が一言でたしなめ、そのまま説明を続ける。
「そして、先程話題に上がった魔導機についてだが、あれに関しては当事者に説明してもらうのが一番だろう。なぁ、エアデ?」
「え?は、はい!!」
ここまでほとんど解説側に回っていなかったエアデにとってはまさに不意打ちのような役回りだった。
すっかり発言権を失って縮こまっていたエアデに対しての町長の気遣いだろう。
そのような小さな気遣いが大きな信頼につながったのが今の立場であろう事が覗える。
「魔導機って言うのは、一部の精霊の力を借りて呼びだす機械の巨人の事」
「人間と精霊の持つ魔力を消費しながら顕現を維持したり、動かしたりしてるから、長時間の現界は難しいわね」
「ちなみに、精霊と契約した時点で、人間も魔力を生み出し始めるんだ。目には見えないし、自分で使う事は出来ないけどね」
「そして、魔導機を召喚する事が出来る者を『装主』、と呼ぶわ」
「装主?」
「あぁ。魔導機の操縦をする時の衝撃や負担に耐えられるように、搭乗者は鎧を装着するんだ」
「その鎧は私達が魔力で具現化するのよ。魔導機のシステムの一部を使ってね」
「え、私さっきそんな鎧着けなかったんだけど・・・・・・」
「さっきのは簡易召喚だったからな。魔導機自体の性能も多少落ちてたから、身体への負担もそんなねぇだろ」
「正式な手順を踏めば鎧の装着もされるし、魔導機の性能も多少は上がるわ」
「ふーん・・・・で、その魔導機って言うのはえーっと、なんだっけ・・・・魔獣?と戦う為にあるの?」
「まぁ、あながち間違いでもないんだけども・・・・・・」
「魔導機と魔獣に、因果関係は無いのよ。ただ、元から扱える魔導機が、魔獣の相手をするのに最適だった、と言うだけ」
「それで、その魔獣って言うのは・・・・・・」
燐の疑問に続いて、楓が質問をする。
エアデとアルムは少々言い辛そうにしながら、答える。
「あれは、かつて精霊だったモノよ」
「精霊・・・・だった?」
「あぁ。本来は精霊の姿をしていたんだが、ある石の影響であんな姿になってしまうんだ」
「ある石って、もしかしてさっき言ってた・・・・・・」
「えぇ、黒晶・・・・リベライト晶石と呼ばれる石が、精霊を魔獣にしてしまうのよ」
「リベライト石から発せられる瘴気―とでも言うのかな、それを浴び続けると精霊は魔獣になってしまうんだ。力の強弱関係無く、ね」
「じゃあ、私がさっき倒したのも・・・・・・」
「えぇ、元々は精霊だったモノね。」
「そんな・・・・・・」
「でも、そんなに気を落とすことは無いわ」
「・・・・・・え?」
自分が精霊だった物を―殺してしまった、その罪悪感に苛まれそうになった燐にかけられた言葉は、思いもよらない言葉だった。
「あぁなってしまった精霊は元の姿に戻る事は出来ないし、戻す事も出来ない。もう、どうしようもないんだよ」
「石から瘴気を受けて魔力生成能力が異常活性を起こし、魔力許容量の限界を越えてしまって暴走する、と言われているわ」
「じゃあ、ベニットとかエアデとかもその石に近づくと魔獣になっちゃう・・・・って事?」
「そんじょそこらの精霊と一緒にすんじゃねぇ、さっきそいつが言っただろ?魔力許容量の限界を越えると、って」
「精霊にも個体差があってね、それぞれ魔力許容量は違うんだよ」
「私達みたいな魔導機を呼び出せる精霊は普通の精霊とは文字通り桁が違うらしいわ」
「まぁ、容量があるだけで、それの全部を使えるってわけじゃねぇけどな」
少し不満そうにヴェニットが付け足した。
「もしかしたら魔獣になってしまった精霊にも契約者や大切な人、物があったかもしれない。それを自らの手で壊すような事ほど、悲しい物は無いでしょう?」
「そうさせない為にも、魔獣は倒す。それが、彼らへの一番の優しさなんだよ。悲しいけどね」
目を伏せながら、アルムとエアデはそう告げた。
仕方がない、と。助けたくても助けられない。切り捨てるしか、無い。
「・・・・・・それで、さっきの町長さんが言ってた『黒晶の例もある』って言うのは、もしかして・・・・・・」
「ほぉ、君は他人の話を良く聞いてるな。」
暗い雰囲気に呑まれそうだった空気を、すんでの所で楓が質問で振り払う。
町長がその質問に答え、そこにエアデとアルムが続ける。
「そのリベライト石は、元々この世界にあった物ではない、とされているんだよ」
「世界各地にある文献によると、『空から降って来た』とか『地面から生えてきた』とか記述のブレはあるけど、ある日突然、現れた、と記されてるんだ」
「そして、石や文献を研究して実際に召喚に成功した研究者が多く存在しているわ」
「君達をこの世界に呼びこんだ男、アクナイトもそういった研究者の類だよ」
「この近辺では幾度となくリベライトを召喚されて魔獣が生み出されてる・・・・僕達はそれを阻止するためにあの男を追っているんだ」
エアデはそう言いながら拳を強く握り締めた。自分の不甲斐なさ、無力さを感じての事だろう。その表情も多少曇っている。
「そして、その最中に貴女達を見つけたって訳。おそらく、異世界からの召喚実験の失敗、それに巻き込まれたんじゃないかしらね」
「なんつーはた迷惑な・・・・・・」
「それで、アクナイトさんの目的、と言うのは?」
「・・・・・・実は、そこまでは分かっていないんだ。ただ、石を召喚している、と言う事くらいしか・・・・・・」
「ごめんなさいね、無能で」
「なっ・・・・僕だけのせいじゃないだろう?!君だって情報を得られていないじゃないか!!」
「貴方だけの責任、とは言って無いでしょう?貶され慣れし過ぎてついに被害妄想まで発症したのかしら?」
「なっ・・・・・そこまで言う必要は無いだろう!!君の言い方だって・・・・」
「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」
無言で見つめる四人の視線を感じて、二人ははっとし、咳払いを一つして仕切り直した。
「と、ともかく、それを探る為にもあの男を追って、黒晶を壊して周っていたんだが・・・・」
「ここ最近、連戦続きで私の魔導機も思いの外負担がかかっていたらしくて、今の状態で呼びだしても、維持できる時間はそう長くないわね・・・・」
二人は表情を曇らせ、俯いてしまった。
彼女の魔導機がベストの状態になるには一日二日ではないだろう事を、燐はその挙動で感じ取った
「・・・・・・じゃあ、私が行こっか?」
「はぁっ?!」
「・・・・・・・・え、燐?」
ヴェニットと楓が驚きの声を上げた。無理もないだろう。
それは、声には出さなかったが残りの3人も同じだった
「だって、その石とアクナイトってのを何とかしないと、ヤバイんでしょ?だったら、私が行くよ。ベニットもいるし。」
「待て!!俺まで巻き込む気か?!」
「私一人が行って何になるっての?て言うか、先に巻き込んだのはベニットの方でしょ?!勝手に契約して、魔導機に乗せて!!」
「あん時はそうしなきゃどうしようもなかっただろうが!!て言うかさっきから気になってんだが、『ベ』ニットって何だ?!言えないのか?!『ヴェ』って言えないのかお前?!」
「だって言いにくいじゃん!!『ゔぇ』って!!もう面倒だから『ベニオ』で良いよ!!『紅男』!!」
「なっ・・・・・・」
討論が別の方向にシフトしてしまった所で、話を元に戻すべく、エアデが口を挟む。
「私が行くって・・・・リン、自分が何を言ってるかわかってるのか?」
「危険だって言うなら、またここに来た魔獣を相手にするのだって、対して変わりないでしょ?むしろ、どんどん増えてくなら余計に危険じゃない?」
「しかしだな・・・・・・」
「それに、私達を呼びだしたってんなら、送り返す方法も分かるかもしれないじゃない?」
「確かに、それも一理あるかもしれないわね・・・・・・」
「アルム?!」
「そうだな、皆の為にもそれが良いかもしれん・・・・」
「町長まで!!何考えてるんですか、子供にそんな大事な事を・・・・」
「その子供に助けられたのはどこの誰だったかしらね?」
「そ、それは・・・・・カ、カエデは?!」
「えっ・・・」
「カエデは良いのか?リンが危険な事をする事は・・・・・・」
エアデは、最後の砦であろう楓に問いかけた。友達を、親友を思うならば止めるはず。
また、親友が止めたのならば燐も考えを改めるだろう。そう、思った。
しかし、彼女の口から出た答えは、全く逆の言葉だった。
「私は、構いません」
「楓・・・・・・」
「燐がそうしたいって言うなら、私がそれにとやかく言っても無駄です。昔っからそうなんです。一度決めたら曲げないんです。ね?」
「・・・・・・ありがと」
「・・・・そ、そうだ。ヴェニティリオ、お前はどうなんだ?お前がついてなきゃどうにも・・・・」
「別に、俺は構わねぇよ。何だかんだいって、あの石は邪魔だからな」
最後の砦が崩れたエアデに、もうどうする事も出来なかった。
アルムはエアデの肩に手を置きながら、燐に改めてお願いした。
「それじゃあ、私達の代わり・・・・お願い出来るかしら?」
「うん、私が出来る限りの最善は尽くさせてもらうよ!!」
そう言った燐の笑顔は、眩しいほどに輝いていた。
―2―
「燐・・・・本当に良いの?私がついていかなくて・・・・・・」
「んー、そりゃちょっとは心細いけどさ・・・・・この町の書庫の本で手掛かり探してくれるって言っても、私達のどっちかがいなきゃ私達の世界だ、って分からないでしょ?」
「そうだけど・・・・・・」
「楓はここで本を読んで手掛かりを探す。私はあの男を追って手掛かりを探す。その為の力を、私は持ってる。楓だって本、好きでしょ?あれだよ『適材適所』ってやつ。」
「なんか微妙に違わない?それ」
「違う?」
「違うよ」
あはは、と二人は声をそろえて笑った。
「決めたんだもんね、行くって」
「私が意見を曲げない、って言ったの、楓だよ?」
「うん・・・・」
「だーいじょーぶ、一生の別れじゃないんだから。ちょーっと行って、ざーっと手掛かり探して、ぱーっと帰ってきちゃうからさ」
「うん・・・・・・」
「だからさ、楓も、ちゃんと手掛かり、探しておいてよ?」
「うん・・・・・・分かった・・・・・・」
「・・・・全く、さみしんぼさんだなぁ、楓は」
「燐が心配だからに・・・・決まってるでしょ・・・・」
「泣きたければ私の胸を貸してあげよう!!」
「燐の・・・・胸・・・・?」
「そこで戸惑われるとものっそい複雑なんだけ・・・・」
燐が気を抜いた所に、楓がもたれかかった。
その不意打ちに少々戸惑いつつも、燐は震える楓の背中をぽんぽんと叩いた。
その光景を遠巻きに見ていたエアデとアルム、そしてヴェニットの三人は
『『『声、かけづらい・・・・・・』』』
戸惑っていた。
―3―
「・・・・・・っと、こんな感じかな?」
「ん?何書いてんだ?お前」
「日記ー・・・・って勝手に見るな!馬鹿!!」
そんな楓達との別れから一日経ち、燐とヴェニットはエアデ達から聞いたリベライト晶石があるとされる地点の近くの町に来ていた。
今は今日泊まる宿の一室で一息ついている所である。
「なんかさー、こう、分かんないの?魔法の力で石の場所」
「それがわかりゃ誰も苦労しねーよ。手掛かりっていやぁ魔獣の発生場所の見当つけるとか、目撃証言を探すくらいしか・・・・・・」
ヴェニットがそう言いかけたその時、
「ガァァァァァァァァァッ!!」
大きく重い叫びが響いた。
二人が宿から出て見ると、東側から街の人々が悲鳴と共に流れてくる。
人波の先に視認出来るそれは艶の無い、刺々しく荒々しい黒い岩。
四足の魔獣。体形としてはネコ科の獣のそれであろうか。
「魔獣?!紅男、やるよ!!」
「慌てんな!!むやみやたらと魔導機呼び出しても動きにくいだけだ、もっと町の外側でやるぞ!!」
「オッケー。ちゃんと考えるんだ、あんたも」
「うっせーよ」
二人は人の流れに逆らいながら魔獣に向かって走ってゆく。
人々を守る為の、守護の剣を執る為に。
―4―
「俺が教えた詠唱、覚えてるな?」
「大丈夫、何度もメモして、声に出して読んで覚えた。これ、楓がいつも言ってる勉強法ね」
「んなこたどうでもいいんだよ!!よし、やるぞ!!」
そう言うとヴェニットは地面に輝く円を描き、そこから先は燐が紡ぐ。
「その身に纏うは輝く鋼、その手に執るは烈火の剣、我が身を守るは守護の紅(あか)、我が身に燃ゆるは紅蓮の炎!!炎装招来!!」
詠唱が進むにつれ、燐の着ている服が光の粒子に分解され、身体が炎に包まれる。
目の前に現れた剣の柄を右手で握り左袈斬りに剣を薙ぎ、その炎を振り払う。
炎の晴れたそこには、新たに鎧が構成されている。
続けてヴェニットが詩を紡ぐ。魔導機を呼び出す為の呪文の詠唱。
「赤より朱く燃ゆる紅、魔を焼き払う紅蓮の炎よ!!炎霊ヴェニティリオの名の下に、烈火の騎士を呼び出さん!!」
「「炎騎召喚!!」」
二人の声が重なった時、地面の陣から強く輝く紅い光が放たれた。
その光と共に火柱が上がり、その中から巨大な影が姿を現す。
「炎の魔導機、リッタールベリア!見ッ参!!」
『魔力供給・出力共に安定、此間と違って完全起動だ。派手に行くぞ!!』
「オッケー!!」
リッタールベリアに握られた白銀の刃が魔獣に向かって振り下ろされ、叩きつけられた魔獣の黒い甲殻に無数のヒビが走る。
魔獣は低い唸り声を上げ、距離を取るべく後ろへ飛び退く。
『逃がすかよッ!!逆巻き捕えろ、紅蓮の炎鎖!!』
突き出されたリッタールベリアの左手から炎が放たれ、渦を巻きながら魔獣へ向かって伸びて行く。
それはまるで炎の蛇が獲物に絡みつくように、魔獣の巨体を絞め上げ、魔獣の体表をジリジリと焼き焦がして行く。
「こンのぉ・・・・おとなしく・・・・しろってのッ!!」
炎の鎖を手繰り剣の間合いに引き寄せるも、地面に四肢の跡を削りながらも踏み留まり、魔獣の牙が炎の鎖を千切り払う。
束縛しただけで大きな損傷を与えられておらず、砕けた甲殻を物ともせずに飛びかかり、朱い爪が炎騎の鎧に傷をつけ、右腕に牙が沈み込む。
「っ・・・・!!盾とかないの?!」
『残念ながら対魔防御壁が主なんで、物理防御は専門外なんだよ、こいつは!!』
「その分、装甲厚くなってたりするんでしょうね!!」
『多少はな、あんまり無茶すると意味無くなるけどな!!』
「あんまり当たるな、って事・・・・・・ねッ!!」
「ォアァァァァァァァッ!!」
そう言いながら剣を右手から左手に持ち替え、魔獣の背に突き立てる。
苦悶の声を上げ、牙を放す魔獣。それを好機と見て燐は魔獣を宙に蹴り上げる。
空中で着地の為に姿勢を正す事が出来るのは、ネコ科の獣の特性であろうか。
しかし、反撃の隙を与える事は、しない。
コクピット内で燐は左手で陣を描く。炎を表わす、烈火の陣。
「烈火!紅・炎・斬ァァァァァんッ!!」
その手の剣が炎を纏う。以前、魔獣を一刀のもとに斬り伏せた炎の剣。
燐の咆哮と共に、両手で構えた剣が魔獣を薙ぐ。
業火の流派魔獣は、遠吠えの様な咆哮を残し、炎と共に消滅した。
『・・・・なんだよ、今の・・・・』
「え?必殺技には名前と叫びは必須でしょ?」
『・・・・・・センスねぇ、な。お前』
「なんだとぉ?!」
およそ、戦いの後とは思えないやりとりがそこにはあった。
それは炎の魔導機の性能を信頼している故の安心から来ているものだろうか。
燐もヴェニットも、それを正しく認識はまだしていない。
―5―
「・・・・これが例の“リベライト晶石”?」
「あぁ、こいつがいわゆる“全ての元凶”ってやつだ」
魔獣を倒した後、二人は魔導機で近くの森へと向かった。
先程の魔獣が現れた方向、すなわち、魔獣の発生ポイント。
僅かではあるが聞き及んだ目撃証言からリベライト晶石が“生えている”場所に辿り着いた。
燐の眼に映ったそれは、美しく艶めく黒い水晶だった。
「へぇ、この綺麗な石がねぇ・・・・普通にやっちゃっていいの?」
「あぁ、柄なり刀身なりで叩き割ってやりゃあ良い。」
「オッケー。―――――ッ!!」
気合を乗せて振り下ろした剣によって、パキィィン、と軽く澄んだ音を立てて水晶が砕け散り、破片が落ちる間もなく消滅した。
「これでこの周辺はとりあえず静かにはなるだろ」
「なーんか拍子抜けっていうかあっけないもんだねぇ」
「なんだ?じゃあ一万回ブッ叩いても壊れない石だったら良かったってか?」
「別にそんな事言ってないでしょ?変な上げ足とらないでくれる?紅男のくせに」
「だぁぁぁぁっ!!だからその紅男ってのやめろっつっただろ!!アルジレームの野郎にまで言われたんだぞ!!」
「えぇー、親しみやすくて良いじゃん、紅男」
「まだ言うかテメェッ!!」
鎧を解除していつもの制服姿に戻った燐は森の中を走りだし、ヴェニットそれを追った。
「やーい、べーにーおー!!」
「待ちやがれェェェェェェェェッ!!」
魔の石の呪縛から解かれた森に鳥や動物、虫達の鳴き声が帰ってくる。彼らの居所を懐かしむように、そして、取り戻した二人に感謝の意を表すように。
―6―
「炎の魔導機、か・・・・・・」
暗い岩の一室で、男が一言、呟いた。
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