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そのころのとあるいっしつ
#01
「……みつけた」
鳥の声が青い空に響く。雲の隙間からたまに太陽が顔を見せる。
閉まっているシャッター。そこにはいちまいの貼り紙。
『多忙につき、しばらく店を閉めさせていただきます。まことに勝手ですが、ご了承ください』
…そんな風なことが、少し乱れた文体で書かれている。
それを、雪のように白いコートを羽織った少女が眺めている。道路の真ん中に立っていても、
車が通ってくる気配はない。猫が歩き回っているだけだった。
「…ばか店主」
小声でそう言って、ポケットから沢山の鍵が吊るされているホルダーを取り出す。
それを目の前のシャッターの穴に通し、施錠を解く。近くの取っ手に手をかけ、上に………
(重…っ)
中学生…下手をすればそれ以下にも見える小柄な体。それにぴったりと比例して、少女は非力だった。
いくら力を加えても、それは上には進まない。逆に下に向かっている気さえする。
顔が紅潮し、手足がぷるぷると震えだす。ここに入りたいのだから、これをどうにかしないといけないのに、
問屋がそれを卸さなかった。
「…ん、んん~っ……!」
朝の冷気のせいで手が悴んで、痛い。手の先に感覚がないような感じがする。
「あの、…大丈夫?」
「!!」
後ろからの声。振り向くと、レジ袋をもった女の子が顔をのぞかせていた。
「これ、開けようとしてたんでしょ?」
「……」
無言。しかし少女は頷いてみせた。その後、長袖をまくりあげて女の子は取っ手に手をかける。
すぅ、はぁ、と一呼吸してから、
「私のこの手が真っ赤に燃える!…シャッター開けろと轟き叫ぶっ!」
手は燃えていないものの、それに合わせてシャッターが振動しているのを、少女は感じた。
「灼ぁぁぁく熱っ!バァァニング・フィンガーっ!!」
ちゃぶ台返しの要領で、腕を大きく振るう。するとさっきまでびくともしなかったシャッターが、
いとも簡単に上へと引っ込んでいったのだ。ガタピシガタピシ音を立てて。よっぽど錆びついていたのだろう。
「何かの…お店?」
扉の中で眠っていた店の光景が、日にさらされる。光を反射するガラスには、うっすらと白い文字で、
”レビ屋”と書かれていた。
「…レビ、屋……?」
頭の上にクエスチョンマークが浮かんで、踊っている。
少女はそれを無視してガチャガチャとドアの鍵を開けた。
「…入って」
くいくいと手招きする。向こうも察したのか、おずおずと足を踏み入れた。
「これ…」
床に散乱していた物体を拾い上げる。最初はなんだか分からなかったが、少女が明かりをつけてから、
それが「みかんの皮」であることがわかった。
「……ばか店主」
少女も、ここが「かろうじて」店内であるという面影を残した部屋を眺めて、そう言った。
「なんなの?この一面、みかん、みかん、みかん!」
あたりを見回せば、やはりそこにあるのはオレンジ色の柑橘類。
「みかん、みかん、みかん!」
何をトチ狂ったのか、ショーケースにまで詰め込まれている。その数は両手ではきかない。
「MIIIKAAAAANNN!!!」
「…っ!」
その絶叫に、少女は耳をふさぐ。だが解らなくもない。とにかくこの店、みかんばかりなのだ。
ご丁寧にも、奥の部屋には炬燵まであり、そこにはやはりみかんがあった。
「…ねえ、冷蔵庫に”命の水”入ってない?」
少女は一瞬頭に”?”を浮かべたが、すぐに冷蔵庫を開けて、中から果汁100%のみかんジュースを持ってきた。
つまるところ、これが”命の水”だというのだ。
「店主は想像以上のみかん好きね…」
勝手に論理回路をフル稼働させる女の子をよそに、少女は近くから手当たり次第にゴミを始末し始める。
売り場にまで散乱しているのだから、よほど客が来なくて自暴自棄になっていたのだろう。とにかく…汚い。
「手伝おうか?」
遠くで声がする。少女は立ち上がり、声の主に一枚の紙を渡した。
「…急募?」
自分の字でそう書いただけだが、この店には今すぐにでも必要な人員である。一人でも増えればそれでいいのだ。
「…ここなら即戦力。仕事はとても簡単」
とても急に作ったとは思えない程、案内の住所や地図まで記載されている。くしゃくしゃの紙だが、字が綺麗なので
読めないこともない。
その下には、”すぐに一人来るから、手伝いはいい。さっきはありがと”…とも書かれていた。
「…わかった。考えとくね」
少女はこくりと頷き、手を振って見送った。それからしばらくして、まるでタイミングを見計らっていたかのように、
この店に一人、入ってきた。
「お邪魔しま……?」
入って来たはいいが、その光景に絶句する。あたり一面にみかんが散らばり、展示され、食べ散らかしてある。
足の踏み場はあるが、店内の奥にいるのは自分よりも小さな少女が、もくもくとゴミの始末をしているだけ。
正直、自分は来るべき場所を間違えたのではないかと、いったん外にでて、ガラス張りのドアに目をやる。
光を反射するガラスには、うっすらと白い文字で、”レビ屋”と書かれていた。
「レビ、屋……合ってます」
眼鏡をかけた青い長髪。状況説明と指示を仰ごうと、奥にいる少女の方へと向かう。
「あの、私…二日前にお電話をかけた夜芝藍というものですが…」
「…わかった。…手伝って」
少女がポケットからとり出だしたるはマスクと小さなレジ袋。この場にいれば、誰だって掃除をしたくなる。
藍は、床に散乱しているみかんの皮を回収するためにぱたぱたと走って行った。
「…ばか店主」
これは…つい先日のことだ―――
『やあ、君がここに新しく配属されたっていうカオル君だね』
『…はい』
この場所で出会った人当たりのよさそうな店主。それと二人の助手。自分は本来、ここで三人目として
働くはずだったのだ。
ところが次の日…
『……店長?』
一面に散乱するみかん。事態は奥から出てきた二人によって把握できた。
『こんな書置きを残していなくなってしまって…』
『私達で探しに行きます。…しばらく帰って来れそうにないから、ここのこと、よろしくね』
『…え?…ここのことって…』
突然過ぎていまいち実感がわかない。二人が出て行ってから、なぜか足もとに吹き矢が飛んできた。
それには手紙が付いてきており、『今日の朝、本部から私達に捜索の依頼と、あなたの管理職(代理)昇格が
決まったの。だからここをよろしくね』…と、筆書きされていた。
『……』
あたりを見回す。一面はみかんだ。これを片づけないことには店を開けられはしない。一人では相当骨が折れそう
だが、代理とはいえここを任された身だ。…やるしかない。
『…ばか店主』
その時に思わず口から出た言葉が、これだった。
―――そして、今に至る。
本部から明確な情報が得られるまで、ここを放っておいたのがいけなかっただろうか。
店内は当然のことだが、奥の部屋だってちっとも片付いてはいないのだ。ちなみに、藍がここに電話をかけたのを
カオルが知ったのは、今の会話で初めて、それも三回目の電話だったらしい。…それまでここに誰もいなかったの
だから、当然と言えば当然だろうが…
「……」
保管されていた制服に身を包む。その後、電話に目をやると、着信履歴が残っていた。留守電も一件。藍のものである。
『この度、レビ屋結糸町支店から転属することになりました、夜芝藍と申します。…出勤時間にお邪魔したいと
思いますので、後ほど…』
…それにしても随分早くから電話をかけてきたものだ。まだ夜中であって、起きている人口が少ない時間に、
藍は電話をしていた。おそらく自分がここにいたとしても、この電話には出られなかったことだろう。
それで、今のが三回目だというのだから驚きである。
「…結糸から……」
ちなみに結糸は「ゆいと」と読む。ここ結域のすぐ隣の地域で、やはりレビ屋の支店があった。
結域は「ゆいき」と読む。都会からはちょっと遠い、普通ののんびりした町だ。
観光名所なんてない。ただただゆったりと時間が流れる感じがする不思議なところ…
…パンフレットにはそんな風に掲載されている。それはともかくとして、ちっとも進まないゴミ処理を
「…どげんかせんといかん」
のだった。
部屋から出てみると、それまで散乱していたはずのみかんの皮がほとんど回収されており、なんとか店の
床を垣間見ることができた。もとは白だったはずだが、みかん果汁100%の影響でうっすらと染まっており、
この部屋全体から微量のすっぱいにおいと、催涙効果が発生している。藍は、消臭剤をぷしぷしと放っていた。
「…大丈夫?」
「あ、はい…私は」
何か言いかけたが、藍は少女が埃まみれなことに気づくと、頭から肩にかけて、手で払い始めた。
「…あ…」
「気にしなくていいですよ。…私、お掃除は結構好きですから」
ふふっ、と笑顔を作る。屈託のないそれに、自分も失いかけていたやる気を取り戻した。
ゲージが赤くて残り少なかったものが、”しゅいいいん”と一気に回復していくのがわかった気がした。
そうして、掃除を頑張ろうと踏み出したとき、
「…う……っ」
藍が回収し忘れた”命の水”のキャップを踏みつけて、靴を滑らせ顔面からすっ転んでしまった。
「だ、大丈夫ですか…?」
「…平気」
立ち上がり、近くから処理を開始する。いったいどこからこれだけの数のみかんを持って来たのか、
どうして急にいなくなってしまったのか。
いろいろ聞きたいこともあるが、今は忘れることにした。そんなことを考えていても、何の進展にも繋がらないから。
★
太陽が真上に上っている。…昼だ。店内の方はあらかた片付いたので、いったん休憩してまた午後再開しよう、
という藍の提案に、少女は素直に同意した。すっかり黄色くなってしまった手を水でよく洗い、奥のキッチンで
藍と昼食を拵える。
「名前…聞いてませんでしたね」
「…カオル」
手を包丁にかけながらの応対。野菜を切り刻み、鍋に放り込む。小一時間ほど煮込めば、かなり味が染みるはずだ。
前にここにいた人物の料理好きが窺えるほど、包丁と俎板と鍋の種類が多かった。
「カオルさんは…いつからここに?」
「…ちょっと前」
曖昧ではあるが、嘘は言ってない。発生する湯気でショートヘアがじっとりとしてくる。ここのキッチンには
なぜかコンロの上に換気扇がなかったため、知り合いに頼んでつけてもらった。よく動いてくれているようだ。
「これ…、どこの会社のですか?」
その換気扇には、白く文字が書かれていた。現存する換気扇メーカーでこんな文字を書く会社など
ないはずだ。黒いボディに白い文字で、たしかに「域」と書かれている。
「…私の知り合いに、つけてもらった」
「へぇ…、すごいですね…」
すさまじい勢いで煙を吸い上げていくそのファンは、どこに続いているのだろうか。藍はなぜかそれが不思議で
仕方なかった。ずっと上を見上げている。
がたがたとすさまじい音を立てて動いている。
“ぴこぴこ、ぴこぴこぴろろろ……”
「ひゃあ!」
「……」
どこかから携帯を取り出す。部屋のすみっこに移動してから、電話に出た。
『おーっす!元気かカオルくんっ!』
「…何」
声がよほど大きいのだろう。受話器を耳から離しても、相手の声が聞こえる。声の主は女だった。
『忘れ物してるってさ!…本人から。代わるよ?』
「…?」
『―――――…』
突然、受話器から声が消失した。ゆっくりと耳に近付ける。
『酷いですよご主人様~!』
「…あ」
聞こえてきたのは幼さを残したままの明るい声。カオルはその声に聞き覚えがあった。
『転属が決まったのでしたら言って下されば…』
「…今、どこ?」
『この電話の持ち主の方のお宅です~…』
予想はついたが。さて、電話の主はどうするつもりだろうか。ここへは随分な道のりのはずだ。
すぐには来られないはず。
『代わりますね~…』
『と、いうわけだから…そうさね、この子を連れて行くついでだし、カオルくんの顔を拝みに行くとするかね!』
「……ホントに?」
とっさに受話器を離さなければ、鼓膜が大変なことになっていただろう。換気扇から離れて部屋の隅にいるはずなのに、
藍にもその声がわずかに聞こえるのだ。
『うん、じゃあ近いうちにそっちにお邪魔するさね。楽しみにしといてよ~』
「…わかった」
ボタンを押して回線を切る。藍は“?”という顔をしていた。
「…さっきの知り合いからだった。…噂をすればなんとやら」
いまいち状況を理解できない藍にはそう言っておいた。
そんなことをしている間に、鍋の中身が程良く煮えてきていた。
「あ、ルー入れないと」
箱から茶色いブロック状のものを取り出し、藍はそれを鍋に入れる。二人は今、カレーを作っていた。
溶けだしたルーが発する独特の香辛料のにおいが漂う…はずが、頭上の換気扇がそれを良しとしなかった。
上がる湯気は、どんどん換気扇に吸い込まれていく。
同時にその匂いもなくなっていってしまい、遠くから柑橘系の臭気がやってくる。
「カオルさん、どうしたんですか?」
「…味が、心配」
そもそもカレーに入るのは林檎であって、みかんではないからだ。この臭いが混じってたりしたら…とカオルは
考えていた。
「う~ん、私、カレーは自信があったんですけどね…」
「…料理ができるのはいいこと」
…どうやら、藍には自分の料理の腕のことを言われたのかと思っていたようだ。ぐつぐつと煮え、もうそろそろ
食べごろである。
「………」
「私、やりましょうか?」
「…いい。奥の棚からコップとか出してきてくれれば」
「わかりました…、え~っと」
小さな手がおたまを持って、鍋の中身を盛る。白い皿に移され、初めてカレーらしい匂いがカオルの鼻に届く。
(…大丈夫そう)
指にちょっと取って、口に運んでみる。…熱かった。少しだけ辛くて、甘い。
しつこいようだが、みかんの臭いや味は全くしなかった。
それをテーブルに乗せて作業は完了。青と白のチェック模様のクロスの上に、透明なコップとサラダボウルが
置かれていた。ボウルには切られた野菜がいくつか入れられ、ポン酢で味付けされていた。
「…どうぞ」
「はい、頂きます」
盛られたカレーを口に運ぶ。…熱かった。少しだけ辛くて、甘い。
中辛が丁度良い辛さを生み出している。藍も、カレーの辛口はいけないらしい。
「おいしいです、カオルさん」
「…良かった」
自分もちまちまと食べながら。熱いものはあまり好きではないが、かと言って冷ましてしまうと風味を損ねる。
猫舌とは不便なものだ。
★
そんな調子がしばらく続いたころ。昼食も食べ終わって、二人は後片づけに取り掛かった。
かちゃかちゃと食器の当たる音と、ざばざばと水の音が響きあう。藍は再び店内のゴミを処理しに向かった。
(広告置き場にもみかんが…)
もしかするとここの店長は新しい宗教でも布教するつもりだったのかもしれない。幸い腐ってはいなかったが、
どうも食べようという気にはならなかった。
「すいませーん…」
その時、ドアが開いた。上の辺りにあった鈴の音と共に藍が首をそちらに向ける。
「まだ準備中なので……あ」
「あれ?」
藍と訪問者は、ともに同じような反応を見せる。お互いに“ぽかん”とした表情をしていた。
「…霞、ちゃん?」
「…藍ちゃん?」
どうやら顔見知りらしい。事情を聞いた藍は、奥にいるカオルにその事を報告した。
「…いらっしゃいませ」
「あ、どうも。…よろしくお願いします」
ぺこぺこと頭を下げ、たどたどしい挨拶を終えてから本題に入る。朝方カオルが開けられなかった扉を開けたのは、
紛れもなく彼女、霞である。さっきの手紙の件でここに来たのだ。
「―――と、言う訳なんだけど。いいの?」
「…大丈夫。即戦力って言った」
その一件を掻い摘んで話している間も、表情一つ変えずに静かに聞いていたカオルをいろんな意味で霞は恐れていた。
「で、いつから始めればいい?」
「…あれ、片さなきゃ。…手伝ってもらうところから」
未だ店内に残る件の柑橘類を指して言う。自分と藍ではあまり大きな作業はできずにいたから、一人でも増えた事は
かなり、労働効率が上がるというものだ。
「…ところで、二人とも知り合い?」
「うん。藍ちゃんはもっと小さい頃に引っ越しちゃったんだけど、この時期にまた戻ってきて」
「今は同じ学校なんです」
二人で顔を合わせて「ねー」と言い合う。結構、仲もよさそうだ。
「…後で、部屋の方に案内してあげて」
「はい。…じゃあ霞ちゃん、最初にあそこの掃除をするから」
「了解!」
“しゅびっ”と手を頭の上に構え、警官のようなポーズをとって、霞は藍と共に部屋を後にした。
カオルは、とりあえず手元にあった帳簿に新しいメンバーの名前を書いて、机の上においた。
「…“岡崎 霞”っと」
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