夢工房 『浩』~☆”

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愚を守る(俳人山頭火遺稿)


百舌鳥鳴きしきり。
どうやら晴れそうな。早起きしたけれど頭おもく胸くるしく食欲すすまず。
ぼんやりしている。むしろ私としては病症礼賛。物みな我によからずなしである。
ちょいとポストまで、途中慣習的にいつもの酒屋で一杯ひっかけたがついつい二杯となり三杯となり、とうとう一洵老の奥さんから酒代を借りてまた一杯。
急にSさんに逢いたくて再び一洵老の奥さんから汽車賃を借り出して今治へとだ。
電話したらSさんが親切にも仕事を遣り繰って来てくれた。御馳走になった。
ずいぶん飲んだ。 F館の料理屋には好感が持てた-----何しろ防空訓練で、みんな忙しくて誰も落ちついていないから、またの日を約して十時の汽車でSさんは上り私は下りで分かれて帰った。帰途の暗かったこと、闇を踏んでほろほろ辿るほかなかった。そしてアル中のみじめさをいやというほど感じさせられたのである。
   Sさん有りがとう、ほんに有りがとう。小遣を貰ったばかりでなくお土産まで頂戴した。
帰庵したのは二時に近かった。あれこれ、かたづけてそして餅を食って寝床に入ったのは四時ごろだったろう。
その餅・・・・・
この夜どこからともなくついて来た犬。その犬が大きい餅をくわへてをった。
犬からすなほに受けて餅の御馳走になった。
ワン公よ有りがとう。白いワン公よ。
どこからともなく出て来た猫に供養した。最初のそして最期の功徳!
犬から頂戴するとは・・・・・・・。


            愚を守る
            潮文社  大山澄太著より




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