偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2015.01.16
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カテゴリ: 銀輪万葉

承前 )<1月11日(3)>

 先程、立ち寄った観世音寺と僧玄ボウ(前記事記載)については、文字数制限のため記載を省略しましたので、ここで少し補足説明して置きます。詳しくは下記参考のWikipediaをご参照下さい。
 観世音寺は、百済救援のためこの地までやって来て朝倉頓宮で亡くなった斉明天皇の菩提を弔うため、息子の天智天皇の発願により建立された寺であると言う。寺の堂塔伽藍全てが完成するのはずっと時代が下って天平18年(746年)のこと。この年に観世音寺の落慶法要が営まれている。僧・玄ボウ
(ボウは「日ヘン」に「方」であるがブログには使えない漢字なので「玄ボウ」としています。) は、藤原仲麻呂に権力が集中して行く中で前年の天平17年に中央政界から追放、筑紫に左遷され観世音寺別当になっている。伝説では、別当として落慶法要のお勤めをしていた玄ボウに突然の竜巻が襲いかかり、彼を天空高く舞い上げてしまい、やがてバラバラになった彼の五体が落ちて来た、という。暗殺説もあったりする彼の死であるが、現地看板では藤原広嗣の霊に殺されたという伝説が記載されている。
<参考> 観世音寺・Wikipedia
玄ボウ・Wikipedia

学校院跡万葉歌碑(憶良・巻5-802、803) (1) (大宰府政庁学校院跡山上憶良歌碑)

 観世音寺と玄ボウ墓の間の道の突き当りを左に行くと学校院跡の広い空地がある。そこにある万葉歌碑は憶良の有名な「子らを思ふ歌」の碑である。
 この歌は「惑へる情を反さしむる歌(巻5-800、801)」、「世間のとどまり難きを悲しぶる歌(巻5-804、805)」と並び、所謂「嘉麻三部作」の中の一つである。左注に「神亀5年7月21日、嘉麻郡に於いて選定 筑前国守山上憶良」とあるように、憶良が国守として国内を巡行していた際に、嘉麻郡(現在の嘉麻市東南部)で草稿を完成させたのであろう。

瓜食 (は) めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲 (しぬ) はゆ いづくより 来りしものそ まなかひに もとなかかりて 安眠 (やすい) し寝 (な) さぬ
  反歌
(しろがね) も 金 (くがね) も玉も 何せむに
 まされる宝 子にしかめやも
              (山上憶良 万葉集巻5-802、803)

学校院跡万葉歌碑(憶良・巻5-802、803) (2) 大宰府政庁学校院跡
(同上・副碑)         (学校院跡)

 漸くに大宰府政庁跡公園に到着。政庁跡バス停前にあったのは大伴旅人の歌碑。

大宰府政庁跡前万葉歌碑(旅人・巻6-956) (1) (大伴旅人歌碑)

やすみしし わが大君の 食 (を) す国は
     大和もここも 同じとぞ思ふ (大伴旅人 万葉集巻6-956)

 この歌は大伴旅人が太宰府に赴任したばかりの時の歌。大宰少弐の石川足人 (たるひと) が「大宮人が家として住んでいる、佐保の山を懐かしくはありませんか」という趣旨の歌を詠んだことへの返歌で、「大和もここも大君のご領地、何も変りはないよ」というもので、まあ、素っ気ない儀礼的なたてまえの歌である。着任早々であるから部下の気心も知れずとあれば、形式的な歌(挨拶)が無難である、この辺の処は今も同じことであろう。因みに、帥、大弐、小弐であるから、石川足人はナンバー3の地位である。

大宰府政庁跡前万葉歌碑(旅人・巻6-956) (2) (同上・副碑)
大宰府政庁跡 (1)
(大宰府政庁跡)

大宰府政庁跡 (3) (同上・南門跡から)

大宰府政庁跡 (2) 大宰府政庁跡 (5)
(南門跡説明板)        (正殿跡説明板)

大宰府政庁跡 (7) (正殿跡)

大宰府政庁跡 (6) (同上)

大宰府政庁跡 (8) (同上)

 前後するが大宰府展示館脇にも万葉歌碑がありました。

大宰府政庁跡・小野老歌碑(巻3-328) (小野老歌碑)

あをによし 奈良の都は 咲く花の
              薫
(にほ) ふがごとく 今盛りなり (小野老 万葉集巻3-328)

 天平元年(729年)太宰小弐として大宰府に赴任した小野老 (をののおゆ) が、その着任の宴席で披露した歌である。
 しかし、ヤカモチ老は早く来過ぎたようで、

あをによし 奈良の都も 大宰府も まだ梅の花 咲かぬなりけり (家持老)

でありました。
 そして、政庁跡を北へ突っ切った先にあった歌碑がこれです。にほふが如き梅の花の歌とは真逆の歌です。

大伴旅人歌碑(巻5-793) (1) (大宰府政庁跡裏・大伴旅人歌碑)

世の中は 空しきものと 知る時し
     いよよますます 悲しかりけり (大伴旅人 万葉集巻5-793)

大伴旅人歌碑(巻5-793) (2) (同上・副碑)

 この歌は、神亀5年6月23日に詠まれたもの。この年の初夏に旅人は妻を亡くしたことは既に述べたが、少し前には弟の宿奈麻呂も亡くしている。もう一人の弟の田主はもっと早くに亡くなったようだが、こうした身内の不幸を味わう中で生まれた感懐がこの歌であろう。知識としては知っていたけれど、妻や弟を亡くして、世の中の空しさが心底実感されました、という歌である。
 この歌で記事を閉じる日付が1月16日で阪神淡路大震災から20年という1月17日の前日に当たるというのも何かの因縁でしょうか。
 万葉歌碑めぐりまだまだ続きますが、今日はこの辺で。( つづく






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最終更新日  2015.01.17 15:54:43
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