妹が見し 楝
の花は 散りぬべし
わが泣く涙 いまだ 干
なくに (山上憶良 万葉集巻 5-798
)
珠に 貫
く 楝
を家に 植ゑたらば
山霍公鳥
離
れず 来
むかも (大伴書持 同巻 17-3910
)
ほととぎす 楝
の枝に 行きて 居
ば
花は散らむな 珠と見るまで (大伴家持 同巻
17-3913
)
「 その様、卑し。言はば、 薪 負へる山人の、花の 陰 に休めるがごとし。 」
と散々な言われようである。 僧正遍昭は
「歌の様は得たれども、 誠
少なし。たとへば、絵に描ける 女
を見て、徒らに心を動かすがごとし。」
在原業平は
「その心余りて、言葉足らず。萎める花の、色無くて、匂ひ残れるがごとし。」
文屋康秀は
「言葉巧みにて、その様身に負はず。言はば、 商
人
の、良き 衣
着たらむがごとし。」
喜撰法師は
「言葉 微
かにして、始め、終り、確かならず。言はば、秋の月を見るに、暁の雲に、遭へるがごとし。」
小野小町は
「 古
の衣通姫の流なり。哀れな様にて、強からず。言はば、 好
き 女
の、悩める 所
有るに似たり。強からぬは、 女
の歌なればなるべし。」
そうじやうへぜうは、歌のさまはえたれども、まことすくなし。たとへば、ゑにかけるをうなを見て、いたづらに心をうごかすがごとし。
ありはらのなりひらは、そのこゝろあまりて、ことばたらず。しぼめるはなの、いろなくて、にほひのこれるがごとし。
ふんやのやすひでは、ことばゝたくみにて、そのさまみにおはず。いはゞ、あき人の、よきゝぬをきたらむがごとし。
うぢやまのそうきせんは、ことばかすかにして、はじめ、をはり、たしかならず。いはゞ、あきの月をみるに、あかつきのくもに、あへるがごとし。よめるうた、おほくきこえねば、かれこれをかよはして、よくしらず。
をのゝこまちは、いにしへのそとほりひめのりうなり。あはれなるやうにて、つよからず。いはゞ、よきをうなの、なやめるところあるにゝたり。つよからぬは、をうなのうたなればなるべし。
おほとものくろぬしは、そのさま、いやし。いはゞ、たきゞおへるやまびとの、はなのかげにやすめるがごとし。
このほかの人々、そのなきこゆる、のべにおふるかづらの、はひゝろごり、はやしにしげきこのはのごとくに、おほかれど、うたとのみおもひて、そのさましらぬなるべし。
<参考> 古今和歌集仮名序 ・Wikisource
思
いでて 恋しき時は 初雁の
なきてわたるを 人知るらめや (同 735
)
鏡山 いざたちよりて 見てゆかむ
年へぬる身は 老いやしぬると (同 899
)
飛鳥川銀輪散歩(下) 2024.11.11 コメント(4)
飛鳥川銀輪散歩(上) 2024.11.10 コメント(2)
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