HANNAのファンタジー気分

HANNAのファンタジー気分

島田ゆか「バムケロ」シリーズほか

島田ゆか「バムケロ」シリーズほか
寒いけどあったかい!  『バムとケロのさむいあさ』
こんな雨の―― 『バムとケロのにちようび』
冒険旅行だ! 『バムとケロのそらのたび』

バムとケロのさむいあさ
 
寒いけどあったかい!  『バムとケロのさむいあさ』 (2006.1)

 人気の「バム・ケロ」の3作目、タイトルは寒そうだけど、とってもあったまる絵本です。

 いつものようにいたずらザンマイのカエルのケロちゃんと、マメな犬のバムが、池で凍りついちゃったアヒルのかいちゃんを家に連れて帰ってお風呂に入れたり、遊んだり。

 セリフはないけど、星を見ていて凍っちゃったかいちゃんの、おトボケぶりが何ともかわいいし、夢中で世話を焼くケロちゃんも、すごくかわいい。 そして、いつも、えらいな!って思うのは、きれいずきで働き者で、ケロちゃんがどんなとっぴなことをしでかしてもきちんとフォローするバム。バムは男なんだけど、世のお母さん顔負けのかいがいしさ(見習わなくちゃ)。
 家の中はおもしろい家具や雑貨でいっぱいで、また、ファブリックの柄や模様がなんともいいセンスで、どれもこれも欲しくなってしまいます。

 この巻は、池が凍るほどの寒い季節ですが、家の中はあったかそう。これみよがしにむくむくの物があるわけではなく、毛布やカーテンもさらっとした感じなのに、なぜかあったかそうに見えます。
 お風呂のシーンやおやつのシーン、そしてトイレットペーパーを使った「ミイラごっこ」などのページを見ていると、外の寒さなんか忘れてしまう。寒いからといって、ことさら温かい物が描かれていなくても、仲良しが居て楽しいと、こんなにあったかくなれるんですね。

 そして最後にまたきゅっと寒いページ。かいちゃんたら、また池で凍りついちゃってます。冬の夜空は澄んでいて、一等星とか多くて、ほんとにきれいですものね、ロマンチストなかいちゃん。
 


バムとケロのにちようび
 
こんな雨の―― 『バムとケロのにちようび』 (2006.4)

  こんな あめのにちようびは/サッカーも すなあそびも できない ――島田ゆか 『バムとケロのにちようび』

 バムケロ・シリーズの第1作です。
 絵の中のカレンダーは6月らしけど、玄関先にムスカリが咲いているので、どうも今日みたいな春先の雨の日という印象があります。

 1ページめ、犬のバムは家にいて、くもった窓ガラスに指で絵を描いているし、カエルのケロちゃんたら、玄関先の水たまりへ嬉しそうにドボン!
 そんな二人の表情や、すてきな家の絵もすばらしいですが、言葉がすごく簡潔で読みやすく、絵と一緒にテンポよく流れていて、すごいなーと思います。
 そして、子持ちの身にいたいほど共感できるのは、次のページの、おもちゃやお菓子で強烈に散らかった居間。毛布は床にずり落ち、壁の絵もゆがんでます。ケロちゃんのしわざです。それをかたづけるのはバムなのですが、よく見ると、
・マトリョーシカ人形をやっと全部重ねたと思ったら、一番最初のちいさな一つが床に落ちていた。
・掃除機のコードの長さが、あとちょっとのところで足りない
など、ああ、我が家でもおなじみの日常。
 ただ、おもちゃも雑貨も家具も、バムとケロの家ではすごくステキな色や形をしていて、散らかっていても美しい。ああ、我が家もそうだったらいいのに…

 どろんこびちゃびちゃのケロちゃんをお風呂で洗います。これがまた、何て広くてかわいいお風呂。
 それからドーナツを山盛り作ります。何て広い台所、何て巨大なレンジ台。
 それから、読む本を探しに屋根裏部屋へ。何て広くておもしろそうな屋根裏部屋。はしご付きの巨大な本棚があります。ああ、私もほしい、こんな屋根裏部屋と本棚…
 などと、もうバムとケロのおうちは私の理想そのもの。

 ストーリーの方はそれほどびっくりするものではなくて、最後に昼寝しちゃう二人と、カゴの中にフンを残して脱走しドーナツの山のてっぺんに陣取るネズミがいかにもカワイイです。
 それにしても、気になったのはバムが探してきた本、『ふしぎなひこうきじいさん』。何か、1938年とか書いてあるし、往年の外国の飛行機乗りって感じ。
 実は次の『バムとケロの空の旅』で、この本や本の持ち主であるバムのおじいちゃん(往年の飛行機乗りらしい)が出てきて、ますますとっても楽しいのです。
 


 
冒険旅行だ! 『バムとケロのそらのたび』 (2006.4)

「バムケロ」シリーズ の中で私の一番のお気に入りです。他の3冊がバムとケロの家やその周辺のできごとなのに対し、『そらのたび』は組み立て飛行機に乗っておじいちゃんちを目ざす、冒険ファンタジーなのです。

  げつようびのあさ…パンケーキを たべていたら
  やまのような こづつみが とどいた
  おくってくれたのは おじいちゃん ――島田ゆか 『バムとケロのそらのたび』

 大小さまざまな形の小包みは、飛行機の組み立て部品でした。二人は、土曜日までかかって組み立てます。
 絵がとても凝っていて、初めの方のページと、組み立てる場面のページを比べると、どの形の小包みに何が入っていたかわかります。たとえば、三つでっぱりのある箱に入っていたのはプロペラ。三角柱の形の箱に入っていたのは、飛行機のタイヤのストッパー。最後尾の配達人が人差し指の先っちょにのせていた小さな箱は、ただのビックリ箱でした。
 組み立てて、ペンキを塗って、こんなふうに飛行機が作れるなんてうそみたーい、と思っていましたが、CRALAさんみたいな模型の達人だったら、きっとできちゃうんでしょうね! 自分で作った飛行機に乗って、おじいちゃんの手紙を手がかりに、いざ冒険旅行へ出発。

  すべりだいも すなばも しばらく バイバイ ――『バムとケロのそらのたび』

 小さくなってゆく家と庭の絵があります。日常生活よ、さようなら! という感じで、旅に出かけるときのワクワク感が伝わってきます。

 それからは、一つ一つ難所を越えていきます。涙の出るたまねぎさんみゃく、むしだらけのりんごやまのほらあな、ふんかするかぼちゃかざん、そして、二人の飛行機は海に至ります。
 冒険旅行も後半のヤマ場になって、旅人たちは海を見る…そんな一つのパターンがあるような気がします。ぱあっと開ける海を前に、ついにここまでやって来たか…と感慨を深めるのでしょう。

 うみではおおうみへびが出て、いよいよ最後の難所、きゅうけつこうもりのトンネル。ケチャップをまいて切り抜ける! なんてすてきな方法でしょう。
 そして、海辺のすてきなおじいちゃんちへ到着。お祝いとご馳走のあと、『ふしぎなひこうきじいさん』の本を読んでもらおうとしたところで…またもや眠ってしまう二人。最後のシーンは『にちようび』とだぶっていて、すごくおさまりがつく感じ。

 こんな冒険旅行の本筋を追うほかにも、島田ゆかの絵には注目すべきところがいっぱい。たとえば…
・表紙絵の二人の荷物。どれに何が入っているか、わかりますか? かぼちゃ火山でケロちゃんがさしていた傘もあります。おじいちゃんへのプレゼントは青いチェックの包み紙。お弁当のホットドッグが入っているランチボックスもあります。
・飛行機の組み立て中をのぞきに来て、ケロちゃんに背中に何やら描いてもらったモグラ。彼が自分で組み立てた赤い飛行機でバムたちの後からおじいちゃんちにやって来たのを知っていますか?
・りんごやまのトンネル内の虫に、数字の1から9までの形のものをさがそう!
…などなど。
 こんな楽しみは、 『ミッケ!』 シリーズ とも共通する、1ぺージ1ページをすみずみまで眺めるという、たっぷり時間をかけたぜいたくな絵本の楽しみだと思います。
 




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