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うなぎパイは、固く焼けているのに表面にてらっとしたひと味があって、好きだ。週末に静岡に行った女性社員がおみやげに職場で配ってくれて、久しぶりに食べた。パイを包んだ小袋に書いてある文字も昔のままなのだが、時代が変わったからだろう、ドキッとしてしまった。おもて≪夜のお菓子うなぎパイ浜名湖名産≫うら≪うなぎパイは……フレッシュバターを豊富に入れたパイに、うなぎの粉、夜の調味料ガーリックを配合し、日本茶にも、コーヒー、紅茶にも合い、あなたの暮しに微笑みのひとときを与えるお菓子です。≫このお菓子、男のぼくは職場で配れないなぁと思ってしまった。とくに女性たちに対しては。あまりに意味深(しん)で。セクハラということばさえ存在せず、生命保険会社の勧誘員が年末に配ってくれる卓上ヌードカレンダーが職場の机にあった昭和末期~平成1桁には、まったく自然な「にやり」感だったろう。ところが、保険会社が子犬の卓上カレンダーに切り替えて久しい平成26年になってみると、これらのことばがタイムカプセルから取り出したような感じがする。お菓子の製造元の春華堂のホームページを見ると、≪夜のお菓子とは家族団らんのひとときに召し上がってもらいたいという意味です。命名者は当社二代目社長の山崎幸一です。うなぎパイが誕生した昭和36年は高度経済成長の真っ只中。その成長期において女性も社会に働きに出るようになり、子供たちも学校・塾など……皆が家にいる時間が少なくなりはじめていたようです。そんな中、夜の夕食だけは家族の集まる団らんのひとときとして大切にされていた時間でした。そんなひとときに「うなぎパイ」を囲んで楽しいひとときをすごしてもらいたいと命名されたのが「夜のお菓子」です。ただ、実際には違う解釈もして買っていく方も多いようです。≫あぁ、そういうことでしたか。まさしく「夜のお菓子」はタイムカプセルだったわけだ。わが家など、夜の団欒のひとときという概念が結婚時点からほとんどない。いちばんの元凶は、激務のころにぼくの帰りが遅かったから。今や夜の団欒は実現可能だが、娘たちは好き勝手な時間に食事することに慣れきっていて、「ご飯だよ~」と声をかけてもなかなか集まらない。責められない。ぼくが悪いのだから。うなぎパイにおかれては、これからも時代を超えた「にやり」を振りまいてほしいものです。*ところで、ふつうの うなぎパイ(ニンニクが入っていると言われても、ニンニクはほとんど感じられないが)に加えて、「山椒味」のうなぎパイを食べてみたいと思うのは、ぼくだけだろうか。うなぎといえば山椒だから、春華堂さんも当然ながら真っ先に試作し、結果が散々だったから商品化されなかったのだろう。スパイシーなものを消費者が求める世の中だし、調味エッセンスも格段に進歩しているから、ぜひもう一度、山椒味うなぎパイの開発をしてもらいたいものです。プレーンと山椒味を10本ずつ入れた20本セットとか、どうですかね。いまのところ うなぎパイの変わり味は、アーモンド風味の「うなぎパイ ナッツ入り」と、ブランデーとマカダミアナッツ風味の「うなぎパイ V.S.O.P」だけらしい。
Nov 11, 2014
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大柄のウェイトレスさんたちの姿は、半世紀前のコミックスで見たかも。皿運びのひとというより、レストランを演出する女優たち。定番になっている Prime Rib Dinner をたのむと、鉄人28号の胴体のような銀色のカートが客席へ推されてきて、胴体をぱこっとひらくと巨大な骨付き胸肉のかたまりがいくつか、カリッとローストされて縦置きにしてあります。焼き加減と希望のサイズを伝えると、料理人が肉塊からローストビーフを厚切りにしてグレービーソースをかけ、マッシュポテトや付け合せ野菜とともに出してくれる。ロサンゼルスにある事業投資先の社長が「きょうは肉を食べにいきますから」というので、てっきりビーフステーキかと思っていたら、きらきらとしてやわらかなローストビーフだったのでした。Lawry’s Roasted Prime Ribs of Beefぼくが食べたのはさすがにこれより小ぶりの標準サイズ (Lawry Cut) で、焼き加減はもっとレアなところでお願いしました。Prime Rib Dinner は、この 「ローストビーフ+付け合せ (マッシュポテトなど)」 にサラダとヨークシャープディング (卵たっぷりの付け合せの焼きパン) がついてきます。Lawry Cut のセットで 39 ドルですから、良心的な価格です。写真にある大ぶりのローストビーフはたぶん Diamond Jim Brady Cut で 49 ドルのでしょう。37 ドルの English Cut なら、薄切りローストビーフ 3 枚で 37 ドルとなります。ぼくらを連れていってくれたひとは「ステーキが続くときは、これくらいがちょうどいいんです」と言いながら English Cut をたのんでいました。食べやすそうでしたね。Lawry's Original Spinning Bowl Salad昭和13年創業以来の定番 Spinning Bowl Salad とはこれいかに。巨大な銀色のボウルをさらに大きな氷水入りのボウルに浮かべて、くるくるくるっとスピンさせるのですね。ボウルのなかはレタスのざく切りでいっぱい。赤いビーツの細切りやゆで卵のみじん切り、クルトンなども載っている。半世紀前のウェイトレス姿の “女優” さんたちが、このボウルをくるくるさせながら、シェリー酒入りのドレッシングを頭上高くから たらたらりと垂らし、さくさく混ぜて出来上がりです。この写真くらいが1人分となっております。ローリーズが誇るサラダ作りの儀式は、肉切りの儀式に先立って行われ、お客たちは “女優” さんから前菜のたっぷりサラダをサーブされたあと、食べ終わったころにようやくまた “女優” さんが来て肉のサイズ・焼き加減・付け合せを聞かれるのですね。付け合せのベークト・ポテトは大ぶりのじゃがいも。ここでまた “女優” さんとのやりとりが。バターやかりかりベーコンみじん切り、青ねぎのみじん切りをかけるかと聞かれます。「ベーコンとねぎ」 と隣の御仁が言うと、“女優” さんは手早くじゃがいもを切り広げ、大きな匙に山盛りのベーコンと山盛りの青ねぎをかけ、さっさっさとじゃがいもに混ぜ込んでサーブしてくれるのであります。こちらのサイトで雰囲気が写真でご覧になれますLawry’s The Prime Rib, 100 N. La Cienega, Beverly Hills, CA 90211ダウンタウンにあるオフィスからラッシュアワーに移動するとずいぶん遠かったので、じつは「アメリカでステーキ食うのに、わざわざこんな遠出しなくてもいいんじゃないの?」という思いがあったのですが、来た甲斐ありと大いに納得させられたのでした。ぼくらを連れていってくれた皆さんに感謝をこめて、詳報させていただきました。
Feb 17, 2012
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芥川賞受賞作 『時が滲 (にじ) む朝』 に、主人公・梁浩遠 (りょう・こうえん) のおふくろの味として登場するのが 「羊肉泡摸」 (ようにくほうも) だ。単行本だと6ページと129ページに出てくる。(「羊肉泡摸」 の 「摸」 は正しくは 手へんでなく食へん。)6ページの箇所は、こうだ。≪「もうご飯にしよう。浩遠、あんたの大好物の羊肉泡摸 (ヤンローポオモオ) だよ」 母は父の話を遮って、浩遠の手を引っ張って食卓の前に座らせた。「羊肉泡摸、久しぶり、腹が減ったな」 浩遠の顔にやっと笑みが浮かんだ。兄も妹ももう待ちきれない様子で、手で白い、お月様のような摸をちぎろうとしている。≫せっかくの団欒シーンだが、どういう食べ物なのか、この描写ではあまりに素っ気なく、想像の広げようがない。129ページでは、浩遠が父の声を聞きたくなって、日本から中国の実家に電話する。≪「どうかしたのかい?」 父は気にかけて訊いた。「うん、んん」 気がくさる浩遠は喉が塞がれ、否定するのに頭を振って、息が荒くなった。「羊肉泡摸が懐かしくなっただろう? 食べたければいつでも帰って来い」「うん」 荒い息は嗚咽になった。≫大の大人から嗚咽を引き出すほどのソウル・フード (癒しの食)、羊肉泡摸 (ようにくほうも) とは、いかなる食べ物なのか。中国内陸部の家庭料理なので、広東料理・上海料理・北京料理などを出す店ではお目にかからない。さすが東京には、これを食べさせてくれる店がある。「西安刀削麺酒樓」 というチェーン店。(本稿の末尾に店の一覧を掲げたので、参考にしてください。)作中にいう 「白い、お月様のような摸」 ってのは、こんな具合。(「摸」は正しくは手へんでなく食へん。) 西安刀削麺酒樓では、ピザの一切れのように切ったのを出してくれた。こうやって切る前の、丸い形の おやき は正に 「白い、お月様のような摸」 だろう。厚さ1センチほど。小麦粉を固く練って、発酵もさせず ふくらし粉も加えず、そのまま弱火で焼いたもの。これをまず細かくちぎるのであります。そしてそれが厨房に戻され、羊肉と春雨とともに滋養たっぷりのスープで煮込まれて出てくる。ど~ですか。付け合せは、ラッキョウとコリアンダー、豆板醤 (とうばんジアン)。ご覧のとおり 「小粒のすいとん(水団)」 というのがぴったり。食感も、すいとん そのもの。粉をいったん練って焼いてあるので、澱粉がスープにあまり溶け出さないのも、いい。『時が滲む朝』 でも、「羊肉泡摸 (ヤンローポオモオ)」 ではなく、「羊の煮込みスープのすいとん」 と言うておれば、日本語の読者の脳裏にイメージを大いに広げたのではないか。椀の底にひそむ羊のぶつ切りも食いでがあります。スープに豆板醤を加えて、いっそう食が進みます。西安刀削麺酒樓のメニューによれば、 「羊肉泡摸」 は≪お好みの大きさにちぎった西安式ナンを柔らかなラム肉、ヘルシーな春雨と一緒にさっぱりしたスープで煮込んだ西安名物料理。≫なるほど。 「西安式ナン」 ときましたか。日本人には、この説明がいちばん直截 (ちょくさい) で分かりやすい。西安刀削麺酒樓の 「羊肉泡摸」 は、大が1,000円、小が630円。写真は、小。 ひとりなら、これで大満足だ。わたしが敢えて 「ようにくほうも」 と音読みするこの食べ物。西安刀削麺酒樓のレシートを見たら 「ヤンルーポーモー」 と書いてあった。『時が滲む朝』 では 「ヤンローポオモオ」 だが、北京音を正確にカタカナに移せば 「ヤンロウパオモー」 なのだ。こういうカタカナ化のいい加減さが、わたしには許せない。西安刀削麺酒樓の三田店 (下の写真。目下、仮店舗) で撮った。三田店は、港区芝五丁目25-7。電話 03-3769-6568. 年中無休。ほか、虎ノ門店。 港区虎の門一丁目11-10、電話 03-5512-7088. 日曜・祝祭日休み。神田店。 千代田区鍛冶町一丁目5-3 泰成ビル、電話 03-3253-5993. 土・日・祝祭日休み。神保町店。 千代田区神田神保町二丁目26-7。電話 03-3239-4466. 日曜・祝祭日休み。本郷店。 文京区本郷二丁目40-13 本郷コーポレイション2階。電話 03-5842-3118. 年中無休。
Aug 10, 2008
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漁師さんの全国一斉ストの日、朝の「とくダネ!」の解説で言っていたこと。魚の販売は、いまや7~8割をスーパーマーケットがおさえていて、スーパーマーケットがサンマ1匹100円で売ろうと決めるところから価格が形成されてゆく。「スーパーでサンマを100円で売るには」ありきで、仲買人の買い付け価格が決まり、漁師さんの実入りが決まる。農作物の場合は、市場(いちば)で値段が決められるとき作り手の事情も反映されるのだが、魚の値段はスーパーが決めてしまう。農作物と魚で、こうも扱いが違うのがなぜなのか気になって仕方がなかった。このままでは日本の漁業が崩壊してしまうが。◆ 支える産業群 ◆ふと、日本の漁業に崩壊されても、それで困る産業がほとんど無いことに思い至った。たとえば、農業が崩壊すると、肥料メーカーが困る、農業機械メーカーが困る、農業用のビニールシートのメーカーが困る、農業用の段ボールのメーカーが困る……という具合に、農業を支えている関連産業がわんさと思い浮かぶのだ。そして、肥料や農業機械や農業用のビニールシートは、農業のためだけに作られるものだから、農家の側が団結すれば価格交渉力がつく。漁業の場合はどうだろう。漁船も網も運搬用のプラスチックケースも、使い捨てではない。使い回してゆく。購入量は、知れている。経常的に消費されるのは、漁船を動かす重油であり、氷をつくるための電気だが、重油や電気の価格交渉を漁師さんたちがやれるものではない。◆ 店頭の付加価値 ◆農作物の場合、生産地できれいに包装して、そのままスーパーの店頭に並べるところまで「製品化」できる。この「製品化」が、無視できない付加価値だ。鮮魚の場合はちがう。スーパーまで箱入りで冷蔵されて届く鮮魚を、スーパー側でさまざまに加工することではじめて商品となる。商品化、製品化の部分をスーパー側でやっている比重が高いから、おのずとスーパー側に価格決定力が移るわけだ。◆ 魚のさばき方を家庭科で教える ◆日本の漁業を生かし続けるには、どうしたらいいのだろう。燃料費補填の社会主義経済を、今さら導入するのには反対だ。しかし、魚のおいしさを子供たちに知らせるために、給食につかう鮮魚代やその調理機器代を補填するというやり方は、あってもいいと思う。さらに、家庭科のカリキュラムに鮮魚のさばき方、食べ方を教えるコマを小学校・中学校・高校それぞれに入れてゆく。日本文化の継承という意味合いもある。そういうところから取り組んでゆく価値は、じゅうぶんあると思う。鮮魚はうまい。煮魚、焼き魚が大好きだ。
Jul 25, 2008
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7月1日発売の「マンゴーミルキー」は出色の出来です。マンゴーの、一口めの 「ポッ」 と軽い腋臭(わきが)みたいな匂いまで再現されているんですねぇ。これはね、本物のマンゴーを食べたことのある人が増えたから商品化できたんだと思う。(10年前だったらNGです。)いまだに昔ながらの蝋(ろう)びきの紙で包んであるミルキーが、ぼくは大好きです。ミルキー資料館で調べた。これまで「いちごミルキー」(平成13年発売)をはじめ、バナナミルキーココアミルキーももミルキーカフェ・オ・レ ミルキー抹茶ミルキーロイヤルミルクティー ミルキーパイナップル ミルキーと、いろんな変わり味ミルキーが出ていた。このあいだまで抹茶ミルキーを食べていました。これもおいしかったのだけど、どうも変わり味ミルキーは1時期に1種類しか販売しないようです。次は、ブルーベリー ミルキーなんか、どうでしょう。フルーツ味の詰め合わせも出してほしいなぁ。
Jul 3, 2008
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昭和30年代に出版された小学館の学習図鑑で「21世紀の生活のようす」といえば、3種の神器は「エアカー」「壁掛けテレビ」「電子レンジ」だった。エアカーは、鉄腕アトムなどのアニメでもおなじみだったけど、じっさいに空気で車体を浮かして走れば、街には砂塵がもうもうと舞い、激しい空気音は堪えがたい公害となったはず。他の2つの夢に比べて明らかに現実性とぼしい神器であるが、ひとは当時なぜあれほどエアカーにこだわったのだろう。壁掛けテレビは、ちょうど21世紀にはいって想定どおりのものが普及しはじめた。電子レンジは、21世紀など待たずに昭和40年代には普及がはじまったが、昭和30年代の図鑑にはたしか「ハンバーグもたった3秒で調理できます」と書いてあった。だから実際の電子レンジでは調理に1分も2分もかかるのでがっかりしたのだけど、これはまあ、出力さえ上げれば「ハンバーグが3秒で調理できる」機種も作れなくはない。4月2日の『ニューヨーク・タイムズ』紙に Harold McGee 記者が電子レンジ使用の注意点について書いていた。米国の、電圧 220ヴォルト、電気容量 1,100ワットの電子レンジとなると調理物の反応も激しい。バターを長時間加熱すると、バターの水分が沈下してあつまり、それが一気に沸騰爆発してレンジのなかがバターまみれになります、とある。水を長時間加熱すると、100度を超えても沸騰状態にならないことがあります。そういう超加熱状態の水をちょっと揺らすと、一気にはげしい沸騰が起こります。古くなったパンやナッツを長時間加熱すると、外面には変化が見られないのに内部だけ真っ黒に炭化します。これは、表面温度がさほど上がらないのに、内部の熱は発散せず炭化するほど高温になるからです。……出力が高いとこんなことも起こるのか。ハンバーグが3秒でできる電子レンジだったら、こういう調理場の悲劇が日常茶飯事になっていたろうか。0.01 秒単位で管理する電子レンジの温度制御技術も進んだはずだ。
Apr 10, 2008
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わたしの母の実家は「寿し治」(すしはる)という寿司屋だった。松山市の繁華街の二番町の小さな通りにあった。その辺り、昔は北京町といった。「ぺきんまち」ではなく「きたきょうまち」と読む。町名整理で地図から「北京町」は消えたが、「きたきょうまち」という華やいだ響きはなんともいえず好きだ。わたしが9歳ごろまでは「寿し治」の経営も順調だった。休日になると時々家族でお邪魔した。勝手口から入って裏の座敷にあがると、そのうち「ぬく寿司」(蒸しせいろ寿司)や「伊達巻寿司」(海苔の代わりに厚焼き玉子で巻いた大ぶりの寿司)を出してくださったものだ。おいとまの時間になると、近くにあった当時松山一の中華レストラン「泰平楽」(たいへいらく)の熱々の焼き餃子を発泡スチロールの小さな平箱入りでおみやげに下さったことが何度かあった。なにしろ40年前で、冷凍餃子など売ってなかった時代だ。ぱりぱりの皮をかじると肉汁が出てきて、肉粒が舌の上で踊ったのを今でも覚えているから、よほどうまかったのだ。いつもは「何を食べてもおいしいんじゃがね」と言って、食事は好き嫌いなしに残さず食べろという父が、泰平楽の焼き餃子に限っては「子どもに食べさせたかて味なんか、よう分からんのじゃけんね」と言って、1個しか食べさせてくれなかった。いちど、母が餃子の皮を買ってきて手作りの餃子を作ってくれたことがあった。どんな味だったか覚えていない。そのあと何度も「手伝うけん、餃子作ってや」とせがんだが、「餃子の皮つつむんは、むずかしゅうてねぇ」と言って、けっきょく二度と作ってくれなかった。母の準備する食卓に餃子がのぼりはじめたのは、スーパーで冷凍ものが買えるようになってからだった。 さて、餃子をたらふく食いに何度も通ったところといえば、広東省珠海市の新開地にある雑然とした水餃子の店。10年近く前のことだ。「豚肉餃子」や「豚肉+白菜の餃子」が定番だが、わたしが愛したのは「羊肉餃子」に「セロリ餃子」、「酸白菜餃子」。「羊肉餃子」は、頬ばるとあたかも濃厚なバターの香りが口に広がる。「セロリ餃子」 (“芹菜餃子”) は、しゃきしゃき感の残るセロリ入り。セロリにはうっすらと塩味がついていた。塩茹でにしてから刻んで餃子に包んだのだろうか。セロリのさわやかな香りが食欲をそそった。「酸白菜餃子」は、乳酸発酵させた白菜漬を刻んで餃子の具にしたもの。これまた、うっすらとした酸っぱみが口をさっぱりさせてくれて、さあもう2つ、あと3つ、ぷるりぷるりとした水餃子を運ぶ箸が止まらなくなるのだった。 農薬入り餃子の報に 「それみたことか」という評論はすでにたんと書かれているので、泉流としてはいささかの思い出を書かせていただいた。問題の「天洋食品」は中国河北省石家荘(せっかそう)市にある。ちかぢか築地の人民日報が、毒消しに「石家荘大虐殺」捏造記事でも書くのではないかと、半分本気で心配している。今回の一件がめぐりめぐって中国共産党と軍の権力闘争の材料にされ、真相追究が遠のいたりせぬことを祈るばかりである。 中国の食の安全に信頼感が置けない根本の理由は、かの国の言論統制にある。危険食品についての報道が中国で自由化されて、悪質業者があっというまに市場の批判にさらされる“普通の国”になれば、業界はかなり浄化されるはずなのだが。言論統制の体質を変えぬかぎり、中国共産党の役人がテレビカメラの前でどんなきれいごとや強がりを言っても信頼回復にはつながらない。
Feb 2, 2008
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4日間ほど、台湾のとある発電所ちかくのド田舎にいた。発電所長が「このまちではここがいちばんうまい」という店でわいわい夕食をとっていたら、横合いからギュヒーと鳴きながら豚がのそのそ入ってきて、店の人がすぐ追い出しにかかった。その店の名物が、鶏のぶつ切りと棗(なつめ)、枸杞(くこ)の実、山人参などを米焼酎で煮込んだ“焼酒鶏”という鍋物。酒の肴とアルコール摂取が一度で済んでしまうという手間いらずである。かき混ぜると、目をつぶってくちばしをかわいく開けた鶏ちゃんの生首が鍋の底から浮いてきた。わたしは大丈夫だが、日本の鍋物でこれをやったらたぶん不気味がられる。「煮込んであるからアルコールは飛んでるさ」と台北から同道してきた台湾人が言うのだが、そんなことはない。煮汁に、強めのビールくらいのアルコールを感じた。アルコールを飛ばすために、鍋をがらがら沸かしてフランベしている卓があった。うすいピンク色のほのおを盛大に上げながら、煮汁のなかのアルコールが燃える。じつはそれを見たから食べてみたくなったのだ。その店の他の料理がどれもうまいなか、“焼酒鶏”は塩味がほとんどなく、味は期待はずれだった。「塩を足そう」と言い出そうか……いや、もともと、こういう味なのかもしれない……とにかくアルコールで漢方薬材らしきものも煮たのだから体にはいいだろう……などと考えながら誰よりもたくさんおかわりをしていたのであった。
Feb 1, 2008
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韓国の取引先のビルの窓から見下ろすと通りの向かいに「チュオタン」と書いた看板が見えた。(もちろんハングルで。念のため。)周囲をビルに囲まれるなか、その食堂だけが平屋の建物で頑張っている。韓国のどじょう汁というのがどんなものか、今回のソウル出張最終日にようやく体験できた。基本の味付けは味噌(熟成がすすんでチーズっぽい旨みあり)+ 青唐辛子 + 胡椒 + 山椒。わたしが行った店は具がごぼう、韮(にら)、もやしなど。テーブルの上のガス焜炉でアルミ鍋をぐつぐつ。蓋を開けてかき混ぜたら、店のおばさまが「もっと煮込むのよ」という。蕪(かぶ)キムチや分葱(わけぎ)キムチを食べながら待ちに待って、ようやくお許しが出た。お椀に具と汁をつぎ、アルミ碗のご飯を平たいスプーンですくって汁に混ぜながら食う。味噌が粒々している。ごぼうや韮の表面に細かい味噌粒がいっぱい付いている。ところが肝心のどじょうがいない。きっと鍋の底のほうにたまっているのだろう。鍋から杓子で2杯目をすくう。まだ、どじょうにお目にかからない。そのうち、どじょうのものらしい小骨の小さなかけらを舌先で発見した。ひょっとして、どじょうは鍋に入れる前にすっかりすりつぶされていたのでは?細かな味噌粒と思っていたのが、あれがどじょうのミンチだったのではなかろうか。どじょう鍋の底まで全部お椀にすくって、仮説は確信に変わった。想像していたどじょうの切り身はどこにもなかったのだ。鍋を食い終わるころには、わが胃袋はサンバを踊っていた。お勘定を頼んだら、どじょう鍋(チュオタン)は7千ウォン(840円)だった。韓国なので、キムチ3種と青菜のおひたし、にんにく酢醤油漬、煮干のにんにく風味佃煮の小皿が食べ放題で、このお値段。ご飯は、ちょっと粟(あわ)をまぜた雑穀ご飯だった。店はソウル江区の「元祖原州鰍魚湯」。創業30年が自慢だが、店内の見かけは雑然とした大衆食堂だ。店を出たら、扉のわきの地面にプラスチックの箱がどてんと2つ置かれて、どじょうの群れが水のなかでうねっていた。何匹食ったのだろう、わたしは。次に行くときは、魚の形をとどめた「揚げどじょう」を醤油だれで食ってみたい。
Jan 12, 2008
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「奈良漬を食べて酔うこともある」という話。いつも話半分に聞いていたのだけど、キュウリとジンとヴェルモット酒で作る「食べるマティーニ」のことを読んで、奈良漬の話も嘘ではないと知った。キュウリの皮を剥き、お好みの形に切る。ジンとヴェルモット酒を8:1の割合で混ぜ(う~ん、ヴェルモット酒の比率が高いな)、これを満たした広口ビンにキュウリを入れる。キュウリのわずかな苦味を抑えるために、隠し味のシロップを少々。ここで登場するのが科学技術。広口ビンを脱気して真空に近づけると、キュウリのなかの空気も抜ける。ははぁ、キュウリが食べるとかりかりするのは、なかに空気を帯びているからか。そういえば、煎餅やクラッカーがぽりぽりかりかりするのも、なかに細かい空気の部屋があるからだもの。なかに空気が入ってなければ、煎餅もクラッカーも石のように硬いはず。さて、ここからが山場で、真空密閉を解いて空気を入れ込むと、あら不思議、かりかりキュウリの空気が入っていた部分に、こんどはマティーニが流れ込み、キュウリのマティーニ漬がいっきにできてしまう。この間、わずか2分間。だから、キュウリのサクサク感は失われない。テーブルに出すときには、セロリシード(セロリの種)、ライムの皮のすりおろしと塩を少々。12月9日付の The New York Times Magazine(『ニューヨーク・タイムズ』紙の日曜別刷り)で読んだ。題して The Edible Cocktail(食べられるカクテル)と。「つまみと酒がいっぺんに取れる究極のビジネスマン食品だ」とオチをつけそうになった。いかん、言語発想がいじましく毒されている!(←ひとりごと)
Dec 19, 2007
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“薑絲大腸”という客家(はっか)料理にうならされた。「薑」は生姜(しょうが)。「絲」は「糸」の正字体。生姜の酢漬けの千切りと豚の大腸のぶつ切りを炒めたもの。香りつけと彩りにニンニクや赤唐辛子も入っているが、主役の生姜に至っては香りつけというより食材としての位置を占める。生姜と大腸が4:6の割合で入っていた感じだ。生姜を食ってやるぞ。あ、そうそう、大腸のピュルピュルもね。そんな料理。一皿ぺろりと食ってしまった。生姜の細切り1本も残さず。寿司屋の生姜の酢漬けほど甘みをきかさず、酸っぱみにすこし塩味のきいた生姜。酢漬けの味が料理全体にしみ出た分、肉のうまみを吸いとった、ぱりぱりした生姜はけっこういけた。ちょっと鄙びた飲食街の吉林路にある“Ni家我家客家菜”という店で食べて、とびあがってしまったのだけど、ネット検索してみたら意外や意外、その道のひとには知られた店だったのだ。http://www.tabitabi-taipei.com/html/data/10102.html(↑ このページの中ほどに“薑絲大腸”も写真入りで紹介あり。写真を見ると生姜が目立たないが、じつは大腸の下にいっぱい隠れている)ぼくが行ったのはウィークデーの夜7時半ごろだったのだが、客はぼくの他にあと2人だけだった。もっと応援してあげよっと。“薑絲大腸”は、こちらのサイトにも紹介あり↓http://www.nihonshokken.co.jp/taipei/0208.html
Dec 4, 2007
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また台北に来ております。前回おそれいった客家料理の店で別の料理を食してみました。今回は3人で行ったので6種類注文できてハッピーです。さっそく、どんな料理だったかご紹介です。(↓ 前回の体験記)http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200709210000/今回いちばん感心したのは「ヘチマ入りの蟹味噌スープ」“蟹黄絲瓜”。目に鮮やかな薄緑の若いヘチマを切ったのが黄金色のスープに盛大に泳ぐ。じつはヘチマは、数少ない「わたしが嫌いな食材」なのであります。ゴーヤーも大好きのわたしが。日本でヘチマの料理を出す店って、ほとんどないはずです。ヘチマはね、苦くはないのですが、不思議に泥臭いのです。「なんでカネを払ってまで食べなきゃいかんのだ?」と思わせる。食感も「スカッ」じゃなくてスポンジめいた「スカ」です。だからメニューに“絲瓜”という字をみたとき、「お、客家料理店ではどう勝負してくるんだい?」という興味が先に立ったのですね。食べてみると、たしかにヘチマに泥臭さはのこるものの、蟹味噌スープの濃厚さと打ち消しあって、すっと入ってゆく。ヘチマと蟹味噌スープが互いに「口直し」になっている。黄と緑のあざやかさに触発された部分があったのか、大きなドンブリから何度もお替りしてしまった。それと「ゆがきワラビの香味ドレッシング+マヨネーズ添え」“涼拌過猫”。盛りつけに工夫がありました。細いワラビをゆがいて1.5~3センチくらいの長さに切り、それをのっぽでスリムなシュウマイの形にきゅっとまとめて、香味ドレッシングをささっと散らした平皿の上に6個のせ、それぞれのてっぺんにちょこんとマヨネーズとトマトの小片をあしらってあるのですね。箸でつまむと、ワラビはほろりとくずれます。その瞬間のちょっとした驚きがいいわけです。ねとついたところのない、フレッシュ感あふれるワラビでした。ほかに食したのは、「高菜漬と豚肉と梅肉のスープ」“客家福菜鍋”(超豪華梅茶漬けをスープだけ出されたような……)「三枚肉の冷シャブの発酵豆腐味噌添え+ミニトマトの蜜煮」“腐乳三層肉”(隠しメニュー。ご飯がすすむ。ミニトマトのつけ合わせがにくい)「中華クルトンと牡蠣の塩炒め(生姜風味)」“油条鮮{虫可}”(これまたプリプリの小さなカキと油条(ヨウティアオ)との食感コンビが絶妙)「ゆでタケノコの細切りの塩タマゴ黄身和え」“鹹蛋玉筍”(目に麗しい。粉っぽい塩タマゴの黄身とゆでタケノコの味感のバトル。たくさん食べるものではないが、口直しに食べるならいける)後半の3品は、↓このブログの写真の7枚目、9枚目、10枚目です。http://www.wretch.cc/blog/amykaku&article_id=9523970今回行ったのは、前回行ったところの姉妹店で、“桐花” 民生東路3段7号 tel(台北02)2518-2766場所は便利ですが、やや大衆的。前回の南京東路5段は場所は不便ですが、インテリアがよかった。
Oct 18, 2007
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『Taipei Walker 台北ウォーカー』9月号に「食」関連の人気ブログの特集があって、おかげで今日はおしゃれな客家(ハッカ)料理の店に行けました。こんなところです↓http://www.wretch.cc/blog/amykaku&article_id=9523970台北市南京東路五段315号「桐花315客家料理」何度かかよってひと通り食べてみんといかんな。そう思った店でした。上掲のブログには出ていませんが『台北ウォーカー』誌記事のほうに紹介のあった「紅糟鶏」を注文しました。紅麹で発酵させて味噌みたいになった豆腐(沖縄の「豆腐よう」)に鶏のモモ肉を漬け込んだあと、粉をまぶして揚げたもの。これを、フレンチ・ドレッシングに砂糖とニンニクを混ぜたみたいなタレでいただきます。味がかなり飛んでますが、珍しさで食が進みました。もうひと品、「{火悶}筍滷大腸」。さくさくと白いタケノコの塩ゆでを豊かに盛って豚の大腸のぶつ切りを八角風味で甘がらく煮込んだのを乗せて青葱をぱらっとふりかけた。組み合せがいい。色も味も。タケノコにあれこれ味をつけずにシンプルな塩ゆでのまま、甘がらい臓物にあわせたところがいい。ブログで「桐花315客家料理」を紹介してくれた Amy 郭さん(「郭」の字はわたしの想像)は、日本の商社の台北事務所に勤めていて(……てことは案外わたしの勤務先にいるひとかもしれないけど)「中国料理なんか老人が食べるものだと思っていたけれど、接待でいろいろな店に行くうちに、奥の深さに目覚めた」のだそうです。↓ Amy さんのブログ。http://www.wretch.cc/blog/amykaku料理をアップで撮るのがお上手ですね。
Sep 21, 2007
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ドジョウの話になると、大学生のころ東京を訪ねてきた骨董好きの父をドジョウ鍋の店に連れていったときのことを思い出す。何でも残さずに食べろといって、東京の立ち食いソバの濃い醤油だしまで無理して全部のんだ父だった。家では白菜の一夜漬と煮干とモロミ味噌で食事を済ませてしまう父だった。江戸情緒を売りにしたドジョウ鍋の店を喜んでもらえるかと思ったら、ドジョウの小骨が口のどこかに刺さってしまったのか、「せっかく案内してもろたんじゃが、ドジョウは小骨が多(おお)て、いかんわい」と言って箸が進まず、鍋の大部分をぼくに食べさせた。申し訳なくて、今でも「どぜう」の俳句を目にするとその日のことを思い出す。今になって思えば、自分が食べられなくても息子がむしゃむしゃ食っている姿を見られれば、まぁそれでいいかという父の心であったか。うちの場合、超雑食性の自分が食べられないものを娘がぱくぱく食べるというパターンはありえないので、あのときの父の気持ちをぼくは体験できない。突然ドジョウ鍋のことを書いたのは、『北國新聞』6月25日のコラム「時鐘」に、金沢名物のドジョウの蒲焼への言及があったから。台北の旅先のホテルで、ふと昔を思い出した。洒脱(しゃだつ)なコラムだ。≪温泉施設爆発という痛ましい事故の引き金になった「南関東ガス田」なるものが、首都圏の地下深くにあるとは知らなかった。専門家なら常識、と聞いて2度驚いた。こんな意外な話はよくある。スーパーに並ぶ中国産のウナギも、実は欧州生まれだった。大西洋で産湯(うぶゆ)を使ったかば焼きに、お世話になって久しいのである。これも、EUが稚魚輸出規制を決めたことから、地球を半周する流通が広く知られるようになった。洋服やワインならともかく、ウナギに欧州生まれのレッテルを付けても、ハクは付かない。それにしても、飛び切りのごちそうだったウナギが手軽にわれわれの口に入るようになったのは、亭主の稼ぎが良くなったからでは決してなかった。金沢や福光には自慢のドジョウのかば焼きがある。県外の人に薦めると時折、「どこがおいしいの」といった顔をされる。たれのうま味はあるものの、骨やら焦げやらも一緒くたの食べ物である。それが美味なのは、幼いころからの夏の思い出が、一緒に舌の上によみがえるからであろう。美味は旅を嫌うという。地物にまさるごちそうはない、と教えてくれる夏の味である。 ≫「美味は旅を嫌う」と旅先で言われてもね……とおもうが、ここ台北で、わたしも所詮は旅のひとだ。
Jun 26, 2007
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肌にいいとはいえ、食事がコラーゲン過多。やばいぞ。過ぎたるは及ばざるがごとし。(コラーゲンといっても、ふかひれやツバメの巣では もちろんありません。)香港2日目の昼食。これは飲茶(やむちゃ)に行ったので、ぼくの必須アイテムの“鳳爪”をいただきます。「鳳凰の爪」とは、ニワトリの足指と足のひらを揚げて甘辛く煮込んで蒸したもの。足指と足のひらの骨をつつむのは筋肉などではなくちゅるちゅるになった皮とスジ。はじめての人にはグロテスクに見えますが(だから今回もぼくがほとんどを食べてしまった)、せっかく香港まで来たんだから、シュウマイなんか食ってられるか!その日の夜。ほんとは中国料理を希望でしたが、駐在員の希望で韓国料理店へ。メニューを見たら、「蒸した豚足(とんそく)」がありましてね。朝鮮版“アイスバイン”でしょうか。いつも食ってる「ゆでた豚足」とちがった、どんなのが出てくるのかと、好奇心にかられて注文してしまった。そしたら、焼肉をさんざん食い終わったころに、大皿登場です。豚足の表面は燻製にしたように濃い飴色。厚さ4ミリほどにスライスされ、皿を覆いつくさんばかりに並べられ、その下には豚の足の太い白骨がかくれている。けっきょく誰も手をつけなかったので、責任を感じたぼくが大奮闘して食ったのであります。豚足のコラーゲン質は、アイスバインのようなチュルチュルではなく、まるでグミのような食感でした。それを唐辛子醤油につけていただくという趣向です。ゴマの葉に巻いても good.そして翌日の昼が、また飲茶(やむちゃ)となりましてな。もう“鳳爪”は注文しないぞ、と思っていたら、豚足を3センチほどにぶつ切りにしたのを小皿に盛って、ちょいと甘から醤油を垂らして蒸籠(せいろ)で蒸したのが、目の前のカートにのせられ通り過ぎようとしていた……。え! 飲茶で豚足蒸しなんて、はじめてだよ。またまた好奇心で、蒸籠を取ってしまったのであります。前日の豚足よりはチュルチュルとして、スープ味が沁みていて、これまたうまいぞ。そしてきょう、香港から台北へ横移動したのですがね、市内に入ったらさっそく“牛肉麺”だ!いつもは、肉といえばシチューにするようなスジ肉のぶつ切りだけが入ったのを食っているんですが、きょう食った店の定番は、“三合一牛肉麺”と銘打ってあって、スジ肉のほかに、センマイのような「内臓」部分(いわゆるホルモン)と半透明の硬いゼリーのような「骨髄」の部分が入っていたのですね。骨髄は、和食の煮凝(にこご)りよりやや塩からい程度に煮込まれていて、あぁ、これってまたコラーゲン?じつはその2時間後、こんどは“東坡肉”(豚の角煮)を細長い蒸しパンで挟んでハンバーガーのようにして食べさせる、行きつけの店の前まで来てしまったが、さすがに自制心を働かせ明日以降へ、とっておくことにした。
Jun 3, 2007
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4年ぶりに香港に来ています。街を歩くと、においが香港なのですね。なつかしくなる。うまく形容できなくてすみません。砂ぼこりや料理店からの煙やいろんなものが、その街なりに混じりあって、東京でも台北でもないものになる。旅のたのしみは、においからはじまるのではないかと。洋書を読むたのしみが、紙とインクのにおいを確かめることからはじまるように。で、夕飯は Hunan Garden Restaurant (洞庭樓) にいたしました。ちょっと変わったものが食べたくなったとき、ときどき行ったところ。湖南料理の店です。商社マン的分類としては、メーカーの人を連れて行っても(値段的にも)失敗のないお店。日本でなかなか食べられない「鳩」がぼくは大好きで、だから「お茶の葉で燻製してローストした鳩のぶつ切り」(“和平香燻乳鴿”)をまず注文したのであります。好物なので、「おかしら」を手にとると小さな脳みそまでちゃんといただきます。ふつうの日本人は手をつけない部分ですが、もったいないですね。鱈のような白身魚を蒸したのに、クリスピーなピーナッツ味噌を厚めに乗っけた“洞庭豆酥鮮魚”も、味わいつつゆっくりいただきました。「ピーナッツ味噌」といっても、味噌味噌していなくて、細かく刻まれたピーナッツ(と思いますが、ちがう豆かも……)が、さくさくほろりとくずれる。白身魚のジューシーほろりと、ピーナッツのさくさくほろりが、いい相性です。ほかにも4品、定番料理を注文しましたが、その辺は省略し、〆めの炒飯の上品さにふれておきましょう。具は、卵白だけをふんわり固めたものと、貝柱をほぐしたのと、緑野菜の芯のところだけを細かい四角に切ったのと、その3種類だけ。シンプル。塩味だけの、うっすら仕上げ。貝柱の旨みを確かめながら食べる。満足しつつも、後半は卓上のインゲン炒めの味つけの塩漬け菜っ葉をちょっと加えてみました。そこはかとないもの足りなさが後をひく炒飯でした。
May 31, 2007
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「さっぱりと雑煮で」と題してみて、雑煮が“さっぱり”というのもおかしなものだと思ったけれど、ほかの諸々がこってりしてしまったから、雑煮がいちばんさっぱりしているのだ。ことしのうちの雑煮は、ぼくが干渉しなかったので、醤油と味醂でまとめて三つ葉を載せた、さっぱりした雑煮になった。ここ数年、やたらと台所に干渉して、チキンスープに白味噌をいれた変り雑煮に家族をつき合わせてきたのだけど、ことしの正月は静かに過ごすことにしたのでした。北國新聞1月3日号の「時鐘」も、さっぱりといただきました。≪「隣り雑煮」と言われる。一軒隔てただけで、見た目も味も違うのが雑煮で、究極の家庭の味と言えるだろう。石川は具は控えめ、富山は逆に具だくさん、と隣県では極端に違う。豊富な魚介類を石川では裏方のだしに惜しげもなく使い、洗練されたうまみを自慢する。富山では魚介類も主役の座が与えられ、甘エビやブリの切り身が豪華に椀を彩る。お国柄の違いを映す雑煮は、飛び切りのふるさとの美味によって、さまざまに土地の色も加える。よそではまねできない雑煮もある。奥能登では、厳寒の岩場で採った岩のりを寄せた「ぼたのり」が入り、海の香りを漂わせる。雑煮ツアーなど企画したなら、堂々の主役になる一品だろう。家の味に飽きたころ、一工夫加えるのが「代え雑煮」。飽食の時代には、こんな風習も姿を消していくのだろうか。加賀藩前田家伝来の雑煮の作法を教えてもらった。セリなどの青菜を必ず入れ、それを真っ先に食べる。残してはいけない。菜は「名」。名を惜しむな、虚名を残すな、という新年の覚悟を菜と共にかみしめる。家の味に続くお国自慢の代え雑煮として、広めたいものである。≫ 「代え雑煮」とは、新年早々いい言葉を教わりました。
Jan 3, 2007
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国旗、国歌があり、州旗、州歌、州鳥、州花があるように official state cookie がある州が米国に2つあるのだそうで。ニュー・メキシコ州は、bizcochito(ビスコチート)というアニスのきいたさくさくのクッキー (shortbread) で、シナモン・シュガーをふりかけてある。バターでなくラードを使うのが正統なのだという。たぶん、この香料の組合せがやみつきにするのだろう。バターを使わないので、香料がいっそう活きるのか。このクッキー、16世紀以来の長い歴史の賜物というのだが、期近には文久2年(1862年)にメキシコ軍がフランス軍と戦い、これを破ったのを記念して盛大に作られたのが、いわくとなっている。州議会が平成元年にこれを「州菓」にさだめた。もうひとつがマサチューセッツ州。chocolate chip cookie.またの名を Toll House cookie.Wakefield 夫妻がマサチューセッツ州の Whitman という町でレストラン経営をはじめた。建物がもともと18世紀に道路料金所 (tollhouse) として使われていたものだったので、レストランの名も Toll House Inn と名づけた。Ruth Graves Wakefield さんは、チョコレートを生地に練りこんだクッキーを作ろうと思ったのだが、時間がなくてチョコを適当に砕いて粉に混ぜ込んだ。焼いているあいだにチョコが溶けて混ざるだろうと思ったのだ。ところが、チョコレートは溶けず、この「失敗作」を彼女は Chocolate Crunch Cookies と名づけて売り出した。これが大当たりで、昭和15年に発表されたレシピが「元祖レシピ」になっているのだそうだ。以上、『クリスチャン・サイエンス・モニター』紙12月12日号から。http://www.csmonitor.com/2006/1212/p18s02-hfks.htmlこれを読んで思ったのだけど、日本で「国菓」 (official national sweet) を選定するとしたら、何を選びましょう。わたしの場合、パッと思いついたのがカステラ。ついで、(草加煎餅のような)醤油煎餅。ついで、粟(あわ)おこし。(「カステラ」は、わが国で進化をとげた窮極形なので、国際交流が生んだ“和菓子”と言っていいと思います)この辺でどのお菓子をまず思い浮かべるかで、性格判断ができそうです。「国菓」となれば、ほんらいなら、綺羅星(きらぼし)のごとく豊かな創作和菓子の世界から代表選手を選びたいですが。「県菓」(official prefectural sweet) となれば、愛媛県なら大名菓子の「タルト」(ゆず餡のスポンジケーキ巻にグラニュー糖をまぶしたもの)でしょう。地元に根づいた大名菓子がある県は、それが県菓ということになるのでは。甲論乙駁の県菓選びのテレビ番組など、作ったらけっこう盛り上がると思いますが、テレビ局さん、どうですか。
Dec 19, 2006
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先月、テキサス州・ダラスのお祭りで Fried Coke(コカコーラ揚げ)というのが「もっとも独創的な新スナック」賞をとって、それ以来評判が広まっているらしい。それがどういうものだったかは、あとで種あかしをしますが、その前にぼくならどんな「コカコーラ揚げ」をつくるか……。まったくの思いつきですが。まず1品目。コカコーラのシャーベットをつくってから、それをピンポン大に丸め、零下20度くらいで凍らせます。これに小麦粉+卵+バーボンウイスキー(香りていど)の衣(ころも)をしっかりつけます。油で揚げます。⇒ 皿に盛ると、やがてコカコーラ・シャーベットが溶けて、さくさくの衣を内側から濡らしはじめるはず。“小籠包”(シャオロンパオ)状態のコーラ天麩羅をご賞味あれ。そして2品目。甘いだけでは藝がなかろう。豚肉の大きなスライスを鉄板で焼いて、すこしカリッとなった状態のものを、コカコーラに漬け込みます。このコカコーラだれは、すこしシナモンをまぜて香りをつけ、きもちだけウスターソースも加えておきます。じゅうぶんコカコーラだれが滲みたところで、パン粉をまぶして揚げます。⇒ トンカツのコーラ味ヴァージョンですな。以上、泉 幸男版の「コカコーラ揚げ」でした。さて、テキサス州・ダラスの「コカコーラ揚げ」は……。コカコーラ味の生地をナゲット状に揚げます。これを3つばかりプラスチックのカップに盛り、コカコーラ味のシロップと生クリーム、シナモンシュガーをかけ、真っ赤なサクランボの砂糖漬けをのせます。いかにもアメリカ人が好きそうなスナックに仕上がりました。Fried Coke を“発明”したのは、コンピューター解析技師の Abel Gonzales Jr.(36歳)。この御仁、昨年は「ピーナッツバター、ジャム、バナナのサンドウィッチに衣をつけて揚げたもの」を出品したのだそうで。これまた、“オー、アメリカン!”なスナックですねぇ。==おことわり:本ブログの利用者は、楽天ブログ利用規約にしたがっていただくものとします。
Oct 31, 2006
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ハワイに行っていたぼくの大切なアシスタントから、「マカダミア・ポップコーン・クランチ」の広口瓶(gift jar)入りをいただきました。いわゆるキャラメル・コーンのずっしりかりかり噛みごたえのあるタイプで、そこにマカダミアナッツのキャラメル漬けがぽつぽつ混入してるんですね。ぎりぎりのところで甘すぎず、それでいて、ちょっと食べたら適度に満足できて止められるという、このテのお菓子としてはひとつの窮極を極めていると思います。ここに紹介あり↓http://www.islandprincesshawaii.com/products/caramel_popcorn/050.htmlぼくがいただいたのは、上段左側の Macadamia Popcorn Crunch です。画面の小さいほうのジャーですけど、340グラムも入っていて、けっこうデカいです。日本まで持って帰るの、たいへんだったよね。ありがとうね!じつは彼女はハワイに行っているあいだに例の「地震→停電」の1日を体験したのです。揺れの体感は大きかったけど、それでも日本なら停電などありえない震度で、ばっちり停電になって、14階のコンドミニアムは水も止まって、近くのスーパーで1時間並んで水を買って、14階までえっちらおっちら持って上がったんですね。でも、彼女は旅行の友にこう言ったんだそうです。「これで、きょうは星がきれいだよ~☆」(街が停電で暗いだろうから。)とってもすてきでしょ、かわいいでしょ。でも、せっかくの夜が来たら、停電が復旧しちゃったって。明るいハワイが戻ってきちゃったんです。
Oct 24, 2006
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けさフジテレビを見ていたら、長崎の「ハトシ」を紹介していた。長崎はね、仕事でけっこう行ったことがあるんですが、ハトシって知らなかった。日本の地方都市文化の奥は深い! (……って、誤魔化しちゃいけませんね。)卓袱(しっぽく)料理の1アイテムのエビトーストのことです。高カロリー、高コレステロールのエビトーストは、ぼくの好物なので、卓にのった途端に名前も聞かずに食べちゃってたかもしれませんね。エビやキクラゲをすり身にして、食パンで包み込むように挟み、これを一旦蒸してすり身を固め、パンにも湿り気を与えて油がしみこみにくくしたところで、からりとキツネ色に揚げるのですね。こんな感じです。<「山ぐち」のサイト>http://www.e-nagasaki.com/makers/shops/details.php?id=30<ちゃんぽんコラムのサイト>http://www.mirokuya.co.jp/mlmag/archive/vol100.html「ハトシ」の「ハ」って、「ハーガオ」(蝦餃=エビギョウザ=の広東語読み)の「ハ」かな? と思ったらその通りで、「蝦多士」の広東語読みでした。「多士」は、「トースト」の音訳です。うーん、なるほどね。台湾の夜市に行くと、「蝦吐司」と名づけて、これまたいろんな形のエビトーストがあるんだそうですが、じつは恥ずかしながら大きな夜市には行ったことがなくて、「蝦吐司」の世界をぼくは知りません。こんど台湾に行ったら「蝦吐司」さがしをしてみましょう。それにしても、エビトーストの元祖はどこなのでしょう。パンを使っているからといってヨーロッパとは限らないと思うのですが。この旨いもののアイデアがどこで発生して(世界の複数箇所で発生したものかもしれませんよ)、どういうルートで伝わり、進化を重ねていったのか?『「長崎ハトシ」の旅 ― 窮極のエビトーストのルーツ』なんて本の企画はどうですかね。雑誌企画で世界を旅して、写真特集連載のあとで本にまとめるわけです。長崎観光協会に、千冊くらいまとめ買いしてもらいます……なんちゃって、完全にコスト倒れ企画ですね。
Sep 16, 2006
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8月29日の『ニューヨーク・タイムズ』紙で Kim Severson 記者が「宇宙食の最前線」について書いていて、面白かった。宇宙ステーション計画実施も迫り、米・露・EUが共同で、フランス料理のシェフまで動員してメニュー開発を進めているらしい。(日本の「宇宙ラーメン」は、所詮、単発ものだったか……。)「へえ」と思ったこと、以下ご紹介します。ロシア・チームは、生トマトをよく持ち込むのだが、絶対にかぶりついてはダメ。かぶりついて汁が飛び散ると、無重力空間に浮かぶトマト汁を回収するのがえらく大変。だから、かならず鋭利なナイフでスライスして食べる。塩や胡椒も液状。塩粒や胡椒粒が無重力空間に飛んで、機器につまったり、宇宙飛行士の鼻や目に入ったらえらいことになる。柑橘系や香辛料系の香りの強い食べものが喜ばれる。無重力空間では体液がのぼりがちで、鼻がつまりがちになる。罐詰やパウチからの食事なので、臭覚の刺激に飢えるのだそうで、宇宙に数ヶ月もいるとa bottle of Tabasco or a raw garlic clove can be heaven(タバスコ1瓶、生ニンニクひとかけらが、天にものぼる美食)だとか。小麦粉でつくったトルティーヤ(パンケーキ)が重宝する。何でもくるんでサンドイッチにできる。普通のパンだと、かけらが飛んでしまう恐れあり、これが宇宙では大敵。
Aug 31, 2006
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引き続き、タイのB級スナックの話。海苔に小麦粉の衣をつけて揚げたスナックもあれば、え!?と驚くのが、魚の皮に小麦粉の衣をつけて揚げたスナック。いちおうウロコは取り除いてあるが、それでもいかにもガジガジしそう、というかちょっと生臭いのでは?と思われるが、たしかに煎茶のお茶うけに煎餅がわりに食べるのにはいささか不適当だけれど、ビールのつまみには、よい。タイ風のビーフンラーメン(スープは魚醤が基本)にすり身とともにカヤクとしてそえれば、すり身になった「身」と、すり身になれなかった「皮」が再び麗しくもめぐり合うことになる。この手のパリパリスナックといえば、むかし中国広東省広州市の蛇料理の専門店で蛇の皮をスティック状に切って小麦粉の衣をつけて揚げたのを食った。まあまあ、食えた。おなじく、蛇の皮をシャブシャブにして食べるというのもあったが(タレは醤油に唐辛子を浮かべたもの)、こちらはガジガジしていて、お世辞にもうまいとは言えなかった。日本の場合、パリパリ感を楽しむというより、醤油のこげた香ばしさのほうに嗜好が向くのでは。蛇の皮も、甘がらい醤油をさっとつけて、香ばしくあぶるとうまいかも………。うん、たしかにうまそうだ。
Mar 24, 2006
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ちょっと最近、タイに厳しすぎたかもしれない。仕事がひと段落しました。もう卒業間近である。工事現場からバンコクへ戻る2時間の道のり、たいていはライオン印のビール(「シンハ・ビール」と日本人は呼ぶ)を飲みながら、ドリアン・チップスとか豚肉の干したのとかニンニク風味のえびせん(ブランド名 "Hanami")とかつまむのですけどね、最近気に入っているのが、海苔に小麦粉の衣をつけて、煎餅風にさっぱりと揚げたもの。さほど取り立てておいしくないけど、さくさくしていて、あまり飽きません。あと、味付け海苔をそのまま油で揚げて、ちょっと唐辛子をきかせたスナックもいい。海苔を油で揚げるというのは、日本人の発想からすこしずれていますが、高温多湿の地でパリッとした食感を楽しもうとすると、しかるべく 「揚げる」 ということになるのでしょうね。タイの露店の揚げ物は、パリッと揚げることにいのちをかけているようなところがあって、フライドチキンなども衣がさくさくしてるのですね。これに辛甘い (hot and sweet) チリソースをかけて食べるのはなかなかに美味です。
Mar 22, 2006
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そば粉でクレープを焼くと、手巻き寿司の楽しさを味わうことができますが、クレープでなく小型ホットケーキを焼いて、手巻き寿司ならぬ「手挟みバーガー」の楽しさを満喫しちゃえ!という発想の人がいました。遊酔さん。「貧乏食堂 ちょっとイッてるお料理レシピ」を配信している。さっそくご紹介しよう。≪みんなで、どら焼きを食べるんです。手巻き寿司のように、好きな具をどら皮(そんな名前ではないが)にサンドして、“ウマいっ”“マズいっ”と言いながら、パーティをします。これは盛り上がったぜ、わが家では。じゃあ、いってみよう!材 料:ホットケーキミックス・あんこ・ 福神漬け・目玉焼き・チーズ・ マーガリン・マヨネーズ・おろししょうが 分量はすべて適当です。お気楽に。作り方:1.ホットケーキミックスで、小さく、まるく、薄く、 ホットケーキを作ります。2.焼けたら、好きな具をはさんで、ムシャムシャ。以上。あんこを入れず、目玉焼きとチーズ、マヨネーズをはさんだら、ハンバーガーのようで、旨かったです。おろししょうがとあんこは、しょうががピリッとアクセントになって、意外な美味しさ。なかなか旨かったのは、あんこ&福神漬け。あんこと塩系の味は、合うんですよね。みなさんもぜひ、やってちょうだいな。子どもは喜びます。≫クレープだと、「くるむ」感じで、具材の味がきつすぎると負けますが、ホットケーキで具を挟むとなると、ホットケーキもそれなりに主張するから、逆にいろんな具材の冒険ができるということかもしれませんね。しかし、「あんこ+福神漬」には参ったね。これは試してみる価値あり。クレープには合うまい (試してみる価値あり)。それにしても、遊酔さんの「どら焼パーティー」、はやく「日本が元祖」って広めておかないと、これを知った韓国人が得意のパクりで、焼肉+キムチをはさんで食ってみせ、「この食べ方は高句麗時代にすでにあったが、日帝時代に弾圧されてすたれていたのを最近 xx 教授が現代風にアレンジしたものである」なんて、またひとつ「なんでも朝鮮起源(ウリジナル)」の珍説を世界に広めるかもしれませんな。ところで、「貧乏食堂」の無料配信のお申込みは、こちらへ:http://www.mag2.com/m/0000109476.html
Jan 23, 2006
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事務所のあるビルの前で、おじさんが手押し車にのせて売っていたもの。ビニール袋いりのもち米ごはん。ちょっとにごった水をふくんでいて、ごはんは微妙に粒がしなしなしている。う~ん、これはたぶん発酵してるんだろうね。そういうビニール袋が5つくらいあって、そのまわりには、何かを葉っぱに包んだものを取り囲むようにして置いてある。う~ん、この葉っぱのなかは、おかずかな。まさか虫じゃないだろうね。まあ、ものは試しだ、買ってみよう。ビニール袋のふにゃふにゃしたもち米と葉っぱの包み、あわせて15バーツ(40円)。帰って開けてみたら、葉っぱはサトイモの葉で、なかにはビニールに包まれた発酵もち米があった。なんだ、同じものか。どうりで、買うときにおじさんが変な顔をしてたはずだ。おそるおそる食べてみた。米粒は、舌で軽く なでただけで つぶれてくれる。砂糖がけっこう入っていて、いわゆる甘酒ドリンクの味。ああ、日本人なら食べられるな。欧米人にはちょっと酷な味かな。タイ語で「カオ・マック」ないし「カオ・マーク」。4口くらい食べたら、何となく酔ってきて、「灯りをつけましょ、ぼんぼりに~」をこころのなかで口ずさんでしまった。タイ語の辞書でサトイモにあたる「ボーン」をひいたら、「サトイモの葉のうえに転がる水」という言い方があって、これが「移り気な女心」の意味なんだそうだ。言い得て妙。
Jan 14, 2006
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わが勤務先の同じ課の中堅社員のお父さまが脱サラし、実家を改造してはじめたお好み焼屋「DONDON 館」。会社の新年会をひらいた。日暮里駅から歩いて8分のところにある。最近は、ここで「お好み焼き」道を修行して、海外で店を開く人たちが続々登場しているのだそうで、店のご主人は脱サラして苦労した方ならではの、店の経営方法にまで立ち入ったレクチャーをしてくれるらしい。さいきんオランダで店を開いたお弟子さんの店では、なんとお好み焼きに「1人前 25ユーロ(3500円)」という恐るべき値札をつけたそうだが、それでも人気は上々なのだという。お好み焼は野菜がタップリはいって「健康にいい」ところが、見直されているらしい。この店の変り種のお好み焼。できあがったお好み焼きに、山芋のすったのをかけて、醤油をさっとふる。いわば、山かけお好み焼。これがしゅわしゅわとまろやかでうまい。片面を焼きつつ、周囲に餅の細切りを並べ、まんなかにピザ用のチーズの細切れを盛大にふりかける。これをどひゃんと裏返して、ちりちりと焼くのでありますな。チーズが溶けてどろどろになるのかと思えば、意外にも、鉄板でちりちりにされて、香ばしいクラスト状態になっていた。これにいつもの「ソース、海苔、鰹節の3点セット」+マヨネーズ。せっかくのチーズ味が負けてしまうなと思ったけれど、なんの、お好み焼の地と、カリカリしたチーズに、餅、この組み合わせが絶妙だった。奥、深し。http://www.tcn-catv.ne.jp/~dondonkan/
Jan 5, 2006
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バンコクのチットロム駅の近くに「感」という日本料理屋がある。ここに「寿司ピザ」というのがあって、びっくり。先日さっそく食べてみた。いかなるものかご紹介したいが、きょうは それだけではない。Google 検索してみたら、なんと日本をふくめ世界各国でいろんな「寿司ピザ」が花盛りらしいのだ。それをご紹介しようというのが、きょうの趣旨。さてまず、バンコクの「感」ヴァージョンだが、これはわりと単純。キュウリとカニカマを太巻きにした巻寿司を4切れ、皿に寝かせて、ひとつひとつに ちょうどご飯がほぼ隠れるくらいにスライスチーズをのせ、そこに3ミリ角ほどの赤・緑・黄のピーマンをのせて、チーズにやや焦げ目がつくまでオーブンで焼いたもの。ちょうどカウンターで食べていたのだが、わたしが口に入れてにっこり笑ってみせるまで、タイ人の板前さんがじっとこちらを見ていた。にっこり笑ってみせたら、板前さんもほっとした顔をした。さて、「寿司ピザ」大発見のことを書こうと思い、念のため「寿司ピザ」を Google 検索してみたら、945件もヒットしてしまった。「すしピザ」では 148件。カナダのトロント市のお寿司屋さんでは、「寿司飯をピザ生地のようにまとめて揚げたものに、サーモンとマヨネーズを載せて、あとは お店ごとのオリジナルでいろんなトッピング」ということらしい。これを紹介したブログがこれ:http://markzu.exblog.jp/717127そうかと思えば、名古屋市の「まとい寿司」というところでは、「寿司飯に卵を混ぜて作った生地の上に、握り寿司として使う新鮮な寿司ネタをドンドン乗せ、チーズをかけオーブンで焼いたら出来上がり」という寿司ピザがあるのだそうで、昼食時にはサラダつきで 900円。http://www.ctv.co.jp/kusukusu/2003/0222/sushi06.htmlこのくらいで止めておきますけど、テレビ局さんに提案:「寿司ピザ」のいろいろを おもしろおかしく試食紹介する番組、作ったらきっとバカ受けですよ。いや、すでにそういう番組はとっくに作られているかもしれない……。ご存知の方がいたら、どうかコメントを。
Sep 6, 2005
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近くのスーパーに、さしわたし40センチ近くに見える、つやつやした立派なゴーヤーが出ていた。味の素 Cook Do の中華合わせ調味料(と、しっかり書いてある)に「季節限定・ゴーヤーチャンプルー用」というのがあって、これがゴーヤーの近くにあった。おー、これは便利! と買ってきて、さっそくぼくが料理して家人にふるまった。でも、ゴーヤーチャンプルーって、沖縄料理でしょ。なんで「中華合わせ調味料」なの?売国は Cook Do より始まれり 航一ゴーヤーをぶんぶん振り回しながら、甲子園の中継番組を見る家人に、「知ってる? 高校野球の沖縄大会の始球式では、バットの代わりにゴーヤーの大きいのをもって振り回すんだよ」と、雑学を披露した。家人はしっかり信じてくれた。
Aug 14, 2005
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