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Oct 9, 2011

『サムスン栄えて不幸になる韓国経済』 by 三橋貴明

テーマ：韓国！(17934)

カテゴリ：世界を見る切り口

表題の「サムスン栄えて不幸になる韓国経済」のココロは、サムスンの繁栄が労働者への分配の縮小でもたらされていることを語る。

その帰結は株主配当の増大だ。単純化していえば享受するのは高級幹部や外国人株主である。

三橋貴明著『サムスン栄えて不幸になる韓国経済』（青春出版社、平成23年刊）

啓発されたのは、TPP （環太平洋連携協定）についての冷めた見方。

もともとぼくの意見は、
「TPP は交渉手法に問題あり。米国が例外を設けていることを棚に上げて、日本に対してまず全面的な受け入れを誓約させようという悪辣は、時間をかけて却下すべし。
通常の FTA （自由貿易協定）を交渉するのと同じ手法で交渉することを、交渉入りの前提とすべき」
というもの。

三橋貴明さん曰くは
「そもそも TPP に入るべきだという理由に挙げられている米国向けの自動車・家電輸出が日本のGDPに占める割合を見よ」
という。

≪日本の乗用車の輸出が GDP に占める規模は 1.23% だし、家庭用電気機器については 0.021% にすぎない。
GDPの2%にも満たない乗用車や家電の輸出をサポートするために、日本の農産物輸入に対する関税を引き下げ、法律サービスなどを自由化し、日本の訴訟大国化を認めろといわれても、無茶な話としかいいようがないのである。≫

そして、韓国が TPP ではなく FTA を選んだことを特筆する。
これには首肯せざるをえない。

TPP は、交渉ののっけから米国が決めたショバのルールに則（のっと）りますと言わされるわけで、そこのところはぼくも前から抵抗感があった。

日本の輸出の主力商品が、車や家電ではなく資本財や工業用原料であることを再三指摘する三橋さんの座標軸は正しい。
その座標軸に立てば、進むべき道が見えてくる。

論考の最後に、日本オリジナルの産業を創る施策として
「交通事故ゼロ社会」
実現のためのインフラ整備を挙げているのも賛成だ。

まず日本国内で新しい交通のインフラ整備をして、その「ノウハウ＋モノ＝システム」を輸出する。
モノではなく、システムを輸出するのが、これからの貿易競争に勝つ切り口になるからだ。

インフラ整備の財源には、日銀による国債買い取りを挙げている。
これも賛成だ。

いちいち波長の合う論者である。
書中には経済原理のイロハの講義も入っていて、大学のゼミ演習の教材にも使えそうだ。

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