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記事はWeb CG 試乗記は嶋田智之 からです。
初代であるNA型は、世界中のクルマ好きたちに「ライトウェイトスポーツカーは楽しい」「オープンスポーツカーは楽しい」という事実を思い出させたり、教えてくれたりした。2代目のNB型はその熟成版として、スポーツカーらしさの純度というものを同じベクトルで大いに高め、ロードスターというクルマの持つ資質を余すところなく楽しませてくれた、“理想のNA型”だった。そして3代目のNC型は、スポーツカーにネガティブなイメージが突きつけられた時代を、基本的パフォーマンスの増幅というそれまでやればできたのにやらなかった手口で乗り切り、伝統的なバランスと捨てることのできない矜持(きょうじ)を守り抜いた、最速のロードスターだ。 3世代にわたるそれぞれのロードスターにはそれぞれの貌(かお)というものもあったわけだが、3世代のロードスターの全てに見事に共通しているものもある。常にドライバーの気持ちに寄り添うようにして、望んだとおりの楽しさを、ちょうどいいくらいの素直な反応を通じて味わわせてくれること。常にサイズの合ったスニーカーのような心地よさであること。 世界にはもっと速いスポーツカーはたくさんある。もっと運動性能に優れたスポーツカーもたくさんある。けれど、ここまでどんなときでもスッと乗り込めばスッとなじんで、その瞬間からごく自然に一体になって走ってくれるようなスポーツカーというのは、そうはない。ここまで気安くつきあえるのにものすごく奥が深いスポーツカーというのも、そうはない。ビギナーならビギナーなりに、腕っこきなら腕っこきなりに、抜群の柔軟性を持って楽しさを提供してくれるスポーツカーだって、そうはない。 マツダ・ロードスターは、日本が世界に大いに誇っていいスポーツカーなのだ。 長い前置きといえば長い前置きだが、それが僕なりのロードスター観。スポーツカーが大好物なのにこれまでステアリングを握る機会がなかったのは不思議だけど、僕が最新のND型ロードスター(以下、ND)について気になっていたのは、パフォーマンスでも何でもなく、実はそういうクルマであり続けているのかどうか、というただ一点だった。 軽いな、と思う。先代よりも100kgも軽いのだ。それは加速時にはもちろんのこと、高速道路のレーンチェンジのときなど、ふとした瞬間にパッと頭の中に浮かんでくる感覚。体感的には初代のNAにとても近いようなところがある。それに加え、例えば車体の剛性やサスペンションの動き方など、研究が進んで最新=最良となった部分があるのがNDなわけだから、ワインディングロードはどれほど楽しいことか……なんて期待が膨らんでくる。 が、現場に着いてみると、もうホント勘弁してください、だった。走るのがはばかられるくらいの豪雨、路面はほとんどヘビーウエットである。それでもスケジュール的にはこの状況でも撮影はしておかないとならないわけで、渋々走りだしてみたら……ビックリした。雨中のワインディングロード・ドライブ、思いのほか良かったのだ。NDのコーナリングパフォーマンスの全てを味わうにはほど遠い試乗ではあったが、逆にぬれた路面だからこそ知ることができたものがあったからだ。 さて、マツダ・ロードスターの最新版は、間違いなく冒頭で述べたような“そういうクルマ”だった。むしろ、素直さ、一体感、扱いやすさ、奥の深さ、柔軟性といったそれぞれが、大幅に増幅されているように感じられた。マツダではND型の開発コンセプトのひとつに“原点回帰”を挙げていた──そもそも僕は、ロードスターが原点から外れたことはないと思ってる──が、これは“原点回帰エボリューション”と呼んだ方がいいんじゃないか? とすら思っている。 残念ながらパフォーマンスの全てを味わうことができたわけじゃないけれど、そんな状態で「買いか?」と問われたとしても、僕は自信を持って「買いだ」と答えるだろう。そう答えられるだけのモノを、ND型ロードスターは持っているのだ。それに、そもそもこんな素晴らしいスポーツカーが250万円だとか300万円で買えるのは日本だけだ、ということを忘れてはいけない。
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