悠幻郷

悠幻郷

ゆきおんな





あなたの腕に抱かれて わたしは幸せだったの
だからお願い 悲しまないで下さい
もうすぐ春が来るでしょう あなたとはお別れ
春が来て 雪が熔ける

あなたと過ごした日々は そう
はらはらと舞う雪のように 積もりゆく

あなたと出会えた この一つの季節の中で
わたしはあなたと言う ぬくもりに出会えたの



あなたと初めて出会ったのは 雪が降り積もる初冬
「冷えるから」と わたしに羽織を着せてくれた
「凍えるから」と あなたは屋敷に招待してくれたのに
わたしは 断り帰ったね

本当は あなたの傍にいたいのに
春が来る 雪が熔けてしまう――

あなたの腕に抱かれて わたしは幸せだったの
だからお願い 涙流さないで
春が来てしまえば 雪が熔けてなくなってしまう
わたしはもう あなたの傍にいれない



ぽろぽろと あつい涙が流れてゆく
私はもう あなたと別れなくては……



わたしはあなたが好きなのに 叶わぬ恋想いだったわ
さようなら わたしは冬のゆきおんな




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