エジプト生活 21






あらかじめ申し上げておきますが、今日の話の途中で
「ああ、こいつとうとう頭イカレタかな?」ってエピソードが出てきますが、イカレテないので、そこんとこヨロシク。

毎月一度、アレキサンドリアからカイロへ行っていた。
カイロにある駐在員事務所へ、仕事の報告書を提出することが義務付けられていたからだ。
そういうとカタイ感じだが、実はこれがなかなか楽しみだったのだ。
カイロで泊まるホテルでは、コーヒーが飲めたし、衛星テレビでMTVなどが見れたし、日本食レストランやピザハットで食事することができたからだ。

その日もカイロに一泊した後、アレキサンドリアへ戻るため駅に向かった。
いつもはすんなり切符は取れるのだが、なぜかその日に限って
切符売り場の前にものすごい人だかりができていた。
売り場に殺到するエジプト人のパワーはすごい。
順番?なにそれ。 ってな感じ。
みな口々に自分の行き先を叫びながら一つしかない窓口に手を突っ込もうとする。
いつもの小規模な小競り合いなら、負けずに突入できるようにはなっていたものの、こうなるといくら集団に飛び込もうとも
窓口にすらたどり着けない。
見ると、窓口係の男は時折紅茶なんぞをすすりながら、別の係員と談笑しながら仕事していやがる。
もしも~し!目の前で繰り広げられているチケット争奪戦が見えませんか~?

午後1時発の列車に乗るために、駅に着いたのが12時前。
そのうち「1時のチケットはもう売り切れ~!」
さらに「2時のチケットももう無いよ~。わはははは」なる声が聞こえてきた。
そこで集団の半分近くがあきらめて離れていったので、おいらは前から3番目くらいの位置まで進出。そのまま3時のチケット販売を待ち続けた。
ただひたすら待ち続けること1時間。ようやく再び窓口に係員が戻ってきた。
さあ、今度こそチケットを入手せねば!
鼻息も荒く窓口に手を突っ込もうと身構えていると、係の男は
「あ、3時のチケットももう無いよ~ん。」などと言い、再び去っていった。
先に言えっつーの!

このままではラチがあかない。おいらはチケット予約窓口へ行ってみた。そこで聞いた衝撃の言葉。
「今日のチケットは全部完売ですよ」
おいおいおいおい。
だから先に言えっつってんだろ!!

さて、困ったことになった。
仕事の関係で、その日のうちにアレキサンドリアに戻らなければマズイ事になるのだ。
おいらは一度、駐在員事務所に戻った。
そこで事情を説明したところ、「ちょうどアレキサンドリアまで客人を送るため社用車(ベンツ!)を出す。それに同乗していくといいよ」と言ってくれた。
ヤレウレシヤ。これで一安心。
車の出発まで、事務所の片隅でお茶など飲みながら待つことさらに1時間あまり。
やっと呼ばれたのでシッポを振りながら行ってみると、
「さっきのベンツの話、あれキャンセルになった」という非情なお言葉を頂戴する。あー・・・・そうでっか・・。
「8時のスーパージェットならまだ取れるかもしれないよ」
と言う実に適当なアドバイスをもらい、事務所を後にする。
スーパージェットとは、カイロ→アレキサンドリア間を走っている高速バスで、なかなか快適なのだが、列車と違って席は狭く、やはりちょっと疲れるので一度利用したっきりだった。
しかし背に腹は変えられない。おいらはスーパージェットのチケット売り場へ向かった。
あいにく8時のチケットは売り切れだったものの、なんとか9時発の最終バスのチケットを入手することが出来た。
朝、ホテルを出発してからかれこれ10時間。やっとバスが出発したときにはホッとする反面、どっと疲れが押し寄せてきた。
ふ~・・・ヤレヤレだ・・。おいらはすぐに眠りについたのである。

しばらくして、なんとなく異変を感じて目が覚めた。
ナンダ?と思って外を見ると、バスが止まっている。
レレレ?このバスはアレキサンドリアまでノンストップのハズ。
隣に座っている青年に「どしたの?」と聞いてみると
「バスが故障したんだよ」とのお答え。
マジっすか・・・・。
砂漠の真ん中にあるような一本道。
街灯なんてもちろん無く、バスの外はただひたすらの闇である。
いつ直るともしれぬバスの中、ただ呆然と外を眺めていた時、
おいらは見てしまったのです。
UFOを!

あ、大丈夫です。正気ですってば。
真っ暗な空に浮かぶ光を、何の光だろうなぁ、と思ってみていたら急にビューって動いたんです。
で、消えた!と思ったらまた離れたところに現れて、まだビューって移動して・・・・・。

やがてその光の行方をおいらが見失った時、急にバスのエンジンがかかり、直った直った!と走りだしたのです。

そんな呆れた顔をしてはいけません。
だって本当に見たんだもの!

で、アレキサンドリアに着いたのは夜中の1時過ぎ。
本当に長い長い一日でございました。


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