大いに迷うの巻





ドイツに赴任して最初の週末、おいらはゴルフの練習場へ行くことになった。
いや、正確には行かねばならなかった。

なぜなら、いきなりゴルフコンペに参加が 決まっていたから

確かに赴任前、「ゴルフはやりますか?」という質問をメールでもらっていた。
「打ちっぱなしで打つくらいです。コースに出たことはありません」と返事した
じゃない!

しかし、赴任後いきなり渡されたコンペの参加メンバー表には、しっかりと
おいらの名前が・・・・。
あのー・・・メールちゃんと読んでくれました?

「ム、ムリっす!」と弱音全開のおいらに、前任者は「じゃあ、週末に
練習に行ったら?場所教えるからさ」とこともなげに言うのだ。

とゆうわけで、まだドイツに来て一週間もたってないのに、一人で車を運転して
前任者に教わったゴルフ練習場まで行くことになったのである。

教わった道順を何度も地図で確認し、出発。
大丈夫。行けるさ。
言われた通りに行けばいいだけだもの。
レッツゴー!

迷走はいきなり始まった。
最初に曲がるべき交差点を難なくスルー。
「あ!」と思って、とりあえず戻れると信じて次の交差点を右折。
もう一回右折しないと戻る方向にならないのだが、その道は果てしなくまっすぐ続く。
あへー、とか言ってたら、橋が見えてきた。
あー・・・・橋は越えたくねぇなぁ・・・、とか思いながらも
なすすべなく橋を通過。
Uターンしたいが、真ん中に柵があってそれも不可能。
やっとあった交差点で右折してみるも、そのあたりですでにわからなくなっていた。
今どこにいるのか。
今どっちの方角を向いているのか。
自分は誰なのか。

こうなったらゴルフ練習場どころじゃないのである。
家に帰れるかどうか の問題であった。

もがけばもがくほど、なにやら人里を離れて行く気がする。
ああ・・もうムリだ。
半ばあきらめの心境で、適当にハンドルをきっていたら、
真正面から車が!!!!
あひゃーーーー!!!!
危うく正面衝突するところであった。
向こうの車にはドイツオババが乗っていた。
「何考えてんだこのババァ!」と日本語で毒づいたところでふと気が付いた。
あれ?反対車線走ってるのって オレぢゃん!
あっちを右、こっちを左と迷走を続けるうちに、いつの間にか日本で
慣れ親しんだ「左側」を走っていたらしい。
ドイツオババはえらい剣幕で窓をあけて怒鳴っている。
すまぬ。オババよ。

家に帰れるか、どころか「無事でいられるか」が問題になってきた。


迷走は結局3時間続いた。
「誰かに道を聞く」という画期的な方法を思いつくまで2時間かかった。

3時間経って、やっと見覚えの在る道に偶然戻った時の嬉しかったこと!
やった!帰ってきたああ!帰れたんだぁーーー!
自分の力で戻ってこれたことに大いに満足。
部屋に戻ってうまいビールをたらふく飲んだのであった。


で、ゴルフの練習の事なんてすっかり忘れていた。
翌週のコンペ。
林から林へボールを捜して走り回った結果、他の参加者に多大なる迷惑を
お掛けしたことを、この場をかりて謝罪致します。


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