灰色猫のはいねの生活

灰色猫のはいねの生活

その2


お姉ちゃんが怒っています。
お姉ちゃんは高校1年生です。
由記ちゃんとは6つ年がはなれています。
「小屋も持って来るし、えさも届けるって言うし、いいじゃないの。お母さんの実家でも飼ってたでしょ、白い犬。」
「その犬に私は咬まれたでしょ。本当に頼まれたら断れないんだから。」
由記ちゃんがおうちに帰った後、ペットショップの人はこう言ったのです。
「実は、繁殖用として飼っている犬がいるんですが、近いうちに新しい犬を仕入れるんです。犬種が違うので一緒には飼えないんですが、もし良かったら預かってもらえないでしょうか。」
と。
「由記は良いの?問題は由記なんだよ。」
お姉ちゃんに言われて、由記ちゃんは困りました。
人は犬派と猫派と、必ずどちらかに分けられるといいます。
それなら、由記ちゃんは誰もが認める究極の猫派でした。
「由記は小さい頃、親戚のおばさんに干支を聞かれて『猫年』って答えてたっけねえ。」
お母さんが言いました。
由記ちゃんは動物が好きです。
由記ちゃんの家では、鶏に兎に猫にハムスター、それこそニジマスまで飼った事があります。
にも関わらず、犬だけは嫌いでした。
「この前、池田さんの所の犬に吠えられて飛び上がって逃げてったじゃない。」
お姉ちゃんも言いました。
犬が嫌いと言うより恐いと言った方が正しいのだけれど、なぜ?と聞かれても物心ついた頃にはもう犬のそばには近よれなかったのだから仕方ありません。
ただ犬好きの人に一言、言い訳させてもらえるならば、猫におそわれても追い払えるけど、犬におそわれたら咬まれて死ぬかもしれないじゃない、と由記ちゃんは思っています。
追い払えない猫もいると由記ちゃんが気付くのは、大人になってからのことです。
「まあ、犬もいいじゃないか。番犬にもなるし。」
お父さんが言いました。
お父さんには逆らえません。
由記ちゃんもこっくりとうなずきました。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: