波と戯れるように  風に揺れるように

波と戯れるように 風に揺れるように

2013年07月15日
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テーマ: 寂寞の中で(1008)



「ああ ごめん 何か用をやっていたの?」

沙希の明るい声が麻由美の心を落ち着かせた。

「ううん 出るのが遅くなってごめん。今夜は折角誘ってくれたのにごめんね」

「あのね また 聞いちゃったの、あのカップルの話し」

「え?」

「うん 麻由美が巻き込まれていないかなってそれが心配で」

沙希の話しはこうだ。
式場の担当者が玲人の誘いに乗ってくるのか二人でゲーム感覚で
賭けをしているというのだ。
玲人の誘いに乗れば玲人の勝ちで玲人が勝てば婚姻届を出さない。
玲人の誘いに乗らなければ彰子の勝ちで、彰子が勝てば婚姻届を出す。
今までどの式場の担当者も玲人の誘いに落ちて玲人の勝ちとなっていたようだ。
そんなゲームとは知らない担当者は玲人の誘いに乗ってしまい、
彰子から玲人との関係を会社にばらすと脅される羽目に。
その為に担当者は式の当日まで針のむしろのような生活をしたあげく、
当日式場関係者の前で土下座をして謝る。

麻由美は沙希の話しを聞いて震えが止まらなくなった。
やっとの思いで掠れた声で絞り出すように

「沙希 助けて」

「麻由美 麻由美も同じ目に」

驚きの声を上げる沙希に

「うん 私が軽率だった」

もう声にならなかった。

「分かった 今からそっちへ行くから 待ってて」

沙希の声に麻由美はただ頷くだけだった。

その後からも玲人からの電話は何度も鳴り響いた。
電源を切っていまえばいいのかもしれないけど、沙希がこの部屋に着くまでは電源は切れないと麻由美は耳をふさいで携帯を見つめていた。

普段なら1時間も掛からずに着く距離に今夜はその1時間がとても長く感じた。
沙希が来る前にシャワーを浴びてルームウェアーに着替えて待つことにした。
そうでもしないともしかしたら玲人の電話に出てしまうかもしれないかも、
そんな弱気な自分に少しでも携帯を遠ざけようとした。

あの時の彰子の勝ち誇ったような笑い声が耳に張り付いて、ゾクゾクと悪寒が走った。
確かに婚約者のいる男性とあんな事をしたら不倫って思われても仕方が無いよね。
謝らなくっちゃいけないよね、
私から彰子さんに謝れば少しは収まる?
会社になんて言い訳しよう?言い訳? 違うよ、言い訳じゃない、始末書かな?
まさか自主退社? どうしよう?






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最終更新日  2013年07月15日 23時42分04秒
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