黒色花

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第十六話「コロコロは日よけ」


それでは・・・、どうぞ・・・。
「おい、コラ起きろ。」
日曜日の昼、紅蓮は、町の公園の一角のベンチの前に立っていた。
ベンチの上には、修羅がコロコロを顔にのせて寝ている。
「起きろって言ってんだ、起きろ。」
「・・・。」
いまだに修羅は、黙ったままだ。
むしろ、気持ちよさそうな寝息をたてている。
「こうなりゃ・・・。」
紅蓮は、サッとコロコロを奪った。
太陽のまぶしい光で、修羅は顔をゆがませる。
「ま・・・、まぶし・・・、とっとけるぅぅぅ・・・。」
「変なこと言ってないで、さっさとどけ、俺はここで寝る予定なんだ。」
「いや、決定事項かよ、嫌だね。」
寝起きの凄い顔をしながら修羅は断った。
それに食いつくように・・・。
「どけってのに!」
紅蓮も少し口調を強くする。
「いやだね!」
「なら・・・、嫌でもどかす!」
紅蓮は、大きく炎のパンチをあげた。
「いやいや!それはないだろ!」
「それもそうか・・・。」
紅蓮の拳から火が消えた。
だが、口論はまだ続く。
そして、少したったあと・・・。
「わーたよ、二人で座ろう。」
「しかたねぇな、今回はコレくらいにしてやる。」
口論は結局、引き分け。
二人で座ることにした。
「うぃー・・・、やっと座れた。」
「よかったな。」
修羅は、ヒョイっとコロコロを拾うとペラペラとページを、めくり始めた。
「なあ、修羅聞きたいことがあるんだが・・・。」
「んお?何だ?」
相変わらず、コロコロに目をやっている修羅、紅蓮は少し間をとった後・・・。
「なんであの時、俺の護衛なんかしたんだ?」
「んー・・・、忘れた。」
「あのなぁ・・・。」
紅蓮は、ため息をした。
そして、あきれた。
「忘れて悪かったな。」
そう修羅は言うが、姿からして反省の色がない。
「いい加減、コロコロ離せよ、俺の話を聞け。」
「なんで?耳は、何かしながら音を聞くためにあるんだぜ?ちゃんと聞いてらぁ。」
「ふざけるなよ?ちゃんとした姿勢で聞け。」
「・・・、知るか。」
「んなぁ!お前・・・!」
紅蓮は、拳を振り上げた。
「だけどなぁ・・・。」
このひとことで、紅蓮の拳は止まった。
「お前といるとなんか楽しいんだよなぁ・・・、俺、今まで楽しいなんて思ったことないし・・・。」
修羅は、フッと笑ったあと、こう続けた。
「俺、最初一人ぼっちでよぉ、コロシの技術しか教えられなかったんだ、もちろん友達はいないぜ。」
「・・・。」
「で、俺は、アイツに拾われたワケ。」
「ひ・・・、拾われたぁ!?なんで!?」
「ああ・・・、その話はいつかな・・・。」
「?」
「おおっと・・・、もう五時か、帰ろうか、紅蓮。」
「・・・、ああ・・・、帰ろうか・・・、またな、修羅。」
「じゃあな。」
紅蓮は、帰る途中、色々考えてみた。
修羅は何者なのか、コロシの技術?わけわかんね。っ的なことを考えていた。
「まあ・・・、時がきたら分かるだろ・・・。」
紅蓮は、そう信じ、家に帰った。
第十七話に続く・・・。


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