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ミューンの森~Forest of Mune~
闇の月姫
「 闇の月姫 」
足元にあるのはいつもの石畳の筈。
普段なら何も気にかける事無く、風のように駆け抜けている筈の道だ。
街と街をつなぐ街道の荒れた地面とは違って、ロストールの主だった道は平らな石が敷き詰められて整備されている。
ラスティアも先程は宿屋から軽やかに駆けて、いつものように王城へと向かった。それが今はどうだろう。たった数ミリ、もしくは1センチ程しかない石と石との間のみぞが、人生最大の問題となってしまっている。
一歩踏み出してはつまずきかけ、また一歩踏み出しては何かにぶつかる。さっきから道沿いに整然と建ち並んでいる建物の壁に左手を添えてゆっくりと足を進めているのだが、この何とも言えない心もとなさはどうだろう。
ため息をつきつつ新たな一歩を踏み出した途端、何かに向こうずねを思いきりぶつけて、とうとうラスティアはずっと閉じていた目を開けた。
酒場の前に置かれているベンチが目の前にでん、と居座っている。
「くぅ~......。今の今まで此処にこんなもんが置いてあったなんて意識すらして無かったよ。」
痛む脚をを摩りながら、ラスティアは王城を振り仰いだ。
そうしてその広大な城の中で孤独と暗闇の中で時を過ごしている、1人の少女の事を考えた。
「アトレイア様......。彼女はずっと闇の中で暮らしているんだ。ずっと、この不自由さの中で。」
今日初めてラスティアが出会ったのは、殆ど陽の光など入らない暗い部屋で、独り静かに暮らしているお姫さま。
話をする相手も無く、楽しめる趣味も無く、まるで自分自身の人生など最初から無かったかの様に、彼女は彼女の目と同様に心も暗闇に閉ざしてしまっていた。
透けるように白い肌にはまるで血の気が無く、長い睫に縁取られた瞳は閉じられたまま、その少女はずっと俯きかげんに黒髪の少年の言葉に小さくうなずいているだけだった。
「目が見えないって、どれ程の苦しみなんだろう。幼かったアトレイア様を巻き込んでしまった大人達の争いって一体......。」
ラスティアは通りを鋏んだ向い側に見える宿屋に向かって、とぼとぼと歩いて行った。
「......そうなんだ。それでラスティアはこんなに打ち身だらけになっちゃった訳だね。」
ルルアンタ特製の軟こうを向こう脛や太股に塗りながら、今日の事を一通り話し終えて、ラスティアは沈んだ顔で頷いた。
********
いつも気になっていた、ティアナ王女の部屋へと続く隠し通路の向こう側を最初に訪ねたのはもう随分前の事になる。
ティアナ王女の部屋を訪ねるようになって間もなく、ラスティアはその奥の瓦礫に埋もれたドアを見つけていた。その時は単なる好奇心でしかなかったと思う。慎重に歩を進め、壁越しに耳を澄ませ恐る恐る開けた扉の向こうは、予想とは反して夜の様に真っ暗だった。殆ど感じ取れない程微かな人の気配と、控えめに焚かれたサンタルウッドに似た香りが無ければ、ラスティアは此処が空き部屋か倉庫とでも思っただろう。
『暗くて何も見え無いかい?じゃあ、今灯りをつけよう。』
まだ幼さの残る少年の声がそう告げると同時に、真っ暗だった部屋に淡く控えめな灯りがともった。
シャリ、と名乗ったその少年は、そこがラスティアのまだ知らないお姫さまの部屋だ、と告げた。そう言われて部屋の中を見回すと、ベッドとタンスの他には是と行った家具も調度品もない。簡素な部屋はお姫さまの住まいとは程遠い様に思えた。その部屋の隅、ベッドの側に萌葱色のラスティアの想像するお姫さまには、とても似つかわしく無い簡素なドレスに身を包んだ少女が俯き加減に佇んでいるのが目に入った。
『彼女の事を話すには、君はまだ少し頼り無い様だね。』
そう言ってラスティアの視線を遮ってから、黒髪の少年はにやりと笑った。
『もっと冒険して強くおなり。お姫さまを護る騎士様として相応しいように。そうしたらいつかきっと、お姫さまに会わせてあげる。』
好奇心、だったのか。
もう1人のお姫さまとの余りの違いに心を動かされたのか。
その時の出来事は、いつまでもラスティアの心から消える事はなかった。
もう少し強くなってから。
そう言われても、自分の力がどれ程になれば再び会いに行く事が出来るのかなんてさっぱり判らなかった。
それまで子供を見るようだった酒場の親父の目が少し優しくなったとか、ギルドに仕事を貰いに行った時「それはお前さんには簡単すぎるから、他の奴に残して置いてやれよ」と言われるようになったとか、少しづつ変化は感じられたもののラスティアにとってはどれも、あのお姫さまを再び訪ねられる程の強さを証明してくれるものではなかった。
世間から『黄金色の風』と呼ばれるようになっても、からかわれているようで面映かった。
そのラスティアが、今日になってとうとうその部屋に再び足を運ぼうと決心したのはどういった心境の変化だったのだろう。
「それでその男の子、えっとシャリ君、だっけ。その子がずっとアトレイア様の側に付いているの?」
「ううん、そう言う訳でも無いみたいなんだけど。ただその子が唯一のお友だちみたいで。先王の娘といえば、ティアナ様と同じ王女様だった訳でしょう?なのに、全くそんな華やかさなんてないの。太陽の光なんて全く入らない暗い部屋で、殆ど外に出る事も無くもう何年も過ごしているって。」
「それで、色惑の瞳ってわけ?」
「うん......。」
ラスティアは今日何度目かの重いため息を付いた。
その時は思わず『引き受ける』と返事をしてしまった。だが本当にそれが良かったのだろうか?
どんなに不条理な事態でアトレイアが光を失ったとしても、単純にそれを取り戻す事で事態は本当に解決するのだろうか?
何もかもを諦めたような表情のあの少女に、生き生きとした輝きを取り戻せるならどんな事でも厭わないと、そう思ってしまった自分の気持ちをラスティアは今一度見つめ直そうとしていた。
********
それから2ヶ月程の後、結局ラスティアは言われた通りの品を手に、アトレイア姫の部屋の隠し扉を開いた。
久し振りのその部屋は相変わらず夜の様に真っ暗で、判っていたとは言えラスティアは少しドキッとした。
満足げに笑って色惑の瞳を受取ったシャリの顔に、何故かラスティアは不安を覚えた。この品を渡せば目の前の美しい少女に光が戻る。それは素晴らしい事では無いか。どうして自分が今さら不安を抱く事がある?
眩い光の輪がアトレイアを包み込んだ。その光がゆっくりと少女の身体に吸い込まれていくように見えた。
ラスティアが固唾を飲んで見つめる中、まるで作り物の人形のように立ち尽くしていたアトレイアの瞳がピクリ、と動いた。微かに震える長い睫が、ゆっくりとゆっくりと開けられていく。
はじめは深い洞窟のように見えた瞳に、ひとつ、又ひとつ、夜空に星が瞬きはじめるかの様に次々と光が灯り始め、明るい色へと移ってゆく。途端に少女の表情までもが明るく感じられて来る。真っ白だった頬はほんのりと赤みがさし、その唇も紅をさしたかのようだ。
夜の空に輝く月の姫の様だ、とラスティアは思った。
ティアナが太陽の、眩いばかりの陽の光の姫だとするなら、アトレイアは夜の、柔らかな光と癒しの姫だ。
ずっと深い闇の中でひっそりと生きて来た少女には、人間の心の底に潜む闇までも垣間見えた事だろう。それでもまだこんなに清らかな瞳でいられるのだから、この少女には大いなる癒しの力があるのでは無いだろうか。ラスティアはそう思った。
いや、思いたかったのかも知れない。
突然その場の喜びに満ちた空気を引き裂くように、けたたましいシャリの笑い声が響いた。
その声が、その言葉が、ラスティアが感じた不安を確かな物にしてしまう。自分のした事は、果たして本当に良かった事なのか......?
「僕は夢を叶えるもの。心の底から望む者の願いを聞き、それを叶える。それがどう言う結果をもたらそうとそれは僕の預かり知った事では無いよ。」
ラスティアの心に、少年の無邪気な声が響いた。
目の前には自分に取り戻された光の世界に喜び心を震わせている美しい姫。その光を少女に与えたのは他ならぬラスティアである。
いつか、この少女が後悔する時が来るのだろうか。光を求めた事を、嘆き悲しむ時が来るのだろうか......?
たとえこれから先、どんな光景をアトレイアが目にする事になったとしても、それを後悔して欲しくは無いと、ラスティアは心から願った。そのためなら自分はどんな事をしてもこの姫を護るのだと思わずにはいられなかった。
それは、遠い昔に亡くした母の、控えめで儚い面影をこの少女の中に見い出したせいかも知れなかった。
それは、少女が身をおいていた深い心の闇を、ラスティアもやはり、心の奥に抱えているせいかも知れなかった。
「アトレイア様。私はラスティア。ラスティア・フリント。私は姫を護る騎士になれますか?」
「......ラスティア様......。いいえ、私のような者に騎士様等勿体のうございます。もし......もしお願い出来るのでしたら、どうか私のお友達に......なってはいただけないでしょうか。」
初めて自分に向けられた少女の声は控えめで、しかし限り無く暖かくラスティアの心に届いた。
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2003.12/8 UP
************************
キリ番2000を踏んで頂いたあっきい様に捧げます。
私にとっての始めてのキリリク作品です。
あっきい様には本当に長らくお待ち頂く事になってしまって申し訳なかったです。ひたすら緊張し捲って書いた作品になりました。
ちょっと気合いが入り過ぎて玉砕した感じです...。
あっきい様からのリクエストはずばり『アトレイア様』でした。
なんとも中途半端な作品になってしまいましたが、こんなんでも良かろう、と思って下さいましたら嬉しいです。
お待たせしてしまったお詫びと言ったら変なんですが、これまた下手の横好きの絵なんぞも添えてみました。未だフォトショップが使いこなせないもので、手書きの(しかも鉛筆描き)情けない物ですみません......
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