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ミューンの森~Forest of Mune~
若葉の頃・3
『 若葉の頃・3 』
その夜、お風呂からあがって髪を乾かしていた時に電話が鳴った。
リビングで電話を取った母が、「定期便よ」とニコニコとして受話器を差し出した。
一年生の頃から頻繁に電話して来ていた彼は、物怖じせず礼儀正しくて、今では私の両親のお気に入りに昇格していた。普段なら長電話などとんでもない!と口うるさい両親だが、相手が総一郎だと何も言わないようになっていた。
「はい。」
彼氏でもない男だからこそ、親の前だろうと照れることも無く話が出来るという物だろう。
私はぶっきらぼうな声で返事をした。
「あ、俺。」
下校の時とは違って、総一郎の声は落ち着いていた。
暫く彼の熱く語る千佳ちゃんの話を聞いた後で、おもむろに総一郎は、つくるとは会うな、と切り出した。
今更と言えば今更な総一郎の言葉に私は呆れた。
「何言ってんの?自分。」
「だから、神名とは会うなって。」
「だからどうしてよ。あたしは総一郎と同じにつくるとも友達だよ。あんた達が仲が悪いからってあたしにまでそれを強制しないで欲しいな。」
「......だからだな、あいつはお前が仲良くする様な奴じゃ無いんだよ。」
「なんでよ。つくるはいい人だよ。総一郎がそうである様に。それは昔仲が良かったあんたが一番知ってる筈じゃなかったの?」
私が言ったその言葉に、総一郎は暫く電話の向こうで固まってしまったようだった。
「薫子を廻って仲違いしたのは仕方ないけど、もうお互いに違う彼女もいるんだし、いい加減許し合うことは出来無いの?」
総一郎は答えない。
「...それともそれとは別のいがみ合う原因があるってこと?だったらそれを説明してよ。何も言わずにただ付き合うな、じゃああたしだって納得出来ないに決まってるじゃん。」
「それは......。」
言いよどむ総一郎。今までにも何度も繰り返されたこの会話に、私は正直ウンザリしていた。もっぱらこういったことを言ってくるのは総一郎の方で、つくるの方は一度もその話題を出して来ることはなかった。でも私の側に総一郎がいる時は、絶対近寄っては来なかったし、彼には似合わない冷たい表情で総一郎を睨みつける事を欠かさなかったから、つくるが総一郎に対して同じ様に敵対心を持っている事は間違いないのだろうと思う。
私は女だし、その上恋愛経験はおろか異性を好きになった事も無いから、同じ女の子を取り合う感情は創造も出来無いけれど、なんだかこの二人の啀み合いは想像の域を越えていて、逆に私には幼稚園児の喧嘩の様に思えて来てしまう程だ。まあ、単純に虫が好かない、という現象もあり得るのだろうが、二人が元は仲が良かったと知っているだけに私としても何とかしたくて仕方が無いのだった。
結局この日の電話でもこの話しは進展する事は無く、私は疲れて受話器を置いた。
毎週水曜日はクラブの日だ。デッサンクラブが行われる美術準備室に早めに入った私は、未だ誰もいない部屋でイーゼルを出して準備を始めた。広い美術室は絵画クラブと七宝クラブが使用するため、余り人気のないデッサンクラブは狭い準備室をあてがわれていた。まあ、重い彫像を毎週移動させるのが面倒くさいと言うのが本当の理由ではあったのだが。
それでもビーナス像のデッサンを行なう為に人数分のイーゼルを立てるとなると、狭い上に備品が所狭しと並ぶこの部屋は、身動きが取れないくらいになってしまう。結構抜けている私に取っては危険きわまりない環境だ。注意深くイーゼルの足が交差する床を移動しながら、部屋の端っこに置いた鞄に入れてある食パンを取りに向かった。
イーゼルの事ばかりに気を取られていた私は、準備室の扉を開けて入って来た人物に全く注意を払っていなかった。俯いている私とその誰かは、正面から思いっきりぶつかって、私はバランスを失ってそのまま後方に倒れかけた。
「うわっ!!」
「やだ!こける!!」
二人の声が同時に聞こえて、その直後私は誰かにウエストを抱えられる様にして抱きとめられた。
後方に向かっていた重心が一気に前方に引っ張られて、私は軽い目眩を覚えた。
頭の中が置いてきぼりを食った感じで、自分の身体に意識が戻るまでに暫く掛かった。
「美耶、大丈夫か?」
頭上から降りて来た聞き覚えのある声に、ホッとする。
「うん、大丈夫。良かった、つくるが抱き止めてくれて。」
私の言葉に密着していた学生服がピクっと揺れた。
「もう少しでイーゼル全部なぎ倒しちゃう所だったよ。」
「あ...流石にそれはヤバいだろうなあ。」
顔を上に上げて声の主を見上げると優しい顔で笑っているつくると目が合った。
体勢を立て直した私の様子を見て、つくるが抱きとめていた腕をそっと離した。密着していた身体が離れて、私は何故かホッとした。
「お前何をしようとしてたんだ?」
つくるの言葉に、自分が消しゴム用のパンを取りに戻ったのを思い出した。
「あ、そうそう食パン。食パン取りに来たんだった。」
「全く美耶の事だからイーゼルの方にばっかり意識を集中してたんだろ。」
図星の台詞に思わず顔が赤らんだ。
「どうせあたしはいつもドジですよ。」
普段ならもっと言い返している所なのに、今日は何故かそれ以上言葉が出てこない。つくるも何故かそれ以上突っ込んでくる事は無く、二人はデッサンクラブに入って以来一番真面目に課題に取り組んだのだった。
「美耶胡~。お客さんだよ。」
聞き慣れた薫子の台詞に諦めて振り返る。今日はHRが早く終わって私の下校の準備は既に整っていた。だからどっちかと言うと私の方が来るかもしれない後輩の事を待っていたのかもしれなかった。
千佳が総一郎と付き合いだして二ヶ月余り。下校時に私を頻繁に迎えにくる様になってからは二週間が過ぎていた。
新緑の清々しい色合いだった若葉もその色を深めて、風に乗ってくる香りも少し湿り気を帯びる事が多くなって来た。
この辺りは、6月を迎える頃から秋の長雨を過ぎるまで、天気が安定する事が少なく、多い時は3~4回も洪水の被害が出る地域だ。それだけに私達もそれに慣れっこになっては居るけれど、それでも毎日が鬱陶しい事に変わりはない。五月も下旬になると空気に雨の匂いが混じる日が多くなって、いやでも気分が塞ぎがちになる。
私は雨は好きだ。
でも自転車通学をしている都合上、出来るなら登下校時にだけは降って欲しく無い。それ以外の時なら、しとしとと降る雨の音も、夕立の時の匂いも轟音と共に降る雨に煙った景色も好きだ。
ドアの所に着いてから、何時もの様に千佳が口にする「おねえさま♪」の台詞が聞こえない事に気づいた。
言われていると気恥ずかしいくせに、耳に馴染んでしまった今となっては物足りなく感じてしまう。私って勝手だ。
身長150センチ足らずの千佳が、何時にも増して小ちゃくなっているのに気がついた。
「あれ?...千佳ちゃん?どうしたの、かな?」
いつでもどんな時でもニコニコと可愛い笑顔を絶やさなかった千佳ちゃんの、今にも泣き出しそうな表情にはっとした。
「ま~た仰木君が何か悪さをしちゃったのかなあ?」
薫子が何時もの調子で冗談を飛ばした途端、千佳ちゃんの大きな瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちて来た。
そのまま真っすぐに私の胸に飛び込んで来た千佳ちゃんを思わず抱きとめた私の耳に、遠くで鳴る雷の音が響いていた。
この時期の雷はもの凄い。それまで明るかった教室が一気に暗く陰ったかと思うと、轟音が一、二度響き渡り、それに少し遅れて乾いたパラパラパラ、と云った音と共に大粒の雨が落ちてくる。そしてたった数秒後には土煙をあげる程に土砂降りの雨が辺り一面を霧に包み込むのだ。
まるで千佳ちゃんの涙に吊られた様だ。
私はかれこれもう二十分も、胸の中で泣きじゃくり続ける千佳ちゃんの背を摩り続けていた。
流石に下校時の教室の前ではあまりに人目につきすぎるのと、千佳ちゃんの涙の原因は総一郎以外にはあり得ないとの薫子の判断で、私達はとにかく西校舎に場所を移した。
去年全国大会にまで出場したブラスバンド部は、今年も学校中から結構期待をされていて、先生もかなり熱心に指導をしている。合同練習が終わる5時までは、総一郎も出ては来れない。
私は放課後の校舎で比較的人通りが少ない階段の隅に佇んで、ひたすら千佳ちゃんが落ち着くのを待つしか無かった。
時折通り過ぎる生徒に不審な視線を向けられて、「べ、別に私が泣かしてる訳じゃないのよ~!」と心で叫びながら、出来る事ならこの場を逃げ出したい衝動に駆られていた。
そのとき、静かに化学室のドアが開いて、つくるがキョロキョロと辺りを見まわした。
雨のせいでかなり薄暗い校舎の一番隅っこに、抱き合っている人影を見つけて、ギョッとした様に目を見開いたのが可笑しかった。思わず小さく笑いそうになり、千佳ちゃんの状況に失礼だと気を引き締めた。
「......そんな所で...立ち話もなんだから良かったら入れば?」
つくるのその台詞に、当の千佳ちゃんが思わず泣きながらも吹き出した。
この場の状況を彼がどう受け取ったのか判らなかったが、つくるは静かにドアを全開にして、私達を招き入れた。
5時を回って音楽室を出て来たらしい男性の声に、つくるが席を立った。程なくして苦虫をかみつぶした様な顔の総一郎を連れてつくるが戻って来た。
「千佳ちゃん、何だよ。いったいどうしちまったんだぁ?」
その心底困った様な声に、私の胸の中の千佳ちゃんの、収まりかけていた嗚咽が再び大きくなった。
「もお、総一郎!そんな言い方って無いじゃない!もうちょっと他に言い様があるでしょう?」
そう怒鳴りつけてから、胸に張り付いた千佳ちゃんの肩を両手でぐいっと引き剥がした。彼女は嫌だと抵抗したけれど、それでは何も解決しないし、本当のことを言うと、ずっと抱きとめ続けていた私の腕も結構限界だったのだ。
そのまま彼女を総一郎の胸に預けると、その小さな身体を抱きとめた総一郎は、私に「済まない、迷惑をかけた。」と呟いてからちらっとつくるの方を見て、化学室を出て行った。
「はあ~~~。」
すっかり力尽きた感じで椅子に座り込むと、タイミングよく目の前に紅茶の入ったカップが差し出された。
「少し前に入れたから、丁度今が美耶の飲み頃だと思うよ。」
暖かいカップを受け取ると、摩り続けていた掌がじんじんと痺れているのが判った。
「......ありがと。」
何故だかいろんな物が込み一気に上げて来て、私はなかなかその紅茶を膝の上から持ち上げる事が出来なかった。
掌の中の紅茶の暖かさが、何故か切なかった。
鼻の奥がつん、と痛くなった。
あ、何か変。そう思った途端、手の中のカップにぽつん、と小さな波紋が広がった。
「あれ??」
そう呟いた私の背中を、何時の間に側に来たのだろう、今度はつくるの大きな掌がそっと撫でた。
どうして泣いてしまったのか、判らない。
本当に彼女の切ない涙につられてしまっただけかもしれない。
それとも、もしかしたら。
その理由にふと思い当たって私は自分でもビックリした。
私はあんな風に形振り構わず感情のままに突っ走って行ける彼女が、少しだけ羨ましかったのかも、しれない、と。
私が泣いたのはほんの数十秒の事だったけれど、高校に入って以来人前で涙を流したのはこれが初めての事だった。
不覚だ、と思った。
「ごめ~ん。もう大丈夫だよ。ちょっと共振しちゃっただけだから。」
触れるか触れないかの強さで背を撫でてくれていたつくるに、意識して明るい笑顔を向けた。
彼はちょっとだけ微笑むと、すっと私から離れて何時もの距離を取った。
よっぽどの事が無い限り、つくるは人との間にほんの少しだけ距離を置く。男の子同士だとどうなのかは知らないけれど、私とは気持ち一つ分。そうだなあ、一番近くて拳1個程度。その他部の後輩達とかだと、気持ち三つ分位だから30センチくらい。
勿論それが何時も何時もではないけれど、大体に置いてこれが彼の距離感だ。
それは去年彼が先輩とお付き合いしていた時も変わらなくて、何時見てもつくるは彼女との間に、気持ち三つ分の距離を取っていたのだった。
化学室はもう本も読めないくらいに暗くなっていた。閉めた窓ガラスを通して聞こえてくる轟音はこの雨が既に、バケツをひっくり返した、と云った様なレベルではない事を告げている。この季節に初めて降る大雨は大体何時もこんな風に凄まじい。
私は先程自分を襲った不安定な感情の揺らぎなどすっかり忘れて、これからどうやって帰宅するかだけが心配になって来た。
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