5月6日
暗くなりがちな日常では、常に明るく生きることが肝要である 。心の
方向があって、どちらを向いているかが大事である。夏目漱石に来客が
あって、夜中まで話し込んでいたので、お茶を持ってきた手伝いの女子に
「今何時か」と聞いたら「もう12時です」と答えた時「まだ12時となぜ云えぬ」
といった話は有名だ。見方、考え方、受け取り方で天地の差が出る。どうも
人生この辺に重要な鍵がありそうだ。
書では一見強くて豪快そうに見える線がある。しかし本当に強い線は
落ち着きがある。騒がしい線は本当は強くは見えない。強さ、を求める
あまりやり過ぎるということがある。古今の名筆には騒がしいのはない。
見せるという気持ちや、どうだというような線形がないのが古典の
古典たるところなのであろう。この辺が書の奥深さといえよう。
大橋知伸 号醒仙 刻「山高水長」 大橋知伸は会津の人、篆刻は
名人の域に達し、呉昌石もその刻に驚いた人である。日本篆刻史では
いまだ隠れた存在で、知る人ぞ知るである。そのうちきっと光が当てら
れることと思う。