NHK
フランスのマクロン大統領が、アフリカでの演説で、アフリカから略奪された美術品は返還されるべきだと発言し、それが火付け役になって各国で植民地時代に略奪した美術品の返還が急速に進み始めた。
アフリカ分割の端緒となったベルリン会議以降、各国は略奪品を収蔵して展示する博物館を建造して国力を誇示しているという歴史がある。
ヨーロッパではタブーであった「返還」という言葉が使われ始める。
一つの焦点となったのが、「ベニンブロンズ」と称される銅製の像の数々。フランス、ベルギー、ドイツ、そしてイギリスでも返還の動きが始まる。
ただ、事はそう簡単ではなく、ベニン王国の王族は我々が受け取る権利があると主張。他に、ベニン王国があったナイジェリアの州も権利を主張、もちろんナイジェリア政府も。
ナイジェリア出身の議員は、その点を危惧するが、なかなか受け入れられない。しかし、こういう時に、多様性に満ちた社会は違った視点を持てるという証拠。
アメリカからも返還に待ったをかける声も。
ベニン王国はイギリスから銃の援助を受けて周辺の諸国との戦争に勝利して奴隷を獲得し、銅の腕輪 ( ) を奴隷取引の通貨として使っていた。ベニンブロンズは、この腕輪を溶かして作られた。男は 57 個、女は 50 個で売られたそうだ。
返還に待ったをかけた女性は、「奴隷として売られたものの権利」を主張する。我々も、奴隷として売られた地域、国でベニンブロンズを見る権利があるではないか。
他には、受け入れ先の環境が整っているかを危惧する声。環境が整うまで、ヨーロッパの国は、「いったん預かる」という形にしておいて、徐々に返還したらどうかという案もある。
国際政治がらみの動きもある。ベルギー国王は、コンゴ共和国を訪問している。コンゴには、多くの地下資源が眠っているが、最近攻勢をかけてきているのは中国。ベルギーとしてはコンゴとの関係を再構築したい、そこに文化財返還という問題が絡んでくる。
「略奪した文化財の返還」という何の問題もなさそうな一件の持つ複雑さを知らされた。Comments