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"My Blood" “ 兄弟よ ”
When everyone you thought you knew
Deserts your fight, I'll go with you
You're facin' down a dark hall
I'll grab my light and go with you
共に闘ってきたやつらが君を置き去りにしたとしても僕はついていくよ、
君が暗闇に向かうのなら僕は懐中電灯を持ってついていくよ。
I'll go with you ×5
君についていくよ×5
Surrounded and up against a wall
I'll shred 'em all and go with you
When choices end, you must defend
I'll grab my bat and go with you
壁際まで追い詰められたのなら君の敵なんか八つ裂きにしてやる、
そして僕は君についていくよ。
選択肢が減っていきもう自分の身を守るために戦うしかなくなった時、
僕はバットを持って君についていくよ。
I'll go with you ×3
君についていくよ×3
Stay with me, no, you don't need to run
Stay with me, my blood, you don't need to run ×2
ほら一緒に行こう、逃げなくていいんだよ。
一緒に行こうよ兄弟、走らなくたっていいんだ。×2
If there comes a day
People posted up at the end of your driveway
They're callin' for your head and they're callin' for your name
I'll bomb down on 'em, I'm comin' through
Do they know I was grown with you?
If they're here to smoke, know I'll go with you
Just keep it outside, keep it outside, yeah
もしやつらが君の家まで来て外に出てこいと叫ぶ日が来たら
そいつらに爆弾を落としてやる、僕が相手になってやるよ。
やつらは僕が君と育ったことを知ってるのだろうか。
それでも出ていかず喧嘩腰なら僕も君についていくよ。
でも戦うのは家の外だけにしとこうぜ。
Stay with me, no, you don't need to run
Stay with me, my blood, you don't need to run ×2
ほら一緒に行こう、逃げなくていいんだよ。
一緒に行こうよ兄弟、走らなくたっていいんだ。×2
You don't need to run, you don't need to run
You don't need to run, you don't need to run
If you find yourself in a lion's den
I'll jump right in and pull my pin
And go with you
君がライオンの巣窟に閉じ込められちまったんなら
僕も手榴弾を持って飛び込んでやるよ。
そうやって君についていくよ。
解説
大切な人達のために自分は何をしてやれるのかという命題は Twenty One Pilots のメインシンガーであり作詞担当の Tyler を長い事悩ませてきた疑問であり、多くの曲でその胸の内を明かしてきました。9年前に制作されたデビューアルバム中の ”A Car, A Torch, A Death” で は苦しむ誰かの代わりに死ぬ事こそが愛なんじゃないかと歌い、2年後の Vessel 中の ”House of Gold” では愛する人達のために死ぬんじゃなく彼らのために生きる事の方が大切なんじゃないかと気付きますが、6年後の Blurryface 中の ”Lane Boy” や ”Ride” ではそうやって誰かのために生きる難しさについて打ち明けており、大切な人達を守りたい気持ちは確かにあるのに自分は何の助けにもなれていないもどかしさは上記の全ての曲に存在するテーマです。今までの曲が全て問題提起で終わるものや自身の葛藤を打ち明けるものだったのに比べ、この曲にはそんな迷いは微塵も感じられません。つまり長年の疑問に対する答えが見つかったんではないでしょうか。
まず兄弟と訳した ”my blood” ですが、これは仲間たちとか親しい人達に対する呼び名でもあると共に血縁関係も示唆していると取れます。なのでこれは、ドラマーの Josh など Tyler を支えてきた仲間たちや Twenty One Pilots のファン達、そして妻を含めた家族全員を合わせた大切な人達を指していると考えられます。そしてこの曲で Tyler は大切な人達に何が起きようと絶対に傍にいてやると宣言します。興味深い事にこれは Tyler が ”A Car, A Torch, A Death” でしたかったのに出来なかった事でもあります。何度も何度も「君についていくよ」と繰り返すのは、9年間の間にじゃあ自分には一体何ができるんだと考えた結果、原点に戻りあの時出来なかった事を今度こそやってみせるという決意表明のようにも聞こえます。
「共に闘ってきたやつらが君を置き去りにしたら」で登場する闘いというのは生きていく上でぶち当たる様々な困難や悲劇を指していると思います。病気にしろ、誰かの死にしろ、自分と同じような悩みやトラウマを抱えてる人間を見つけた時の安心感はとても大きく、だからこそ一緒に闘い一緒に苦しんでいると思ってた人間が自分より先にその壁を越え置いていかれた時深い喪失感を覚えずにはいられない人も多いでしょう。そんな時も傍にいるよと Tyler は歌っていますが、これを Tyler 自身も闘っている精神疾患との闘いの事だと解釈すると更にいろいろ見えてきます。精神疾患との闘いでももちろん先に症状が良くなる人もいますが、逆に症状が悪化し自ら命を絶ってしまう人も大勢います。自分と同じ病気で同じように闘っていた人間がそんな風に自分を置いていってしまった時の絶望感は先に病気から抜け出した仲間を見た時に比べる悲しみとは比べ物にもなりません。ただでさえ自殺願望に毎日そそのかされている時に身近な人間がそういった行動をとったときの影響はとてつもなく大きく、一気に死に引き寄せられてしまう人間も少なくありません。この現象については同アルバム中の ”Neon Gravestones” でも大きなテーマとされています。そしてそんな時に「君についていくよ」と Tyler が歌うのは、(音楽を通して)傍にいるよという意味もありますが、アルバム最後の曲 ”Leave the City” にもある通り、自分もまだまだ精神疾患の闇から抜け出せそうにないから一緒に闘うよという意味もあります。
「君が暗闇に向かうのなら僕は懐中電灯を持ってついていくよ」とありますが、生きていく上で避けようがない困難があるように Tyler は暗闇に向かう大切な人を止めることはできない事は認めつつも、それならば共についていき明かりを灯すぐらいはしてやれると歌います。この光は彼の音楽の事かもしれませんし、身近な人間ならば話を聞いてあげる事によってこれから向かう先を少しでも明るく見えるように手伝うよという事かもしれません。ラジオで流れる音楽には「君を守るよ」だの「救ってみせる」だのと歌う曲は多いですが、ただの人間に他の誰かを完全に守る事も救う事もできないという事実ときちんと向き合う歌手は少ないため、こうやって自分に何ができるのか真摯に考え9年間の間の葛藤も含め全て包み隠さず歌う Tyler はとても新鮮に映ります。
「壁際まで追い詰められたのなら」と歌う部分は前々作である Vessel 中の ”The Run and Go” で自分の犯した罪や悩みに「壁際まで追い詰められちまったよ」と歌う Tyler を思い出させます。同じ曲に「1人で立ち向かうには敵が多すぎるよ」、そして「今晩だけは隣にいてくれないか?」ともある通り、この曲でつらい時に傍にいるよと歌うのは、それしかできないからではなく、正にそれがそんな時に聞きたかった言葉であるからなんだと分かります。次に「選択肢が減っていきもう自分の身を守るために戦うしかなくなった時」というのは戦いたくなくてももうそれしか自分の身を守る方法がない状態だと分かりますが、これも同じように避けられない困難を表していると思います。「逃げなくていいんだよ」、そして「走らなくたっていいんだ」と続くのは、そんな避けられない困難に向かってゆく怖さを認め、ゆっくりでいいから一緒に一歩ずつ歩いていこうと諭しているのだと思います。
次の部分は家族に向けた言葉でしょう。「もしやつらが君の家まで来て外に出てこいと叫ぶ日が来たら」というのはマスコミや野次馬が有名人になってしまった Tyler の家族を見ようと実家までおしかけてきたらという意味だと解釈できます。「やつらは僕が君と育ったことを知ってるのだろうか」というのは子供時代を共に過ごした大切な家族のためならなんだってするという事を知っていてほしいという意味と、 Tyler の家族の住所などの情報は既にそういった野次馬たちに知られてしまっているのだろうかと思案する二つの意味があると思います。同じように「戦うのは家の外だけにしとこうぜ」というのは家の中にそういった野次馬を入れてやるなよという意味と、もしそんな風に人が集まってきたとしてもそれを心の内側に入れるなよ(=悩みの種にさせてやるなよ)という二つの意味があると思います。最後に「ライオンの巣窟に閉じ込められちまったんなら」というのは聖書の引用でもありますが、同時に Vessel 中の ”Migraine” でライオンは自殺願望のメタファーとして登場したことから、自殺願望に取り囲まれた状態だと読み取ることもできます。手榴弾は投げ込むことで敵を攻撃するため Tyler はわざわざライオンの檻に飛び込む必要性はありませんが、手榴弾で完全にライオンを消し去ることができない事が分かっているためやはり「そうやって君についていくよ」と続くのだと考えられます。
この曲は歌詞も深いですが、 ミュージックビデオ
も面白いテーマが散りばめられています。曲が始まるとまず母親の死に直面する少年と、彼の肩を支えるもう1人の少年が登場します。母親は死に、父親は酒に溺れ、小さな子供では抱えきれないようなつらい状況ですがこのもう1人の少年が彼の支えになっている事が窺えます。時が過ぎ高校生ぐらいの年になった頃には、少し気弱な少年と明るく無鉄砲なその親友がふざけ合う描写が増え、お互いかけがえのない存在になっている事が分かります。そのあと怖いもの知らずの親友がチアガール達が練習する中ふざけて踊り始め、チアガール達は気にしてない様子ですがそれを見ていたいわゆるジョックと呼ばれるスクールカースト上位の連中に目を付けられてしまいます。そのあと
2 人は
Twenty One Pilots が出演するハロウィンパーティーに行きますが、ここで彼らは骸骨の仮装をします。この骸骨の仮装は
Twenty One Pilots が無名だった頃ライブハウスで観客の気を引くため着始めたものでもあり、
Twenty One Pilots のファンが
Skeleton Clique (=骸骨の集団)と呼ばれ始めた由来でもあります。このことから、この
2 人は
Twenty One Pilots のファンを表しているとも考えられます。すると帰ろうと
骸骨のマスクを脱いだ
2 人を見、同じパーティーに来ていたジョック達が彼らと喧嘩するため家まで後をつけ歌詞のように外に出てこいと叫び始めます。気弱な少年に隠れてるように言い、無鉄砲な親友はジョック達の相手をしようと外に出ますが何人もいるジョック達に勝てるはずもなくボコボコにされてしまいます。気弱な少年はそれを黙って見ていられず、バットを片手に飛び出しジョック達を見事追い払います。そして親友を抱え家に戻ろうとしますが、家に入ったのは気弱な少年1人だけです。そしてその後のフラッシュバックで実は親友なんて初めから存在しなかったんだという事に気付かされますが、このフラッシュバックを見ると主人公はまるでその無鉄砲な親友のように行動している事から、この親友は主人公が作り上げた人格であり、気弱な少年に見えたのは母の死などのトラウマから傷付いた主人公の本心だと読み取れます。そしてその気弱な少年がバットを持ち自らジョック達を追い払った時、彼の作り上げた怖いもの知らずな人格はもう必要なくなったんだと、つまりもう彼は誰かの振りをする事もなく1人で世界に立ち向かっていけるようになったんだと気付きます。最後に、主人公が自らジョック達に立ち向かっていけるようになったのが
Twenty One Pilots の出演するハロウィンパーティーに参加した後である事と、そこで主人公が骸骨の仮装をしていた事、そしてこの曲が
Tyler が傍にいるよと歌いかける内容である事から、やはりこれは家族や身近な仲間達だけでなく
Twenty One Pilots のファンにも音楽を通して寄り添ってみせるというメッセージと、
”Guns for Hands”
や
”Message Man”
にもある通り彼の音楽を使って病気と闘ったり傷付いた心を癒したりしてほしいんだというメッセージが込められているように思えます。
追記( 11.16.2018 )
Twitter でこれを公開したところ、 @Bonokimu さんから「 My blood は 血縁関係や友達の比喩ではなくまさに自分の血のことを言ってると思っていました、流れなくていいよと、その可能性はないでしょうか?」とコメントをもらい、新たな視点に気付かせてもらえたのでここに追加します。私も言われるまで気付かなかったですが、確かに Bandito の曲中でも DEMA を "where we used to bleed" 、そしてこれから向かう先を "where our blood needs to be" と歌っているので ”My Blood” はそれとかけてるとも考えられます。そうすると "stay with me, my blood" というのは DEMA にいる事によって傷付いた身体に目的地に着くまで持ち堪えてくれと言っているとも取れます。そして "my blood, you don't need to run" が血に流れなくていいんだと歌いかけているとすると、自らを介抱する意志と DEMA で死んでたまるかといった決意も含まれているのかもしれません。
Twenty One Pilots の曲は何重にも意味が込められているものが数多くありますが、ニューアルバム Trench に含まれる曲は特にその傾向が強く、 私1人の限られた視点では見逃す部分も多いです。こうやって新たな解釈を教えてもらえると私も更に理解が深まるので、もしこのブログにある和訳や解説と自分の解釈が合わない、あるいは追加するものがあるという方は是非コメントお願いします。
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