2-42 篤の怒り



篤が朝子の腿を押し開き、バニーガールの衣装の中に指を滑らせると、彼女の全身はびくりと震えた。

「感じる? 朝子・・・」

自分を知り尽くした篤の手が、効率的な方法で身体中を愛撫していく中、朝子は悪寒に身を凍らせていた。

どんなに過敏な場所を触られても、気持ちよくない。

むしろ嫌悪感が走る。

どうして? この人を愛していないから?! 有芯を愛してるから?!

・・・きっとそれだけじゃない。私は篤に抱かれることで、この人ばかりでなくお腹の子のことまで騙そうとしている・・・有芯のことも、いちひとのこともみんな。

それで本当にいいの?!

私はこの先一生、この秘密を抱えて生きていくの?

それで・・・本当に私は幸せなの・・・?!

それで・・・本当にこの子は幸せになれるの・・・?!

それが、本当に私の望んだ家族の形なの?!

愛のないため息、愛のない触れ合い、愛のないセックス・・・それが、これから始まる新しい家族の出発点であっていいの?!

胸に込み上げてくるものを感じ、朝子ははっとした。しまった。無心が崩れた・・・何も考えるんじゃなかった・・・!!

嫌だ・・・

嫌・・・・・駄目・・・触られたくない・・・

「・・・朝子?」

朝子は彼の顔を見た。怪訝そうに自分の顔を覗き込む篤を見て彼女は慌てた。しまった、マグロになってた・・・。硬直してたら、やっぱり盛り上がるものも盛り上がらない。コスプレした意味がなくなっちゃう。

朝子は「ごめんなさい」と言おうとしたが、なぜか言葉が喉につかえ、出てこない。身体を動かそうとしても、脚も腕も金縛りに遭ったかのように動かない。

戸惑う彼女に、篤は静かに言った。

「どうして泣くんだ・・・朝子」

「・・・・・え?」

朝子の口からやっと出た音はそれだけだった。篤の顔は、みるみる怒りに染まっていく。彼はすっかり固まってしまったまま目から液体を垂れ流す朝子の身体を両手で押しのけ、朝子の頬を平手で張ると、ベッドの上に上体を起こした。

頬がズキズキと痛むのを感じながら、動けずに震えている朝子に、篤は言い放った。

「君は俺のほかに男がいるんだろう?! ・・・ずっとそいつと寝てるから、だから俺に抱かれたくないんだろう?!」

「そんなことな・・・」

「いいやそうだ!! 俺が何も知らないと思ったら大間違いだぞ!! 何が一人で旅行だ!! 男と会ってたんだろう?! 会って・・・くそっ!」

篤は拳で壁を思い切り叩いた。朝子の身体が衝撃でまたビクリと震える。篤は、朝子の唇にぶつかりそうなほど顔を近づけ、声を落とし言った。

「調べればすぐに分かるんだぞ・・・?! 相手の男の素性まで全部な!!」




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