小説 「ソリューション コード AAA」



 一人の巨漢の男が重たそうな瞼をこすりながらコーヒーをカップに注いでいる。
おい電話だぜアガタ。
「はい、アガタです。」

(おはよ~アガタ君、寝覚めはどうだね?
お陰でこちらはてんてこ舞の忙しさだよ。調整するのがやっとでどうも手に負えそうにないんだ。手伝ってくれないかね。君のすっぱ抜いたリストだろ君の手で記事にして欲しいのだよ。)

「俺は記者じゃない。記事なんて書いたこともないんだ。」
(記者でなければ記事を書いちゃいけないって法律はどこにもないよ。ちゃんと原稿料も渡すし、このリストの取材報酬もたんと渡すよ)
「俺は疲れてるんだ。これ以上言うならそんなリスト燃やしてしまっても構わない」
(明日のうちの記事は古今在ない逸品になるぜ、よろしく頼むぜ)

今から2ヶ月前の事である。
俺はある男と接触した。
濃紺の背広に赤のネクタイ。
普通のサラリーマンに見えた。

それは何気ない出会いだった。

いつものように俺は何気ない日常を送っていた。

テレビの音が聞こえる。
(今日は広島の被爆から丁度、200000羽の折鶴が贈呈されまし・・・)
「戦争の事なんて露ほどにもなく忘れていやがるくせに式典や行事の類にはこれみよもなし顔で行いやがる。」

(アガタ私の言う事、ちゃんと聞いてるの?)
「キャリー、僕は君の言う事に耳をそむけた事なんて一度もない。ちゃんと聞いてるよ。
君の選択は間違いじゃないその貝殻と貝殻ちゃんと繋がってるしよくてできる。
きっと幸運運んでくれるよ」
(やっぱり聞いてないわね。私の言ってるのは幸運を運んでくれるなんてことじゃないの!これがたったの10ドルに見える?ってことなのよ)
「君の目利きの手腕は僕が認めるよ。ほんとに買い物の才がある。」
(良かったわアガタちゃんと聞いてるじゃないの。それじゃこれ15ドルでオークションに出せるわね。任したわよ)
「写真や手続きするのだって結構大変なんだ。たったの5ドル儲けるのに苦労が大きすぎるよ。
入札先が決まったら搬送まで全部、僕がやんなきゃいけないんだぜ、そんな暇どこにあるっていうんだよ。」

(アガタ、貴方、私の気持ちやっぱり全然わかってないわ)

「君の気持ちはわかっているよ。」

(少し贅沢する為よ、退屈な毎日送りたくないの。わかるでしょ?)

「いいワインを飲むためか」

(そうよじゃやってね!)

何枚も写真を撮ったけどこれじゃ全然だ。売れっこない。
はぁ~
俺はいくつかの写真サイトにアクセスしてその調整技術なんかを探っていた。
俺の目にとある広告が目に入った。
オークション用写真撮影セット特価提供。在庫限り。
オークションに出す物を良く見せるには光の入り具合を調節できる環境が必要なのだ。その撮影機材を安くかえるというのである。

三番街か
ここから近いな直接アクセスしてみるか。

俺は次の日、三番街に足を進めた。


                      -つづくー


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