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秋乱-АΚΙЯА-
[strategy]
MASTER_CALL-B.B.D
strategy 戦略
戦争・闘争のはかりごと。
戦争の総合的な準備・計画・運用の方策。
朝山:「…吉海君、今日もバイト?」
翌朝。何も変わらない一日が始まろうとしていた。時刻は7時。《捕獲》授業を早々と終えた朝山と吉海が広いホールで一休みをしている。その他にも《ムルタ》が数十名そこに居た。静かな空間が漂っている。だがソトは大雨が降っていた。
吉海:「いや…今日はないけど。何で?」
朝山:「リスト表の整理、手伝ってもらえるかなぁ。ここ一週間分の整頓が出来てなくてさ…。だから『資料保管庫』にも着いてきてほしいんだ」
吉海:「リスト表、そんなに溜まってんのかよ。…ってか何でそんな事になってるわけ?」
朝山:「こう見えても忙しいんだよ?僕」
吉海:「はいよー。分かった、分かった」
吉海は小さくため息をつくと手をヒラヒラさせて返事をした。
吉海:「…んで?今から行くのかよ」
朝山:「ううん。これから昼迄は『学習』の時間だから。昼食後で良いかな」
吉海:「あいよ。なら、待ち合わせは広場だな」
朝山:「うん、そう。遅れないでね?」
吉海は返事もせずにまた手をヒラヒラする。そして背中を向けて去っていった。朝山はそれを見届けると、自分の部屋へと戻っていった。
朝山は携帯のバイブに気付いた。電話に出る。
朝山:「もしもし。………今から?…無理だよ。今ちょっと任務中。………えっ?何それ。…………分かった。今からそっち行くから。ちょっと待ってて…」
朝山は不機嫌そうに顔をしかめ、携帯を乱暴に切った。そして周りの目を気にしながら走って目的地へと急ぐ。
ホールを出て、非常階段の出入口から人気の少ない地下へと進む。階段を下りるのと同時に、徐々に薄暗くなっていく。
朝山は携帯を取って誰かに電話をかける。
朝山:「……任務中悪い。直ぐに『ヘラート』横まで来てくれ」
朝山は階段の途中で足を止めるとその場に座り込んだ。そして再び誰かに電話をかける。
朝山:「……任務中に悪い。俺だ、タクトだ。大至急『ブロックA』まで来てくれ。レッジにも連絡頼む…OK分かった」
電話を切ってため息をつく。そして胸ポケットから小型のコンピュータ・カードを取り出した。
朝山がそれに見入っていると、背後から足音が響くのに気付いた。
青年:「…会うのは久しぶりだな、タクト」
朝山:「まぁね。…で?電話での話、本当かよ。嘘だったら集まる意味はないからな」
青年:「本当さ。…正確な話は他のヤツが集まってからにしよう」
10分が経過した。すると階段の下で誰かの口笛が聞こえた。
朝山:「レッジだ。思ったよりも早かったようだな。もう少しかかると思っていたんだが…」
階段を一番下まで下りる。そこには十人程が集まっていた。皆朝山達の方に振り返った。
朝山:「早かったな」
青年:「いや。周りに皆が居たからな」
朝山:「……相変わらずか?レッジ」
レッジ:「あぁ…。ただ色々と情報は掴めたさ」
レッジと呼ばれた青年は青いサングラスを掛け、短い髪の毛を赤茶色に染めていた。背は朝山の次に高いようだ。
レッジ:「グレイ。お前も久しぶりだなぁ。…お前か?今回の話の持ち主は」
レッジは朝山と一緒に居た青年に尋ねた。
グレイ:「…そんな呑気な事言ってる場合じゃないだろ?今回の話は確実なんだ。嘘じゃない」
青年グレイはその真面目さに似合わない、オールバックに白い縦ライン入りの黒の背広といった格好をしていた。胸ポケットには黒いサングラスが差してある。背も高そうだ。
朝山:「奥で話そう」
朝山達はもっと暗い場所へ、身を隠すように進んでいった。全く人気は無くなった。音も彼等の靴音しか聞こえない。
グレイ:「……正確に分かってる事は一つ。奴等が俺達の存在に気付き始めている事だ。…クロルは奴等の一人に殺されてしまったが…」
青年:「そいつは気付いてたのか…?」
朝山:「多分な。じゃないと、あんな汚い殺し方はしないだろう…」
レッジ:「クロルの無線から聞き取れた声では、相手は吉海冰悟…まさに頭の狂ったヤツだな……」
レッジはそう言うとタバコに火を点けた。
朝山:「…っておい!こんな所でタバコなんか吸うなよ。臭いが付いて怪しまれるだろ」
レッジ:「あぁ。悪い、悪い…。消すから待って」
レッジは一回だけ煙を吸うと、火を消して自分専用の吸い殻に捨てた。
決してそこら辺に捨てはしない。彼等、秘密警察組織《ドゥ・ル・ヴァン》はあくまでも警察の裏で動く。警察にも、そして情報学園子校即ち彼等の言う《ロワン・ロラージュ》にもバレないようにする為、彼等はその痕跡を一切残さない。そう教育されている。
実は朝山もそんな《ドゥ・ル・ヴァン》の一人だったのだ。彼はクロル即ち高木と同様、学園の真相を暴く為に派遣されている身だった。そして悪名高き《ロワン・ロラージュ》の《ムルタ》でもあったのだ。
レッジ:「で?どうするんだ。吉海冰悟を拘束するか、その場で消すか」
グレイ:「どっちにしろ、ヤツは俺達の存在に気付いている。時間はないな」
他の青年達も口々にモノを言い始めた。そして結論に至る。
青年:「…クロルの仇だ。アイツは俺の義兄弟を殺しやがったんだ!その場で消すしかないだろ?」
一人の青年が朝山に詰め寄って訴える。そして皆が「そうだ」と言いだした。収拾が付かない。
朝山:「お前の気持ちは分かるよ、クルル。でももう少し待ってくれ」
クルル:「何でだ!…俺は奴等にずっと復讐してやろうと待ち続けてたんだ。そしてやっとチャンスが来たんだ…!」
グレイ:「…タクト。お前次第だ。だけど、俺はヤツは消しておくべきだと思う。危険過ぎるからな」
朝山は悩んだ。いくら吉海が危険な人物であっても、今まで一緒に居たのは事実だ。
凄く単純で面白いヤツ。知らず知らずのうちに、朝山はそんな吉海に引かれていた。そして時には短気で困る事も在った。だが吉海も何かと朝山を手助けしてくれて良いバランスを取れていると朝山自身思い始めていた。
そんな気持ちを踏み躙るように今回の事件は起こった。不意打ちを食らったのは勿論朝山だった。朝山は思った。出来ればこうはなりたくなかった…。
朝山:「………分かった。もう迷わない。……今日、吉海冰悟を消す!」
朝山:「…だいぶ遅れちゃったね。ゴメン…」
時刻はもう既に1時を回っていた。朝山は広場で約束どおり待っていた吉海に詫びた。
吉海:「別に。気にしてねぇけど…」
案の定、吉海は言葉にしたのと反対に気分を害していた。朝山はどうしようかと悩んだ。今まで《ドゥ・ル・ヴァン》として彼の話をしていたのだ。戸惑うのも無理はない。そしてここで彼に感ずかれてしまうと、全ての計画がパァになってしまう。
朝山:「……行こっか」
吉海は黙って立ち上がると、ズボンのポケットに両手を突っ込んだまま歩きだした。その後に朝山がついていく。何か話題を持ち込まなければ…。朝山は思った。
吉海の〈情報〉がなければ朝山達《ドゥ・ル・ヴァン》は活動が出来なくなる。そして彼に一番近い所に居る朝山の存在も意味がなくなってしまう。それだけは避けたい事だった。
《ドゥ・ル・ヴァン》の目的はあくまでも《ロワン・ロラージュ》の真相を暴き、それを阻止する事。それなくしては彼等の存在価値もなくなるのだ。
朝山:「…今日の『学習』の内容がさ、世界の歴史だったんだけど。あれって本当の話なんだよね?…信じらんないよ。冬には『雪』っていうのが降るんだってね。昔のヒトの行いが悪かったから降らなくなったらしいよ?どれだけ悪い事してんだよって…」
朝山はぎこちなく笑った。出来るだけ吉海に怪しまれないようにする。すると吉海は頬を少し緩めた。
吉海:「…お前、今日はよく喋るな。何か面白い」
吉海は両手をポケットから抜くと同時に煙草を口にくわえた。
吉海:「マッチかライター貸して」
朝山:「え?あっごめん…。僕吸わないんだ、煙草。だから…」
吉海:「ナッシングか。まぁエエわ。我慢するし」
吉海はくわえていた煙草をポケットに入れてニコリと笑顔を見せた。それを見て朝山はホッと胸を撫で下ろす。そして笑い返した。今度は優しく。
長い廊下を過ぎ、角を右に曲がると小さい坂道に出た。偽窓からは昼の熱さを感じさせる日光が差し込んでいた。
朝山:「…ソトは雨らしいね。昨日から降り続けてるって、テレビで言ってたよ今朝」
吉海:「最近は気温も高くなってっかんなぁ。近畿の方では最高気温四十四度を観測したとか…。あ~ぁ、変な知識持っちまった…」
朝山:「いーじゃない。全く必要ないわけじゃないんだから。…ところでさ、昨日はバイト在ったの?」
明かりが無くなった。〈資料保管庫〉は建物の一番下に位置する。階段の踊り場で懐中電灯を灯す。
朝山の声が暗闇に響いた。二人の靴音とともに地下へと吸い込まれ、消えて無くなる。そして今度は吉海の声が響く。
吉海:「あぁ。雨にも負けず、風にも負けずだ」
朝山:「大変だろうね。ソトでヤッてんでしょ?」
吉海:「あぁ。大概野外活動だからな…って、お前俺が何のバイトしてっか知ってんの?」
朝山:「え?あっあぁ…。この前弓原君に聞いて…。確か、フリーの『情報屋』だったよね?」
吉海:「んまぁ、そうだけどさぁ…。また弓原のヤツかよ。相っ変わらず口軽いなぁ!…困ったもんだぜ、全く…」
吉海は手に持つ懐中電灯を振り回した。階段はまだ続いている。
朝山は弓原の死を知らなかった。ただひたすら吉海の情報を掴もうとしていたからだ。そして、佐伯と中枝の死も勿論全く知らなかった。
朝山:「はは…。しょうがないね、そういう性格なんじゃないの?ほら、噂でも弓原君って名高き『情報屋』なんでしょ?言っちゃえば『同業者』だね」
吉海:「嫌な『同業者』だぜ。『商売』の邪魔になるっちゅうにっ!」
吉海は弓原の死を知っていた。なぜなら《アルデヴィル》に入りたいなら弓原を殺せと、あの日上江に言い残したからだ。その後MASTERにもその事を報告した。そして今に至る。吉海は全て知っていた。そして朝山が高木と同じ《ドゥ・ル・ヴァン》の一人だという事も…。
朝山の笑い声が響く。朝山は吉海の事を知っているつもりでいた。だが、それは間違いだったのだ。
階段が終わると更に奥へと足を進めていく。そこの空気は冷たく、少し薄く感じられた。考えてみるとそこは地下十階。資料保管専用の階である。ヒトの出入りは少ないが全く居ないというわけではなかった。なぜなら、授業を終えた《ムルタ》が必ずやってくる所だからだ。
《ムルタ》は授業で使用したリスト表をココに保管しに来る。そして過去の〈資料〉として、次に来るまでにココに保管するよう教育されている。だが、中には朝山のような一週間に一度しか来ない《ムルタ》もいるのだ。
朝山:「相変わらず楽しんでます?川田先生」
朝山は保管庫の奥で内職らしき事をしている男に声をかけた。男は黒縁眼鏡を掛け薄い青のワイシャツに青のネクタイ、黒のズボンといった普通の格好をしていた。ただ、その男が居たのは雑に散乱した〈資料〉達の中だった。
川田:「おっ!朝山じゃないか、久しぶりだなぁ。ここ最近来てなかったから心配してたんだぞ?」
朝山:「ごめんなさい。ちょっと忙しかったもんで…。だから今日は一週間分持って来たんですけど、大丈夫ですかねぇ」
川田:「問題ない。まぁこの時間帯は人が少ないから、ゆっくりしていきな」
そう言うと川田は内職に戻った。と言っても、彼の内職は散乱する〈資料〉達をファイルするだけの事だった。日付順、〈情報〉量順、そして《情報削除》回数順など様々。専門的な〈資料〉も多い。
朝山:「じゃぁ、これ頼んで良い?」
吉海:「了~解」
吉海は何も考えず朝山から十枚程のリスト表を受け取った。そして薄暗い奥へと進んでいく。
吉海:「えーっと?7月、7月~っと…」
日付順の棚に目を通す。そして見つけるとそこに押し込んだ。地味な作業だ…。吉海は思った。俺ならもっと派手にやるのに。そうだな、例えば…。
その時、明かりが消えた。
吉海:「何だ、何だー」
吉海はその暗闇の中で言葉を発した。これからが良いところなのに…。吉海は呟いた。
だが直ぐに暗闇の先へと目を懲らす。誰かが俺を見ている。吉海は聴覚を働かせ、身構えた。
朝山:「…吉海君大丈夫?ちょっと『light maker』がバグったみたい。今川田先生が見に行ってくれたから少し待ってね」
吉海:「あぁ、大丈夫。直ぐに慣れるさ…」
吉海は暗闇の“誰か”に笑い掛けた。やっと来たか…。吉海は緩む頬を押さえる事が出来ないでいた。そして目を閉じ、相手の行動を見る。
吉海:「…早く来いよ」
吉海は小さく呟いた。静かだ…静か過ぎる…。吉海は神経をピリピリさせ、相手の出方を見続けた。
一瞬、誰かの靴音が吉海の耳に届いた。そちらに視線をゆっくりと移す。誰だか知らんが、早く来いよ…。吉海は目を閉じたまま思った。
気配で分かる。十人、いやもう少し居る。吉海は暗闇でにやけた。
そして遂に明かりがついた。吉海は目が慣れるまでじっと待った。
青年:「……吉海冰悟。これよりお前を『密刑』に処する」
吉海の目の前の青年が口を開いた。赤茶短髪の青年レッジだ。
吉海:「何だ、何だ?集団リンチかよー…」
吉海を囲って二十人近くの青年が立っていた。いつの間にか川田の姿もなくなっている。
レッジ:「…ふざけている場合ではないはずだ。吉海冰悟、お前は」
吉海:「駄目じゃないか、こんな事して…」
吉海は目の色を変えた。そしてはっきりとした口調で言う。
吉海:「今まで上手くいってたのに、自分達から正体を現すなんて…」
レッジ:「な、何を…」
青年達が騒つく。
その時、階段を下りる足音がし始めた。一人だ。誰か一人、階段をゆっくり下りてくる。青年達はそちらに目を向けずにはいられなかった。
吉海:「…なぁ朝山?お前のした事は重大だよな」
そんな事も気にせず、吉海は後ろに立つ朝山に問いかけた。朝山は驚いた表情を見せる。
朝山:「わ、分かっていたのか…」
吉海:「楽しいもんだぜ?裏の裏を掻くのは」
朝山:「じっじゃぁなぜ放っておいた!お前ならいつでも殺せたはずだっ!」
吉海:「駄目なんだよ、そんな事したら…」
吉海は朝山に向き直った。笑っている。不気味に笑っている。だが冷静だ。
朝山:「…なぜだ…」
吉海:「…お前等の情報が掴めなくなるだろ?」
朝山:「利用…していたのか、俺を…」
朝山は背中を伝って冷たい汗が流れるのを感じた。そして眉間にシワを寄せて言う。
吉海:「お互い様だろ?お前も俺を利用していた。…そして、これからも……」
吉海は笑顔をやめ、冷たい目付きで朝山を見る。だが微かに瞳が笑っているように朝山には見えた。
朝山:「これからもそうするって言うのかっ?なぜだっ!…そんな事されるくらいなら、殺される方がマシだっっ!」
朝山は手の平の汗を握り、言葉を吐き捨てた。
吉海:「ん~…警官の言うような台詞だな。ありきたりだ…。もっと面白い台詞はないわけ?」
また吉海が笑う。まるで少年のような笑顔だ。
朝山:「ふざけるなっっ!」
青年:「落ち着け!朝山。コイツに流されるなっ」
朝山の直ぐ隣に居た青年が彼を抑えた。縦白ラインの黒い背広を着た青年グレイだ。
グレイ:「…コイツが裏を読んでたって不思議じゃない…」
吉海:「その通り!やはり頭が切れるな、グレイ」
不意を突かれた。グレイだけじゃない。朝山もレッジも、他の青年達もだ。
朝山:「…そんな事まで知っていたのか」
吉海:「そんな事まで知っていたのさ。お前はタクト、だったよなぁ朝山。 他にも色々知ってるぜ?」
吉海はその場で伸びをした。ん~っと気持ち良さそうに目を閉じながら。
それを待っていたように朝山が左腰に隠していた拳銃に手を伸ばす。そして的を絞ろうとした。が、遅かった。
銃声が消える。
朝山:「くっっ!」
朝山は唇を噛み、遠くに飛ばされた拳銃に目を向ける。…無理だ!距離が在り過ぎるっ!
朝山は吉海に向き直った。しかし、吉海は何も手に持っていなかった。
撃ったのはヤツじゃない!朝山は目を凝らす。
朝山:「うっ梅咲!」
階段を下りてきたのは梅咲だったのだ。吉海の後ろ10メートル先に梅咲が拳銃を手に立っていた。
即座に青年達が梅咲に銃口を向ける。だが梅咲は顔色一つ変えない。
吉海:「…さすがにこんな集団でリンチされたら俺も生きて還れないからさ」
吉海が笑顔で言葉を返す。無邪気な少年の如く。
梅咲:「…嘘こけ…」
梅咲は独り言を呟き、顔をしかめる。そして一歩前に出た。
青年:「うっ動くな!」
梅咲の一番近くに居た青年が拳銃を震わせ叫んだ。だが動じず、梅咲はギロリと彼を睨んだ。
一発。青年が怯んだ隙にお見舞いする。銃声が消え、梅咲の銃口から煙が少量立ち上る。
吉海:「ダメじゃん、直ぐに殺しちゃー。楽しみがなくなるっしょ?玲瑠」
梅咲:「うるさいな…」
床に音を立てて青年が倒れた。それを見て他の青年達が梅咲から少し距離を置く。拳銃を構えたまま。
梅咲:「早く終わらせろ、冰悟。…腹へってるの、知ってるだろ…」
梅咲が吉海の隣に来る。足取りは至ってゆっくりだった。
吉海:「分かってるって。俺も空いてっから。…なぁ朝山?」
朝山に向き直って、再び笑いかける。
朝山:「お前等も飯食ってねぇのか。偶然だな、俺も実は腹が減ってんだ…」
吉海:「へっ!笑わせんなぁ。計画立てんので忙しかったんだろ?俺等と同じじゃねぇか」
朝山は苦笑いを浮かべ、吉海の悪戯顔を睨む。
朝山:「…何でもお見通しってわけか。…ならどうする?計画通りやるか?」
朝山は思った。何でもお見通し…そう、こちらの計画通りにコマを進めても意味は無いってわけだ。どうする?…吉海だけだと思っていたが、梅咲が来るなんて予想外だ…。朝山は拳を握り締めた。
吉海:「…計画通りやった方が良い?玲瑠」
梅咲:「…計画通りにやった方が手っ取り早い」
次の瞬間、吉海が残像を残す程の速さで姿を消した。朝山には左に消えたように目に映った。
だが、そう思っているうちに梅咲も姿を消す。
朝山:「くっっ!…お前等散れ!梅咲玲瑠も同様、『密刑』に処するっ!…油断するなよ。奴等は全てお見通しだっ!」
朝山はそう叫ぶのと同時に、床に転がっている自分の拳銃に手を伸ばす。青年達も一斉に四方へ散ると、神経を巡らせ二人の行方を探す。
数分後。一人の青年が梅咲の姿を捕らえた。静かに後を追う。
青年:「…レッジ、そっちに追い込むぞ」
レッジ:「よし、挟み撃ちだな!」
青年は服の襟に付けた小型無線で近くのレッジに呼び掛けた。レッジは耳に埋め込んだ同型の無線でそれに答える。
その時だ。青年が撃たれた。一瞬だった。
レッジ:「くそっ!…何でもお見通しだとっ?ふざけるなっっ!」
レッジは耳の無線を床に叩きつけ、力いっぱい両手で拳銃を握る。
辺りは不気味にも静まり返っていた。
ヤツの行動が読めない…。朝山は額を流れる汗を拭い、頭を働かせる。
ヤツならどう出る?右か、左か?いや…後ろか?朝山はもう既に混乱していた。…これでは高木と同じじゃないかっ!朝山はまんまと騙された自分に腹を立てた。
すると、今度は背後で鋭い銃声が3発響いた。くそっ!…コレで残りは10人か…。朝山は唇を噛む。
朝山:「…いや、俺を入れたら11人だ……」
朝山は声を殺して呟き、苦笑いを浮かべる。…全員連れて来るんじゃなかった。まるでこれでは集団リンチどころか、集団自殺ではないか。…笑えるな。
ほとんど諦めていた。例えこちらが大勢で寄ってたかっても、相手は《アルデヴィル》のトップクラス二人。しかも吉海はちょこまかと動きが読めないし、梅咲も右に出る者無しの速撃ちガンマンだ。奴等は何回も俺達のような警官とヤり合っている。…不慣れなのはこちらではないかっ!
吉海:「…駄目だよ、そんなに隙作っちゃ…」
近くで吉海の声が聞こえた。咄嗟に拳銃を構える。だが、吉海の姿はなかった。再び神経を巡らす。
吉海:「…後ろ姿が丸見えだぜ?」
背後で吉海の呟く声が聞こえた。だが次の瞬間銃声が耳元で響いた。
青年:「うわっ!」
朝山:「くそっっ!」
朝山の目の前に在った棚の反対側で、また一人の青年が音を立てて倒れた。朝山は舌打ちをして即座に後ろに振り返る。だがやはり吉海の姿は見当たらない。
どこだ!どこに居るっ!朝山は心の中で訴えた。
朝山:「…吉海、お前も銃を使うのか。お前の所持品は他にも在ったはずだ」
吉海:「チャカはチャカ。メカはメカだよ、朝山」
微かな声が耳に届く。
吉海の言う〈メカ〉は最新型のナイフのような物の事だ。学園で《アルデヴィル》の為に裏で開発された、通称〈MICソード〉。吉海の愛用しているコレはもっとメカらしいと言って良い。
本来の〈MICソード〉はスイッチ一つで様々な形に変形し、場合によってはチェーン装着により投げる事が出来る。だが吉海の言う〈メカ〉は〈MICソード〉の改造版。スイッチ一つで刃先に毒液を含ませ相手の動きを素早く止める事が出来たり、変形に合体をプラスすれば全長2メートル近くの槍剣として使う事も出来る。そして何よりも凄いのが、このメカに〈CHEST〉が埋め込まれている事だ。この〈CHEST〉には特殊加工が施され、吉海の〈CHEST〉とつながっているのだ。それにより、吉海が投げた〈メカ〉は彼が思った通りの動きをする。所謂人工頭脳を持った武器ロボットだ。
朝山は吉海の声を頼りに足を進める。…視界にヤツの背中を捕らえなければ。
朝山は手の汗を拭き、拳銃を構える。
朝山:「…じゃぁどうしてメカを使わない。お前のお気に入りだろ?アレは」
吉海:「メカは生き物だ。気分を害しちゃまともな動きなんかしてくれない」
朝山:「故障中ってわけか。…やっぱりお前等機械オタクでも修理出来ないモノは在るんだな…」
吉海:「…まだ古いMCに頼ってる奴に言われたくねぇなぁ」
朝山が鼻で笑う。まだ吉海の姿は見当たらないが、徐々に近づいているというの確かだった。
朝山:「…一つ聞きたい。お前は、俺を殺す気は在るのか?」
吉海:「…そんな事聞いて何になる。別の計画でも立てるのか?」
朝山:「質問に質問を重ねるな。こっちが先に聞いているんだ」
吉海:「ははは…。そう熱くなるなよ、お前らしくねぇぜ?朝山。んーまぁ…殺しても良いけど、殺しちゃ駄目なんだってさぁ」
朝山:「…?どういう事だ……っ!」
音を立てて朝山が床に倒れる。ふっと気を抜いた瞬間、吉海が背後から彼を殴ったのだ。
吉海:「…お前にはもう少し居てもらわねぇと、お前等の情報が掴めなくなっちまうだろ…?悪いが、お前だけは嫌でも生きといてもらうぜ、朝山」
吉海は気を失っている朝山を見下ろし、笑みを浮かべて言った。必要なくなったら、直ぐに消してやるからさ…。吉海は心の中で呟き、ゆっくりと後ろに振り返った。
吉海:「なぜ撃たない、グレイ。…さっきから背中を見せてやっているのに」
グレイ:「…くっ!今になって撃てるわけないだろ。例えお前の死角に入っても、俺は撃たない。正面からヤれと教わったからな」
吉海:「嘘だな。…この朝山でさえ俺の死角に入って撃とうとしたんだ。そんなキザな事教える奴が居たらお会いしたいもんだぜ」
吉海はグレイを壁際まで追い込んだ。逃げる隙間が無くなった。左右を棚で囲まれ背には壁、目の前には吉海が仁王立ちしているのだから。
グレイ:「居るさ。…そんな事より、お前こそ背中を敵に向けて情けないと思わないのか。…死に様を自分で決めたいとか、思わないのか?」
グレイはそう言い終わらないうちに銃口を吉海に向け、引き金に人差し指を掛ける。そして静かにゆっくりと深呼吸をする。
吉海:「キザな台詞だねぇー。そんな事まで教えられたわけ?」
吉海は動揺どころか、無邪気に笑ってズボンのポケットに手を入れていた。何をする気だ?グレイは咄嗟に身構えた。
吉海:「…あぁあ。残り、お前を入れて6人になっちまったぜ?」
グレイ:「何を言ってる。遂に頭が狂ったか?」
グレイは警戒しつつも苦笑いを浮かべる。吉海も一緒にニヤけた。
吉海:「ふっ。分かってねぇな…。お前の耳のNLで聞かなかったか?」
グレイ:「…何を…?」
青年:「うわぁっっ!」
少し遠くで誰かが倒れた。…残り5人。吉海は笑顔で思った。
グレイはそちらに目を凝らす。な、何が起きた?グレイは額を流れる汗を拭い、気を落ち着かせた。
吉海:「…ダメだろ?戦闘中によそ見したら。直ぐにゲーム・オーバーになるぜ?グレイ…」
グレイ:「ぐはっ!!」
撃たれた拍子に壁へと叩きつけられる。だがグレイはまだ立っていた。そして感覚が無い右目を押さえ出血を塞ぐ。
吉海:「普通に撃ったら面白くないし。お前の右目、貰うわぁ」
吉海の不気味に笑う顔が左目に映る。
グレイ:「…うっ…どこまで頭がイカれているんだ、貴様は……」
終にグレイの尻が床に着いた。まるで壁にもたれ膝を立てて座っているように見える。だが頭はぐったりと垂れ下がり、大量の血が床にボトボトと音を立てて滴り落ちていた。
吉海:「…せっかく最後のショーを見せてやろうと思ってたのにィ…。なぁ、メカP?」
吉海はグレイに歩み寄るなり、天井を見上げて言った。するとどこから来たのか、例の〈メカ〉がヒラヒラと舞うように吉海の手の上に乗る。
吉海:「うっわぁ!血だらけじゃん、メカP。この前新しいのに変えたばっかなんだぜ?直ぐに汚しちゃ意味ねぇじゃん!」
吉海は手に付いたまだ生温い血液を白い壁に擦り付けた。そして顔をしかめて〈メカ〉に言う。
吉海:「何人ヤったの?メカP。…んまぁ、どーでもいーんだけどな…」
梅咲:「…何アホな事一人で喋ってるんだ、冰悟。まだ仕事が残ってるだろ、早くヤれ!」
背後に梅咲が居た。
吉海:「何だよ、玲瑠がヤりゃぁ良いじゃん。最近腕がニブってんだろ?だから呼んでやったのに…」
梅咲:「おっ大きなお世話だ!俺は俺のヤり方でヤるんだよ…」
吉海:「あーはいはい、分かったよー。…じゃ、メカP後はヨロシクね~」
そう言うと吉海の手の上の〈メカ〉は高速で飛び上がり、どこかへ行ってしまった。風の斬れる音が微かにし、ヒトの倒れる音が次に聞こえる。
梅咲:「…で?コイツはどこに入れとくんだ」
梅咲は冷たい瞳で、床に倒れている朝山を見下ろして言った。そして手に持っていた黒い拳銃を胸ポケットしまう。
吉海:「うーん…。まぁ、『会議室』で良いんじゃない?MASTERもこの事知ってるし…」
梅咲:「ならそれで決まりだ。…早く風呂に入って飯が食いたい」
吉海:「俺もー。何か血の臭いがマジ染み付きそーだし、腹も変な感じー」
吉海はそう言いながら朝山の左足を持ち上げた。そしてズリズリと引きずり、前を行く梅咲についていった。その後を追うように、朝山の後頭部からの血が綺麗な線を引いていく。
死者10名、生存者3名。地下10階に位置する〈資料保管庫〉。綺麗に整理整頓されていたそこは、今や戦場の地となり血の海と化してしまった。
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