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秋乱-АΚΙЯА-
[co-worker]
MASTER_CALL-B.B.D
co-worker 協力者
同一の目的に向かって共に努力してくれる者。
ただ単に力を貸してくれる者。
男:「気温40度、室温27度。機械温計32度弱。ん~…気分上々だ」
そこは世間では名の通った製鉄工場〈ジプシー・カンパニー〉。従業員はたったの100人程であるが、裏では様々な企業とつながる武器製造会社、通称《アイアンサイド》として知られている。
今男が一人、彼の身長の10倍と言っても過言ではない程の、巨大なコンピュータの前に立っている。その格好は白衣などというものではなく、普通の背広を着ていた。しかしその色は暗い紫色。まるで大昔の〈ヤクザ〉のようだ。
男:「今日の客はお偉いさんか。まぁ、ガッポリ稼げるのは確かだな」
男は意味有り気にニヤけると手に持っていた扇子で顔を扇いだ。そして巨大コンピュータを見上げる。
男:「…さぁて、そろそろ出るか」
男はそう言って扇子を扇ぎながら、いくつもの巨大コンピュータ等の機械の間を通って奥へと足を進める。言葉通り彼は鼻歌を歌う程上機嫌だった。
相手は馴染みのあるヤツだが油断は出来ねぇ…。男は思った。だが稼げるのは確かだ。どれだけヤツの懐からゼニが出るか楽しみだな…。再びニヤけて、男は暗闇から外へ出た。
男:「…客は時間厳守だ。まぁまだ10分前だから来るわけねぇけど…」
その時、林の奥からバイク音が聞こえた。2台だ。バイクが2台こちらにむかって来る。
工場は周りを林と廃墟に囲まれている。正面の林からバイクに音を立てて2人の男が走ってきた。
男:「今日の客は一人だ。それに、ガキがこんな所に何の用だっ?」
青年だった。2人の青年は男の近くまでバイクを進めたが、彼の言葉を無視して一番近くの廃墟までまたバイクを走らせる。そしてやっと止まった。
男:「おいっ!ガキが何しに来た!ワシを誰やと思っとるんじゃっ!!」
男は舌打ちをして眉間にシワを寄せながら、こちらに歩いてくる青年達に怒鳴った。口調はまさに〈ヤクザ〉。今ではそうではなく〈イヴァン〉と呼ばれているが、やる事は大昔とあまり変わっていない。
青年:「うるさいな…。あまりうるさく言うと買収しますよ?太秦鷹乙さん」
青年の一人が口を開いた。その後をもう一人の青年が追う。バイクのキーを指で回している。
太秦:「き、貴様誰に口を利いて……」
彼が言い終わる前に、青年が長い黒コートの奥から拳銃を取り出した。
太秦:「っ貴様…」
青年:「これは貴方の工場で造られたものです。見覚え有りますよね?」
太秦:「そっそれは…我が社の新型『ブラック・ホース』!な、何で貴様みたいなガキがっ?」
太秦は警戒しながら、青年の持つ黒い拳銃を扇子で突いた。
青年:「ガキで悪かったなぁ!おい梅咲、一発お見舞いしてやれよっ!」
後ろの青年が太秦を指差して言った。
梅咲:「早まるな、吉海。あくまでも相手は販売者だ。気分を害する…」
吉海:「どぉかねー…。もろ『イヴァン』系って感じがすっけど…?」
吉海は顔をしかめ、手に持っていたキーをポケットに入れながら引っ込めた。
梅咲はそんな吉海を横目で見ていたが、直ぐに切り替えて太秦に向き直る。
梅咲:「注文していたモノ、出来上がってますか」
太秦:「んっ…も、もしや貴様等『黒髪狂師』の教え子かっ?」
梅咲:「…えぇ、そうです。それで?出来上がっているのですか」
梅咲は拳銃をしまい、再び太秦に尋ねる。それを聞いて太秦はパッと商売顔に切り替えた。
太秦:「成る程。あの方の代理人ですかい。はい、はい。ではこちらに…」
太秦はニヤニヤしながら梅咲達を工場に招き入れた。
…〈イヴァン〉の顔でニヤつくなよ、気持ち悪い。吉海は口の端を歪めて心の中で言った。そして梅咲の隣で太秦の後を追う。
太秦:「…『ブラック・ホース』は残りワン・セットですな。『MICソード』の方も直ぐに出来上がるでしょう」
どこから取り出したのか、太秦はそのリスト表をめくりながら肩越しにそう言った。
梅咲:「どれくらい時間がかかりますか」
梅咲が即座に尋ねる。その横で吉海は辺りを見回していた。
太秦:「いや、何。30分程度ですよ。…その間に料金の支払いを頼みたいんですけどねぇ…」
太秦はその顔は見えないが、ニヤニヤしながら遠回しに言った。だがそんな事も気にせず、吉海が会話の間に割り込む。
吉海:「メカは?メカはどこで造ってる?」
梅咲:「…俺も知りたい。『ブラック・ホース』はどこに在る?」
太秦:「困りますよー。一応製造会社なんすから」
吉海:「ん~。なら、金払わねぇーよ」
太秦:「うっ……」
梅咲:「…右に同じ…」
太秦はやんちゃ坊主2匹を相手しているようで虫酸が走った。…いや、相手はガキだが正式な客だ。太秦は自分を落ち着かせ、言い聞かせた。
太秦:「…い、良いだろう。で、ですがその代わりイジクルのは遠慮して下さいね?機械はデリケートですから……」
そう言って振り向いたがしかし、2人の青年はもう姿を消していた。
太秦:「…ガキが…」
舌打ちして太秦は眉間にシワを寄せた。そして声を殺して呟く。
吉海は既に巨大コンピュータの前に立っていた。そこは地下2階。巨大コンピュータはこの一台だけで、他は何やら複雑な構造の機械ばかり。だがそれらは静かに動いていた。
吉海:「あの男がここの社長?ありえねぇー。こんな複雑なモノ、造れるとは思えないな……。そう思わないか、メカP」
そう言うと例のメカが現れた。今度は吉海のズボンのポケットからだ。
吉海:「お前が昨日あんなに汚したからこんな沢山兄弟を増やさなきゃならん羽目になったんだぜ?ちょっとは反省しろよなー。改造すんの大変なんだから」
何も言わずメカは吉海の隣でフワフワ浮いていたかと思えば、次の瞬間音を立てて火花を散らしながら回転し始めた。だが吉海は気にしない。
吉海:「そんなに怒るなよ。お前が悪いんだぜ?」
男:「…あまり怒らせると故障しますよ、吉海君」
暗闇から突然男が現れた。男は白衣姿でいかにも機械オタクといったように見える。
吉海:「何だ、こんな所に居たのか。相変わらず好きだな、川っチ」
男:「な、何ですかその呼び方は…」
吉海:「いや悪い、悪い。こっちの方が呼びやすいんで…。今度からはちゃんと呼ぶよ、川田博士」
川田:「それも妙ですね。…それなら『川っチ』の方がまだマシです」
吉海:「なら最初っからそれで良いじゃんかー」
川田:「……ところで、今日はなぜ君が?“M”の指示ですか」
川田はあの時と同じような格好をしていた。薄い青のワイシャツに真っ青なネクタイ、黒のズボンといった素朴な格好だ。ただ今回は白衣をその上に重ねているだけだった。
吉海:「んーまぁね。昨日ちょっとアッコで色々暴れちゃったから、そのお仕置きみたいなモンですぅ」
吉海がため息混じりに言った。まるでお仕置きを食らった悪ガキのようだ。
吉海:「…まぁ、MASTERは忙しい身だからね。時々こんなとんでもない事を押しつけんだ…」
そう付け加えた。
川田:「…仕事中に呼び戻されましたか」
吉海:「んまー、そういう事ですかねぇ…」
川田の質問に吉海は力なく答えた。
その時、いつの間にか回転を諦めたメカPが吉海の肩を突いた。
吉海:「ん?…あー…メカPが兄弟を見たがってる。どこに居るか教えてくれよ、川っチ」
川田:「残念ながら今は仕上げ中ですから無理です。ですがサンプルならココに在りますよ」
吉海:「サンプル?」
川田:「“見本”っと言った方が分かりやすいでしょうか……」
そう言って黒縁眼鏡を外し、そこに付いているスイッチのような物を押した。するとどこかで風の斬れる音がした。
コンピュータ:「お呼びでしょうか、ご主人様」
メカPと同型のメカが飛んできた。そして川田の隣で踊るように答える。
川田:「これがサンプルの『MICソード』です。少し改造して大きくしてみました」
吉海:「ほっへー!武器が“ご主人様”って言うのはどうかと思うけど、その眼鏡スゲェなぁ。スイッチの所に何か付けたんだろ」
川田:「えぇ。小型指紋照合機を付けたんです。後、レンズの方にも…」
そう言って、早く見せろと言わんばかりに瞳を輝かせている吉海にソレを手渡した。そして川田は白衣のポケットから自分の眼鏡を取り出す。
吉海はレンズの小型モニターをマジマジと見ながら、ソレを掛けて周りを見回した。そして次に驚きの声を漏らす。
川田:「…後は“M”に渡して頂ければ『CHEST』も直ぐに使えるように
なるでしょう。新型と言えばそうですが『MICソード』には変わりはありませから、使い方は同じです」
川田は自慢気にそう言った。とても満足そうだ。
吉海:「ほぉ~成る程ねー。さすが川っチや!…んで?後どれくらいで全部仕上がんの?」
川田:「だいたい10分程でしょう。それまで他のサンプルも御覧になったらどうですか」
吉海:「おっ良いねー!それでいこっ!…では、拝見させて頂きましょうかね?川田博士」
川田:「分かりました」
川田は笑顔で頷くと、吉海から眼鏡を受け取り暗闇へと招き入れた。
その間梅咲は地下3階の射的場で、愛用の〈ブラック・ホース〉を慣らしていた。
梅咲:「…ところで、斎藤にちゃんと例のあの事言ったのか」
男:「えぇ、勿論ですよ。喜んで引き受けてくれたみたいです」
梅咲:「そうか。なら、それで良い…」
梅咲は撃ちながら白衣姿の男と話していた。男は梅咲より背が少し低く、中国の科学者らしかった。
男:「だいぶ慣れたようですね。さすが“M”の弟子だけある」
梅咲:「……射的の経験はあるか」
男の言葉を無視するように梅咲は尋ねた。
男:「ありますよ、勿論。こんな仕事をしていますからね。ただ、試し撃ちだけですけど…。あっでも、撃ち合いは遠慮します。無理なんで、はい……」
梅咲:「何だ、つまらないな…。頼もうと思ったんだが…」
男:「はい。いえ、無理ですっ……」
男は言い切った。梅咲は小さくため息をつくと、再び的に向き直った。
男:「…『射的ドール』を使ってみてはどうでしょう。いつも試し撃ちに使用しているドールですが」
男はパッと顔色を変えると、梅咲が撃つ前に声を漏らした。
梅咲:「…『射的ドール』か。まぁ良いだろう、それで頼む」
男:「はい。では少々お待ちを…」
そう言い終わる前に男は姿を消した。だが直ぐ射的板の隣に男が立っているのに気付く。
男:「まだ撃たないで下さいね。今、ドールを動かしてますから」
男は叫んだ。そして手元のリモコンのような物をイジくった。すると彼の左側から〈射的ドール〉が列になって前進して来た。
梅咲:「…っトロいな。もう少し早く出来ないのか。撃ちたくて体がウズウズしているんだ…」
男:「いえいえ、遠慮しておきます」
そう叫び返すと、ドールが整列したのを確認して再び姿を消した。
距離はどれくらい在るだろうか。20メートルは在る。梅咲と向かい合って高さ140センチ程のドールが、その距離で5列になって整列している。辺りは静まり返っていた。
男:「…いや、どーも。これで良いでしょうかね」
どこからか男が現れた。そして先程イジくっていたリモコンを梅咲の手元に置いた。
男:「撃ちたい時にこの赤いスイッチを押して頂ければ射的が出来ます」
梅咲:「…このまま、この状態で撃つのか」
男:「勿論ですよ。でも私が教えて差し上げるのも何ですから、撃ち方は梅咲君自身で見つけ出して下さい。はい…」
男は意味在り気にニコリと笑った。そして頭を少し下げて会釈すると、音もなく姿を消して居なくなった。辺りが静かになる。
梅咲:「…嫌味な奴…」
そう呟きつつも拳銃に右手を近付けた。そして赤いスイッチを押す。
一発。広い射的場に銃声が轟く。だが弾はドールに当たらなかった。
梅咲:「……成る程。撃ち方が理解出来た」
梅咲は少し笑みを浮かべて呟いた。再び引き金に指を置く。そしてスイッチを押した。
カチャリ…一発。一体のドールの額に小さな穴が開いた。そして後ろに倒れる。辺りが静かになった。
梅咲:「…面白い」
倒れたのを合わせたら〈射的ドール〉は全部で50体。その内スイッチで微かに動いたドールを狙えば良い。…昔で言う〈ダルマさんが転んだ〉と同じだな。梅咲は苦笑した。
梅咲:「…って事は、動くのは一体とは限らないというわけか……」
梅咲の瞳が鋭く光る。そして再び赤いスイッチに指を置く。
地下四階。その奥の部屋に吉海と川田が居た。
川田:「…これで『ゴールド・ファントム』の完成です。少し複雑ですが、直ぐに覚えられるでしょう」
川田はメカの二倍近くの大きさのメカを手に説明をしていた。
吉海:「面白い。気に入ったぜ、このメカ!」
川田:「それは良かった。気に入って頂けるだけで嬉しいです」
そう言って川田はソレを吉海に手渡した。瞳を輝かせ吉海はソレを見つめる。瞬き一つしない。
川田:「メカPと同様に、何か名前を付けたらどうでしょう」
吉海:「おぅ!…そうだなー、『メカGP』なんてどうだ?」
川田:「素晴らしい!まさにメカPの兄弟に相応しい名前ですね」
吉海:「よし、これでいこう!お前はメカGPだ!」
吉海は軽々と大型メカを手元で踊らせ、満足そうに言った。
本来メカは拳銃のサイズと同じで重さは1キログラム近くだが、吉海が持っているメカPは同サイズで重さは1キログラムと少し。そしてメカGPこと大
型〈MICソード〉は二倍サイズに重さは2キログラム。その代わりメカPよりも騒音が少なく、性能もしっかりしている。
吉海:「…これからは筋トレの嵐だな」
川田:「心配しなくとも、直ぐに慣れますよ」
ボソッと吐息を漏らした吉海に、川田が笑顔で言った。そして少し間を置いて口を開く。
川田:「…今回は本来の代金に入れておきますが、今度からは」
吉海:「分かってるって!料金は別払いだろ?分かってる、分かってる」
川田:「では、一応これを差し上げます。今度からはここに支払って下さい」
吉海:「了解!」
元気良くそう言って、川田から受け取った小さな“物体”を吉海はポケットに入れた。そして再びメカGPを眺める。
だが次の瞬間ベルのような音が辺りに響いた。
川田:「…注文品が仕上がったようです。こちらの方も送っておきますので、
上でお待ち下さい」
吉海:「へーい。じゃ、また今度な!」
吉海は無邪気にそう言うと、メカPを連れてその場を後にした。
その頃、梅咲達の居る地下三階の射的場でもベルが鳴り響いていた。
男:「ゲーム終了ですね。ですが一応ステージ・クリアと言う事で」
梅咲:「…楽しめたからそれで良い。後は頼む」
男:「はい」
男は返事をして早々と暗闇へ消えようとした。だが梅咲がそれを止めた。
梅咲:「おい、木村。…ソレ、上に送っとけよ」
木村:「あ…はい。了解しました」
木村と呼ばれた男はそう言って何かにメモを取った。そして会釈をして再び姿を消した。
梅咲も〈ブラック・ホース〉を磨いてから暗闇へと足を向けた。
工場の外。音を立てて風が吹いている。林が騒ついているのが分かる。
太秦:「長らくお待たせ致しました。これで全て仕上がりましたので、お持ち帰り下さい。それと」
梅咲:「金は後にして頂きたい。先に品を」
太秦と梅咲が約2メートル四方の青い鉄の箱を前に話をしている。吉海は近くの廃墟に居た。そこでバイクにもたれながら、誰かと携帯電話で話している。
太秦:「い、良いでしょう。では、これを…」
太秦はポケットから銀色のスティック・キーを取り出し、梅咲に手渡した。
梅咲:「心配は要りませんよ。ちゃんと代金は支払いますから」
梅咲は鉄箱を開け、中身を確認しながら言った。苛立ちを隠そうと太秦は扇子をバタつかせる。
梅咲:「……OK。では代金を…」
そう言い終わる前に林から爆音のような大きな音がした。咄嗟に二人がそちらを向く。
吉海:「点検終了か?こっちも準備OKだぜ」
吉海が駆けてきた。その後をメカPが追っているのが見える。
次は太秦の携帯電話の着信音が聞こえた。
太秦:「あぁ…ちょっと失礼……」
梅咲:「一台だけか」
吉海:「いんや、二台だ。十分積めるように頼んどいたから」
太秦を無視して梅咲達は林に目をやった。
太秦:「…あ?あぁ…分かった。なら直ぐに持って来い!一分以内だ」
太秦の喧しい声が耳に届く。少し舌が回っているようだ。そして電話を切った。梅咲達に向き直る。
太秦:「いや、失礼。もう一つ来るようなので、少々お待ちを」
梅咲:「あぁ、分かっている…」
梅咲が鉄箱に鍵をかけた。そしてスティック・キーをポケットに入れる。
騒音を発した護送車のような大型車が二台、黒光りしながらこちらにやってきた。そして梅咲達の近くで静かに止まる。
男:「…社長。持って参りました」
いつの間にか白衣の男が十人ほど太秦の後ろに居た。そこにはクレーンのような機械が、《IAS》と白のロゴ・マークの入った青い鉄箱をぶら下げて立っていた。
太秦:「よし、下ろせ」
クレーンは鉄箱を地面にゆっくり下ろし、静かにその場を去っていった。
白衣の男達が鉄箱を囲み、点検をし始める。そして手元のリスト表か何かにチェックを付けていった。
男:「…点検完了です。異状は在りません、社長」
太秦:「よし。じゃぁ、木村とお前…あぁ、川田か。お前等二人、積み込みを
手伝ってやれ」
太秦は扇子で木村と川田を指し、面倒臭そうに命令を下す。
梅咲:「いえ、結構。こちらで直ぐに片付けられますから…」
そう言って梅咲が間に割って入り、吉海に視線を送った。それを受けて吉海がニヤける。
吉海:「よーし。ではでは、メカ君達頼むよ!」
吉海は威勢良く先程の大型車の車体を叩いた。するとそれに反応してその車からメタリック・ハンドが飛び出す。そして地面の上の青い鉄箱を軽々と持ち上げ、もう一台の車の背中に乗せる。その車もメタリック・ハンドが飛び出していて、ロゴの入った鉄箱を持ち上げていた。
吉海:「そぉ~っとやれよ。武器はデリケートだかんな…」
吉海はその光景を眺めながら語りかけた。
辺りは静かだった。風は強く、足元の砂を巻き上げる程だった。だが天気は良い。まさに真夏の真昼だ。日の光がジリジリと照りつける。
梅咲:「…これで良いでしょうか」
梅咲は小切手を太秦に差し出した。それを見て太秦が目を見開く。
太秦:「こ…こりゃぁ…すっスゲェ……」
その後の言葉は続かなかった。
そこに白衣の男が走ってきた。他の男より少し背が高い男だ。
男:「えー…梅咲君でしたっけ。MBの修理が終わりました」
梅咲:「あぁ、有難う。…例のアレは付けたのか」
男:「はい。お望み通り、付けさせて頂きました」
梅咲:「じゃぁ積み込むから、持って来てくれ」
男:「分かりました」
そう言って走って工場へと入っていった。今度は吉海が梅咲の肩を叩く。
吉海:「俺これからちょっと寄る所あるから、先戻っといてくれる?」
梅咲:「バイトか」
吉海:「うん、そう。明日の夜までには戻れると思うし…」
梅咲:「分かった」
吉海は言い終わると携帯電話で再び誰かに電話をかける。
鉄箱の積み込みは既に終わっていた。そこに今度は先程の男が走って持ってきた大きなスーツケースを二つ積み込む。
男:「…梅咲君はどうやって帰るんですか。早速MBで?」
梅咲:「いや、コイツに乗せてもらう」
そう言って、梅咲は黒の車体を叩いた。
梅咲:「…斎藤、例のアレだが……」
斎藤:「えぇ、大丈夫です。説明書をちゃんと付けておきましたから」
梅咲:「そうか。なら、それで良い…」
太秦:「…も、もう帰られるんで?」
やっとの事で太秦が口を開いた。彼の瞳にはプラス・マネーのマークが浮か
び上がっている。
梅咲:「えぇ、一応これも仕事ですから…。仕事は時間厳守ですよ」
梅咲が太秦に向き直って答えた。そして太秦の言葉も待たず、梅咲は護送車もどきの車に乗り込んだ。
斎藤:「梅咲君。もしまた何かあったら持って来て下さい。修理しますんで」
梅咲:「あぁ、勿論だ」
その時、ヘリコプターが林の向こうから飛んできた。砂が舞い上がり強風が彼等を襲う。そのヘリに吉海が飛び乗る姿が見えた。
吉海:「まったなぁ!」
吉海は敬礼するとヘリの足を地面から離した。再び砂が舞う。白衣の男達が手を振って見送った。
いつの間にか梅咲も護送車を前進させていた。
太秦:「まっまたのお越しを~~っ!!」
ヘリの騒音と護送車の爆音に負けじと太秦も叫んで二人の青年に手を振る。彼等の姿が消えゆくまで。
太秦:「…斎藤、あのガキに何渡したんだっ?」
斎藤:「え?何って、MBですよ」
太秦:「MBィ~?」
太秦はいつもと同様、眉間にシワを寄せて言う。
斎藤:「MB、『Machine Bike』ですよ。まぁ、あれは折り畳み式ですけど」
太秦:「す…スーツケースの中身がソレなのか?」
斎藤:「えぇ、そうです。社長のヤツもソレですよ?知りませんでした?」
太秦:「なっ何?そりゃー初耳だなぁ……」
真面目に言う斎藤の言葉に疑問を抱きながら太秦は頭をかいた。
木村:「ほれ、アレですやん。この前社長が事故った時、新しく斎藤君が開発しはったアレっ!」
木村がニヤつきながら話に割り込んだ。そこでウィンクを見せる。
太秦:「あぁ…れ?」
木村:「アレ、アレ!」
斎藤:「アレもまぁ一応折り畳み式ですけど、あそこまでコンパクトにはなり
ませんよ。それにもう社長、今は新車を乗ってますからね。必要ないんじゃないですか?」
太秦:「そっそんな事、有るわけなかろうがっ!」
太秦は扇子を扇ぎながらその場を早々と去っていった。その後ろ姿を見て斎藤達は肩をすくめる。
川田:「…かなり初耳っぽいね、アレ」
木村:「そりゃそうやろ。俺も初耳やっ!!」
どっと笑いが沸き上がる。どうやら全て斎藤と木村の猿芝居だったようだ。
斎藤:「あの社長に金かけてたら赤字どころじゃないからなっ!」
斎藤が笑い涙を流しながら付け加えた。再びヒーヒー笑いが沸き上がる。中には腹を抱えて爆笑している男もいた。
辺りは静かだった。風は音を立て、足元の砂を巻き上げる。天気は素晴らしく良かった。
真夏の真昼。日光がジリジリと照りつける。
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