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秋乱-АΚΙЯА-
[intrigue]
MASTER_CALL-B.B.D
intrigue 密計
ひそかなはかりごと。
秘密の計略。
TVアナウンサー:「……臨時ニュースです。今日の午後六時三十分頃、『陽炎の里』の『切山』裏通りで二十体近くの水死体が発見されました。遺体は全て通りに並べられていたとの事です。…また、今入った情報によりますと、全て男性の遺体で年齢は二十代……」
夢路:「はぁ?」
夢路が思わずツッコミを入れる。そして気を落としブツブツ言いながらどこかへ行ってしまった。吉海はと言えば、何も言わずテレビの前に座っている。
TVアナウンサー:「……はい、こちら現場の住里です。…ご覧下さい。私は今遺体が発見された切山裏通りに来ているのですが、この霧の深さ。視界は全くのゼロです。…そしてあちらの青いシートで囲われている所が、二十体近くの遺体が発見された場所です。……」
吉海はただテレビ画面を眺め時々大きな欠伸をしているだけだった。煙草をゆっくりとふかし、遂にはその場に寝転がった。
〈陽炎の里〉とは、情報学園子校や製鉄工場、情報保護整備会社等の大企業が蔓延る大都市のことだ。
陽炎の里には大きな山が二つ在る。南東の人工山〈エコ・マウンテン〉と北西の切山である。
人工山の地下には勿論情報保護整備会社が在る。そしてそこから北へだいぶ離れた森の中に情報学園子校、更に間に二つの小山を挟んで製鉄工場が位置する。他は高層ビルばかりであまり区別がつかない。だが、大体の企業は人工山〈エコ・マウンテン〉周辺に集まっている。
一方切山は、土地面積は広いがあまり高層ビルが建っていない。その代わり集落が多く人の出入りが激しい。その為事故や事件も多い。
隣には〈洲崎〉という小都市が在り、その次に嵐谷、雅山と繋がっている。
まともに人の出入りがある都市は以上だ。その他には、建物は在るが人が居ない都市や木が全く無く土だけが盛られたような所謂ハゲ山に囲まれた都市等がある。一番酷いのは、あらゆる都市から運ばれて来た産業廃棄物等で溢れた無人の都市、通称〈廃国ラ・プラス〉だ。廃国ラ・プラスは海に面していないが、時々やって来る外国人によって産業廃棄物が燃やされ大気汚染の大きな原因をつくっている都市の一つだ。
一度滅んだにもかかわらず再び環境問題を引き起こした国は、改善法を見つけるところまで辿り着いたが、そこで挫折し諦号の末今に至った。
大企業の労働者数は減少し、平均年齢も年々上がってきている。単純に、自分は元気な人間だと思っている人が労働者なのである。即ち年齢など重視されていないのだ。若者の活力は衰え、逆に年寄りが積極的に働いているのが現状だ。
人は誰しも自分の為に生き、自分の為に金を稼ぐ。年寄りも同じだ。正常な意思を持ち、正常な意識で生き抜かなければ、永遠の暗闇へといつ引き擦り込まれるか分からない世界に彼等は今居るのだ。
TVアナウンサー:「……一体彼等の身に何が起きたのでしょうか。そして、彼等の手首に残された文字の意味は何のでしょうか。引き続き」
コンッコンッ………
強いノック音が鳴った。咄嗟に立ち上がると、吉海は玄関まで走っていった。
吉海:「………冗談だろ。今から?…もう少し様子を見たらどうだ。……分かった、分かったよ~」
扉の向こうの誰かと話し終わると急ぎ足で部屋に戻る。そしてカップラーメンを食べている夢路に鍵の束を投げつけた。
夢路:「ってオイオイ何だよ!どっか行くのか?今から?」
吉海:「仕事が入った!後始末はお前に任すっ!」
用件だけ言って直ぐにその場から姿を消した。夢路が返事をする隙も無い。
夢路:「…仕事ねぇ~。何でもかんでもアイツにとっちゃ仕事か…」
ただ独り言を言うしかなかった。そして少しのびたカップ麺をすする。
日付も変わり午前一時頃。
吉海は黒ワゴン車の助手席で眠気覚ましのコーヒーを飲んでいた。運転席には誰も居ない。
車は山中の森に紛れ、まるで人目を避けるようにして暗闇で静止している。
吉海は大きな欠伸を一つすると窓の外のある一点に注目した。
吉海:「…アイツが例の黒手野郎か」
青年:「あぁ。…名前は乃牧翔陽。年齢不詳だがまだまだ若い」
暗闇の青年が口を開いた。どうやら先程吉海達の家に訪れた人物のようだ。青年は煙草をくわえているが顔は見えない。
吉海:「…何で俺を使う?お前一人で出来るだろ」
青年:「いや。今回は朝山の件でMASTERに頼まれたんでね」
吉海達の視線の先には暗闇で蠢く人込みがあった。その中に二人の言う乃牧の姿もあった。彼は周りの人間より身長がだいぶ低く一五〇もない程の少年のように見える。
吉海:「朝山と何か繋がりがあるって言うのか?」
青年:「おそらく…。ただ分かっているのは、アイツが朝山の元部下だったって事だけだ」
吉海:「ほぉ~…なかなかの野郎だな」
青年:「まぁ、『元』だからな。今じゃどこにも属さない」
吉海:「んだけどあーやって時々密会してるってわけね」
そう言って、吉海はポケットから出した煙草に火をつけた。
吉海:「……で?その生意気な黒手のガキを消せってか」
青年:「いや…むしろ逆だ。連れて来いと言われた…」
吉海はそれを聞いて最初は黙っていたが、直ぐに車から降りると急ぎ足で乃
牧達の所へ向かった。右手には拳銃が握られている。
青年:「おいっ!」
慌てて青年が彼の後を追う。
青年:「何を考えてんのか知らんが、変な気ぃ起こすんじゃねぇぞ!」
吉海:「何だよそれ」
道路を挟んで向こう側から来る二人に乃牧達が気付いた。そして咄嗟に拳銃に手を伸ばす。
男:「何者だ!マスコミの人間かっ!」
吉海:「だったらどうだってんだ?」
眠気に襲われつつある吉海の機嫌は良いとは言えない。その返答を聞いて男達の銃口が一瞬で彼に向けられた。だが乃牧が止めに入った。
乃牧:「くだらない内戦はやめろ!また死者が増えるだけだぞっ!…彼等はマスコミの人間なんかではない」
男:「何だと?それはどういう事だ」
乃牧:「むしろ逆だ。…彼等は我々側だ」
それを聞いて男達がざわついた。しかし乃牧は気にせず吉海達の方に振り向いた。
乃牧:「大変失礼な事をした。出来れば誤解しないで頂きたい。…ただ、少し
戸惑っているだけなのだ」
体に似合わず大人な口調で彼は続けた。
乃牧:「仲間が死んでしまったゆえ、何かと忙しくてね。それは貴方達も分かるでしょう。色々とマスコミにも嗅ぎ付けられてしまった…」
吉海:「マスコミなんぞ、こっちは日常茶飯事だ。今じゃ闇に生きる人間なんて思われているがな」
吉海はいつもと同じ台詞を口走った。そして拳銃を仕舞い煙草をふかした。乃牧は銀縁眼鏡を光らせにこやかに答えた。
乃牧:「良かった。話の合う方で…」
青年:「早速だが、そのでっかいスーツケースは?」
皆を乗せた車は森を抜けると、暗い一本道をひたすら進んだ。
一番後ろの席に座る青年が男達の持ち物に気付いた。
乃牧:「…組織で使われている『キーボーダー』専用の、特殊な科学電子システムがプログラムされたスーパーコンピュータだ」
乃牧が答えた。だが中身を見せる気はなさそうだ。ただにっこりと笑顔を見せ、後は黙るだけだった。
吉海:「…そんな物持って来て良いのか」
乃牧:「大丈夫。これは組織が違法で開発した、所謂【爆弾】なのさ。だから盗まれても表に出せないし、自力で探すしかない…」
「ふぅ~ん」と吉海は興味なさげで窓の外に視線を戻した。
青年:「という事は、複製は不可能ってわけか」
乃牧:「あぁ勿論。何せ開発者がここに居るからね。全員ではないにしろ、二つ目すら創れない」
時計を見てもまだ午前三時だ。外は風もなく生温い空気が漂う。
目の前には白い建物。再び吉海の脳裏の記憶が呼び起こされた。
男:「……梅咲君は席を外してくれますか」
そこは暗闇の部屋。聞き覚えのある声が響いた。
梅咲少年:「了解しました。MASTER…」
俺の背後で扉の閉まる音がした。今俺は体より数倍大きい椅子に座っている。と言うより、座らされている。
吉海少年:「…何で玲瑠には内緒なんですか?」
俺はまだぎこちない敬語を使ってMASTERに尋ねた。
MASTER:「内緒というわけではありませんよ。まだ、そういう時期ではないだけです。…その『時』が来たら話してあげて下さい」
手首と足首は冷たい鎖のような物で動きを封じられている。両側の顳かみには何かが突き刺さっているようだ。頭を動かす度に眼球の奥で激痛が走った。
吉海少年:「…でも俺がアルデヴィルになっても玲瑠は気付かないんじゃないですか?だってアイツ、いつも勉強してばっかだし…」
MASTER:「学ぶことも大切ですよ。何も、技能だけ高めれば良いというわけではないですからね」
吉海少年:「じゃぁ玲瑠も元々ムルタだったんですか!?」
コンピュータ画面に英単語がずらりと並ぶ。何かのデータなのだろう。赤字が点滅している箇所がいくつかある。MASTERはその無数の画面の前で、黒いソファーに座っていた。そしてこちらに視線を戻した。
MASTER:「…梅咲君は最初からアルデヴィルでしたよ。彼がそれを望んでいましたからね。君の場合は、先に教育が必要でしたので……」
耳元で機械音が鳴る。するとMASTERが俺の前までやって来て頭の上に手を置いた。
MASTER:「…抜きますよ」
プツンッッ………
その後激痛に耐え切れず泣き声を上げたのを覚えている。だから記憶もそこで途絶えていた。
目の前に立ちはだかる白い壁。見上げると、暗闇に呑み込まれ壁の端が見えない。辺りは相変わらず静かで、季節感の無い世界が広がっている。
あの時と全く変わらない…。吉海はふと思った。そして口にくわえていた煙草を吸殻入れに捨てる。
吉海:「…林藤、先頭頼む」
男達の一番後ろにいた林藤惷に声を掛けた。彼も吸殻を捨てているところだった。
林藤:「お化け屋敷じゃねんだから…」
そう言って嫌な顔をする。だが直ぐに吉海の隣まで来ると白い壁の前に立った。
それを待っていたかのように、林藤の頭上から銀色の粉のような物が降ってきた。その銀色の粉は彼の周りに壁を作った。それを見て乃牧達が驚く。勿論吉海や林藤にとっては普通の事だ。
乃牧:「こっ…これは何だっ?」
吉海:「まぁ~…コレには色々と事情があってね。話すと長いんだ」
そう言って吉海は冷ややかな笑顔を見せた。それは先程の乃牧への仕返しのようにも感じられる。
数十秒後。機械音が小さく聞こえた。そして次の瞬間銀色の壁が再び銀の粒子に分散した。それは目に見える、まるで化学分子同士の分裂のようだ。
乃牧達はこの世の物ではないような〈もの〉を見たように、少し青ざめた顔で暗闇へと足を踏み入れた。
結局吉海が床に就いたのは午前四時半頃だった。既に眠気もなくなっている。ただ寝転がって天井を眺めているだけだった。そして時々瞼を無理矢理閉じる。
暗い………暗い……………………
……………しく……しく…………しく……しく…………………
暗闇で誰かが泣いている。
これも俺の記憶か…?
そう思って瞼を開ける。すると、遠くに玲瑠の姿が見えた。それも少年の頃
の玲瑠だ。
玲瑠の足元で屈み込んで泣いている少年の姿が次に目に入った。
……あいつが泣いているのか………。
次にその少年の声が聞こえた。
少年:「…っひっく。ひっく……いたい…………チ……ひっく……チがでて…ひっく……いたいよぉ~……うぐっ……」
梅咲少年:「何だ…弱いな、弓原。……そんなんで泣くなよ、弱虫っ…………!」
次の瞬間、新たに現れた少年が玲瑠の振り上げられた右手首を掴んだ。少しの間珠貴の泣き声だけがそこに響いた。
そして静かに少年が口を開いた。
少年:「…やめなよ、うめさき君。ゆみはら君も悪かったけど、ケガさせちゃ、ダメでしょ?」
少年は玲瑠の顔を覗き込んでそう言った。だが玲瑠はふんっと鼻で笑うと彼の手を払った。
梅咲少年:「…俺に、指図するな……」
そして背を向け早々とその場から姿を消した。すると入れ違いにもう一人少年が現れた。彼は三人の中で一番背が低い。
………あいつは……………………。
少年は玲瑠の消えた方向をしばらくの間見ていたが、直ぐに屈み込んで珠貴の傷具合を確かめる。
少年:「たまき、だいじょうぶ?いたくない?…ねぇ、いたくない?…チがでてるよ?」
本当に心配しているのかどうか分からない彼の言動に違和感を感じたのか、珠貴は涙をボロボロと落としながら少年を見た。そして顔を引きつらせる。
弓原少年:「いたいよ!いたいにきまってるじゃんっ!」
だが少年は何を思ったのか、珠貴の傷口に指を近づけた。そして瞬時に突付く。
弓原少年:「ぅぐぁっ!い、いたい!いたい!さわらないでよっ!!」
珠貴は奇声を上げると少年の手を咄嗟に叩いた。同時に尻餅をつく。
少年はもう一度触ろうとしたが、先程から何か考え込んでいるもう一人の少年に気付いた。
少年:「おい、みやの!なにぼぉっとしてんだよ!なんかたすけてやれよっ!」
少年はそう言って立ち上がった。
……そうか。…玲瑠を止めたのは中枝宮之だったのか………。
中枝少年:「…大丈夫だよ。きっと、うめさき君が先生を呼んで来てくれるから…」
それを聞いて珠貴が泣き止んだ。そして涙を拭うと右手の親指を地面に向けた。
弓原少年:「そんなバカなはなしあるかぁ!」
少年:「そうだよ!アイツはたまきをいじめたんだぞ?なのにセンセイをよんできてくれるだと?そんなツゴウのイイはなし、きいたことないわぁっ!」
少年が便乗する。
弓原少年:「そーだ!そーだ!きいたことないわぁっ!」
そう言って珠貴が地面の土を宮之に投げつけた。まるでイジメが喧嘩を呼んだような有様だ。
本来はそこで話は終わる。宮之も仕返しをしようと土を投げ返し、それぞれ土埃にまみれてけらけらと笑い合うのだろう。
俺は知っている。もう結末は決まっていた。
軽い気持ちで、冗談半分でしていたイジメが、何かの拍子で大惨事を招く。それを俺は知っている。
次の瞬間、目の前が暗闇に戻った。
………………しく……しく…………しく……しく…………………
再び暗闇で誰かの泣いている声が聞こえた。
…これは……これは、宮之の泣き声だったのか…………?
そう思って瞼を開ける。そして重い吐息を漏らすのと同時に低音の声を発した。
吉海:「あぁ……そうか。…アイツが眼鏡を掛け始めたのは、これが原因だったのか………」
いつまでも脳裏に点在する謎の記憶。まるでそれは綺麗に映像化された一つの映画のようだった。暗闇が広がる中で小さくそれは輝き姿を露にするのだ。
目の前にはいつもと同じ天井がある。何かに対する安心感を覚えた吉海は、寝転がったまま煙草に火をつけた。
部屋の外。
誰かが部屋の様子を探っていた。吉海はそれに気付くことなく、ただボ~っ
としているだけだ。
ふとその人物が足元に視線を移した。
…………………………………………
特に何も無い。だが何か違和感が在ったのだ。
気を取り直してその男は〈凶器〉を握る右手に力を入れた。
男:「…コイツだけは……」
ゴンッッ………ドサッ…………………
そう呟いたがしかし、次の瞬間背後の誰かに殴られた。音を立てて男が倒れる。
青年:「何だ?コイツ…。コソコソしやがって……」
男を殴った青年がボソリと呟いた。
ガチャッ……………
吉海がやっと顔を出した。そして案の定、足元で倒れている男に視線を落とす。
少しの間黙っていたが、青年の存在に気付いた。
吉海:「…何が起こったんだよ。つうか、コイツ誰?」
吉海は白煙を吐きながら床の男を指差した。
青年:「知らん。…調べりゃ分かるだろ」
だが何か思い出したのか、吉海は男の顔を覗き込んだ。そして頭をポリポリとかく仕草を見せた。
青年:「…知っているのか?」
吉海:「んー………多分」
そう言って立ち上がり再び白煙を吐いた。
青年:「何じゃそりゃ…意味不明」
青年がため息混じりに言った。そして右手のブラック・ホースをしまう。
吉海は記憶を手繰っていた。
その間十秒弱。
吉海:「あぁ…そうか。コイツ、黒手のガキと一緒にいた奴だな」
青年:「く、黒手のガキ?何だよそれ…」
吉海は山中での事を青年に話した。
吉海:「……よくは知らんが、林藤によるとその乃牧ってガキ、朝山の元部下
だったらしい。…正しい情報とは言えんがな」
青年:「…要するに、そいつと一緒にいたくらいだから、コイツも『話の分か
る奴』ってわけじゃないんだな?」
吉海は青年の問いに「そうそう」と頷いた。そしてあくびをして部屋に向き直る。
吉海:「…俺が思うに……」
そう言って少し黙った。どうやら煙草をふかしていた様だ。
吉海:「…今直ぐとは言えんが、何かが起こる。奴等が動き出しているようだ。…………何か臭うな……」
吉海は意味有り気に、そのキリッとした横目を青年に向けた。
ふと青年が背後に視線をやった。何かの気配を感じたが、誰も居なかった。
気のせいかと思い振り返ったその瞬間、吉海の顔と共に光る〈モノ〉が目に留まった。
のど元に銀色の刃先が突き刺さっていた。
青年:「………な……に……ヲ………」
それ以上は声が出なかった。何か筒から空気が漏れるような音だけがただ耳に届いた。
血が出ない。血は出ないが、痛みが在った。
吉海:「…失敗だ。貴様は『梅咲』じゃない……」
崩れ落ちかけた〈彼〉を吉海は抱え込んだ。そして冷静な眼差しで微笑みかけた。
男:「失敗ですか。自信は在ったのですがね…」
コツコツと靴音を響かせて一人の男が姿を現した。
吉海:「…珍しいですね、MASTER。めったに外に出る事なんてないの
に」
吉海は〈青年〉を抱えたままMASTERの方に向いた。相変わらずMASTERは黒い背広を身にまとっていた。
MASTER:「どうですか?『彼』は」
吉海:「…確かに玲瑠によく似てますけど…何か、足りない気がしますね」
そう言って〈青年〉の髪の毛を撫でた。
MASTER:「何でしょう」
吉海:「何って言うか……玲瑠独特のオーラと言うか、迫力と言うか……」
吉海は〈青年〉の瞳を覗き込んだ。そして首を傾げる。
まさにそれは梅咲玲瑠似の〈ドール〉だった。
他人からすると、〈本物〉の梅咲を吉海が抱きかかえている、という何とも恥ずかしい光景である。
MASTER:「それは、もっと『本人』を観察すれば良い、という事ですね?…分かりました。今度からそうします」
そんな光景も気にせずMASTERは吉海に笑顔を見せた。いつもは見せな
いような優しい顔だった。
吉海:「と言うか、何で俺に聞くんです?他にも川田博士とか、専門家がちゃんと居るじゃないですか…」
それを聞いてMASTERの目が少し丸くなったように見えた。だが直ぐに微笑んで静かに答えた。
MASTER:「…君の方が詳しいと思いますがね…」
意味有り気な返答に吉海は少し眉をひそめた。
MASTER:「お帰りなさい、梅咲君」
MASTERが突然言った。振り返ると〈本物〉の梅咲がそこに居た。
吉海は何を思ったのか、咄嗟に〈梅咲ドール〉を抱えたまま梅咲に近づいていった。
梅咲:「…なっ……何だよソレ…」
案の定、梅咲の顔は歪んだ。少し身を引いて〈梅咲ドール〉を凝視する。
吉海:「あ―――やっぱり!…MASTER、やっぱコレ失敗ですよ。『本物』と全然感じが違いますね」
吉海は振り向いて〈梅咲ドール〉を叩いた。ほとんど〈本物〉の梅咲の事なんか気にしていない。
梅咲:「…つぅか何だよソレ!き、気持ち悪いモン持ってんじゃねェよっ!意味不明じゃバカ!!」
吉海:「バカって言うなよ、バカって!そっちこそ話を聞け、バカ!」
梅咲:「なっ……!」
思わぬ吉海の言葉に梅咲は一瞬たじろいだ。言葉が後に続かなかった。
吉海:「……コレはな、新しく開発された『クローン人間』なんだよ。玲瑠に
似ているのは当たり前だ。玲瑠の〈媒体細胞〉を使用しているからな…。でもコレは失敗だ。〈本物〉と違って遺伝子が組み換えられている上、〈媒体〉としても不安定だし…」
難しい言葉遣いで吉海は続けた。
吉海:「…〈本物〉と外見が同じに見えても〈匂い〉が違うんだ」
梅咲:「に…〈臭い〉?」
吉海が真剣に説明しているのは分かるが、梅咲の目は疑っていた。そして自分と瓜二つのドールに触れてみる。
吉海:「…〈匂い〉だけじゃなく、〈目の色〉とかも微妙に違うんだ」
梅咲:「あ―分かった分かった。…でも何でこんなモン造る必要がある?『クローン』って事はまだ後何体か在るんだろ?」
梅咲は〈クローン〉の耳を引っ張りながら尋ねた。それにはMASTERが答えた。
MASTER:「昔、教えた事が在りますね。…『世界を変える手伝い』の為に必要なのです。複製は未だしてませんよ。これも失敗のようですから」
梅咲と吉海はあの頃の事を思い出した。そして黙ってMASTERの言葉に耳を傾ける。
MASTER:「…ですが、『何よりも、君達の頭脳の構造と、体内を駆け巡る血液の速さが、私を引き付けた』……」
そう言って笑顔を見せ、更に続ける。
MASTER:「変わるものは在ります。ですが、変わらないものも勿論在ります。…何を変えるべきなのか、考えた事がありますか?…それとも、もう答えが出ているのでしょうかね………」
MASTERはそう言うと、もと来た場所へと戻っていってしまった。
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