秋乱-АΚΙЯА-

◆01-03◆


[connexoin]
◆01-03◆


 青年は手の血を拭うと拳銃を鞄に入れた。そしてもう一つのスーツケースからメスを取り出すと、刃を男の頭に切り付けた。
 10分後、青年は〈或る物〉を男の額からスーツケースの中の容器に移した。青年は再び手の血を拭うと、傍に置いていた眼鏡を手に取った。

青年:「…残念ながら『情報削除』させてもらいます……」

 スーツケースを閉じると、青年は立ち上がりニコリと笑った。そして胸ポケットから携帯電話を取り出した。

青年:「…もしもし。俺です、梅咲です。…………………了解」

 時刻は午前10時を回ったところだ。梅咲は鞄を抱えスーツケースを持ち上げると、靴底の鳴る音も気にせずその場を去った。
 外は真っ青な空が広がっていた。そして雲一つ無く、夏の暑さを改めて実感させていた。

梅咲:「暑いな。さすがにコートは着過ぎか…このコート気に入っているんだが、無理があるかもしれない……」

 独り言を言いつつ梅咲は遠く離れたバス停まで歩いた。蝉の声が耳にこびり付く。風もなく、ジリジリと照る日の光に梅咲は苛立ちを隠せないでいた。

 もし太陽も『情報』だったら、完全削除してやる……。

 周りは〈情報〉で溢れている。足元に転がっている石でさえ〈情報〉なのだ。

 何もかも〈情報〉だ。〈削除〉すれば全て無くなる。…便利な世の中になったものだ…。

 風が吹いた。だが一瞬だった。木の葉が数枚落ちた程だ。

 風など必要ない。それが無くとも俺は生き続けられる。〈情報〉も同じ事。必要の無い〈情報〉は〈削除〉すべきだ…。

 20分後、バス停に到着。それだけ歩いたのに汗一つかかないのか、と不思議に思いつつ梅咲はそれからもう10分程バスを待った。
 バスにはおよそ10人が乗っていた。梅咲は気にせず二人席に腰を下ろすと、直ぐに深い眠りについた。



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