理系は文系も出来る
海保大の入学試験は完全理科系で英語、数学、物理または化学の選択式だった。
理数系の者を採用するというのはどうも海軍系の高等教育機関の伝統らしく海海軍兵学校も海軍大学もそして海保大も同じでそれには理由があるらしかった。
理数系で採用しておいて専門分野である航海、期間工学、通信工学では確かに役に立つものの4年間の授業のほとんどは法律学だった。
憲法、刑法、刑訴、国際法、民法など多岐にわたるが僕はすっかり法律が好きになってしまった。
文系の人には悪いが理系の人間には文系である法律も出来るのだ。
いや、むしろ刑法などは理系の考え方に近い。
条文を覚える必要はない、ある事案がどの条文に該当するのか論文形式で導き出すのだ。
たとえば、犯罪とは「構成要件に該当し違法かつ有責な行為」という定義(方程式?)から、暴漢に襲われてそれに敵対していみじくも相手を殺してしまった場合。
人を殺した時点で刑法199条の殺人罪に構成要件上一部は該当する。それが大人だとしたら判断能力があるので有責だ。
しかし、違法性において自分の命が狙われているときにそれを回避するために仕方なく相手を殺したのだとしたらこれは違法性を否定する(阻却すると言う)
従って殺人罪の定義を完全には満たしていないのでこの罪にはならない。
これに付け加えるとその暴漢が凶器を何も持っていないのに自分は初めからナイフなどの凶器を忍ばせていたとなると過剰防衛の可能性があり全くの無罪にはならないかもしれない。
このように法律の論文を完成させていくのはむしろ理系的な能力を持っていたほうが有利に働く。
PR