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究極の投資法



バートン・マルキール著 「お金を働かせる10の法則」
             誰でもできる 究極の投資法!

<原題> The Randam Walk Guide To Investing
Ten Rules For Financial Success

の紹介である。

普通、究極の投資法とか、誰でも簡単にできる、などというキャッチがついたものは眉唾物か、前提条件がはなからあてにできないものである場合が多い。

これも日本語版の書名をみるとそうなのだが、原著書名を直訳すれば

「投資のランダムウォークガイド - 経済的成功への10のルール」

ということになり、この方がずっとましである。

(外国の書物を日本語訳して出版するときに、えてして、一般受けを狙ったり、話題性を優先させたりして、本来の書名より程度が低い印象を与える場合が多い。外国映画の日本版もかつてそうだったが、最近映画の方はオリジナルそのままを使う場合が増えてきつつあり好ましい傾向である。)

この日本版書名になったのは、オリジナルにある「ランダムウォーク」というのが、一般には分かりにくいと思われたのではないかと推測している。

この「ランダムウォーク」と言う言葉は、実は同じ著者が1973年に出版した「ウォール街のランダムウォーカー」を受けての題名なのである。

この30年前の著書は、当時から一躍ベストセラーとなり、現在でも読み継がれている、投資本の定番である。

ここで紹介する「お金を働かせる10の法則」は、著者自身が、前著を書き表して以来30年に渡り、この投資の世界での経験と起こった事実を元に、30年後の今でも真実であり続けているエッセンスをより平易な言葉で書き改めたもので、いわば前著の現代版であると言える。

しかし著者自身が本書の中で言っているように、前著で書かれていた投資のアドバイスは殆ど現代でもそのまま真実であり続けている。その意味で、著者は、前著を著した時にもまして自分の理論と考え方に自信を深めている。

そして、この本に書かれたルールに沿って実践するだけで、確実に、誰でも簡単に(これは日本語版の副題にもなっているが)、プロのパフォーマンスを上回る投資結果を得られる、としている。

私の株に関する知識とテクニックはプロ並みだとセミプロ・デイトレーダーを自認する人や、投資を勧めるファイナンシャルアドバイザー、もっといえばプロのディーラーでさえ、平均するとこの本の約束しているパフォーマンスを決して上回ることができないのだ。その理由はこの本を読めばよくわかる。

一つは、フリーページの「投資戦略の発想法」の説明の中でも言及した「時間」の観点、そしてもう一つは、株式市場を生活の糧とする何万人ものプロとそこからの収益で事業を行っている組織がある限り、トレーディングを繰り返していると株式そのものから得られる収益からその分確実に目減りしていると言う単純な事実からも推測できる。

そして何よりも、過去50年に渡る統計が、この著者の理論を支持しているし、同じことが、同じくベストセラーとなったトマス・スタンリー著の「隣の億万長者-成功を生む7つの法則」においても、億万長者たちの資産形成法の中でも述べられている。

いわく、半年あるいは一年以上に渡って、自分の株や債権を売買した人はほとんど少数派で、短期的に売買を繰り返している人のパフォーマンスを確実に上回っているのである。

また、一方、プロの管理するファンドの中で、市場の平均パフォーマンスを超えるファンドはこれもまた少数派であると言う事実もある。

この驚異のパフォーマンスを上げるための10の法則に言及する前に、著者はまず、3つの基本的なステップを要求する。

1)投資アドバイザーを首にする
2)4つの投資対象(現金、債権、普通株、不動産)に焦点を絞る
3)リスクとリターンの関係を理解する

の3つである。

その上で次の10の法則を紹介し、それぞれ統計的に、あるいは40年の体験から、その理由とポイントを説明してゆくのである。

1.時は金なり-今すぐ貯蓄を始めよう
 これは、「投資戦略の発想法」で述べた「時間を味方につける」と同じ。
その共通の認識は「複利を自分のために働かせる」である。

2.富を築く力-自制心を高めよう
 これも「投資戦略の発想法」で説明した「意志力の重要性」と相通ずる。

3.いざと言うときに備える-保険と現金はいくら必要か
 このことを「投資戦略の発想法」では「生活防衛資金」として言及。

4.税務署員を出し抜く-優遇税制を徹底活用せよ
 「投資戦略の発想法」では、投資を一般論で捉えており、ここまでの突っ込みはしていない。ただ、この本の税制利用はアメリカの税制に対してであり、日本の税制に関しては別途勉強する必要が出てくる。
 私の場合は、アメリカに住み、アメリカで投資をしているので、この部分は非常に役にたった。

5.ふさわしい資産配分-自分の性格を知り抜いているか
 投資目的、投資期間、期待する収益、そして意志力や平常心、つまり市場急変時にも泰然としていられるか、など、人それぞれに違った資質・環境に対して最適な資産配分を提案する。

6.分散は災難を遠ざける-ドンキ・ホーテの教訓
 分散投資、通貨リスク(カントリーリスク)、ドルコスト平均法などについて言及。

7.プロの助言を真に受けるな-手数料と経費のわな
 上で説明した証券業界の手数料と、なぜ素人がプロに勝てるのかを理論的に説明している。そして最低限のファンドの選び方にも言及。

8.愚か者のゲームにはまるな-市場の英知を称えよ
 市場の英知とは、「市場は何でも知っている」とも言い換えられ、どんな些細なこと、ニュース、きっかけなど、市場が知っていることを全て押さえられる人間は存在しない、つまり市場ほどの英知は誰も持たないということ。その結果、どんなプロでも将来予測に限界があり、どんなテクニックも市場のランダムウォークには万能ではありえないことを説く。

9.本命に賭ける-インデックスファンドの勧め
 では市場の英知とはどこにあわられるのか。市場の平均パフォーマンスに現れるのである。その平均パフォーマンスに沿ってポートフォリオを組むと言う意味において、すなわちインデックスファンドを勧めている。そしてインデックスファンドの選び方、債権や不動産を含めたポートフォリオの考え方、そしてライフサイクルに合わせた資産配分などに言及。

10.己自身に勝つ-投資家心理の落とし穴
 これも「投資戦略の発想法」でも繰り返し述べた「意志力」の重要性であり、自分の敵は自分の中に居る群集心理、自信過剰、目先の欲望などを克服することの重要性を説く。

木村剛の「投資戦略の発想法」はどちらかと言うと、投資そのものを始めるに当ってのの準備、必要条件に多くを割き、この「お金を働かせる10の法則」は、その投資をするときの実際のポイントをより深く説明している。

しかし、両書とも、その投資に関するスタンスは共通しており、曰く資産形成を目指すために、長期的な投資を勧めている。

その限りにおいては、両書とも、そこに書かれていることを素直に、愚直に実行すれば確実に資産形成を成功させることができると断言しているのも共通しているのである。

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