旅の途中

手紙

　　　お母さんへ

僕は元気ですよ。このまえ面会の時、言いたくて言えなかったんだけど、

毎回本当に　ごめんなさい。

もう無理して来なくてもいいですよ。

手紙だけで充分、うれしいです。

僕は弁護士をたのみました。お金は、国で出してくれるそうです。

今回、入るとしたら　長くて1年だそうです。

1年半も2年も入らないって言ってたよ。

だからといって　気ぬく訳じゃないよ。

もちろん　その1年で、色んなこと学んで社会で役にたつようにしたいです。

けど、とりあえずは鑑別で、出られるように頑張ります。

無理だとは思うけど、あきらめないで頑張ります。

今の僕には、どうしても出たい理由が２つあるんです。

だから、あきらめずに頑張ることにしました。

どうせ少年院に行くのなら、頑張らないで少年院に行って後悔するよりも

頑張って行った方がいいからね。

もう捕まるのは　こりごりだし、かあちゃんとかあきちゃんとかに

迷惑かけられないし。もし出たら、元のアパートで一人暮らししようと

思ってんだけど、どう思う？

仕事は、最初はどっか近くでアルバイトして、30万円ためて

車の免許とって、そしたら　ちゃんとした職を見つけようと思ってる。

あと気になったことがいくつかあるんだけど、精神病院に入院したって

書いてあったけど大丈夫？その病室は外出できないの？面会は？手紙は？

色々と心配です。とにかく今は、おふくろの身体の健康と精神的な面での

健康を一番に考え、無理せず　ゆっくり休んで下さい。

僕が出たら何とかしますから！！

あとコーダイの事だけど、どう？いつ施設に入れられるとか、わかった？

ってか、コーダイと連絡とれた？

コーダイとは話したいことたくさんあるからさ。

もし　まだまだ間に合うのなら、コーダイの住所書いて手紙くれって

言っといて。お願いします。

コーダイに会いたいなぁ。

僕は自分のやったことに対しては、ものすごく反省しているつもりです。

こんなことしなければ・・・って悔しいです。

とにかくまた　お手紙書きます。

では、お返事おまちしておりやす。

私は息子の気持ちが嬉しかった。私が彼の年齢のころ、そんな事考えも
しなかったから。私の面倒など、みれなくても当然な年ごろだけど、
その気持ちが　本当に嬉しかった。もう思い残す事はないくらい。

でもね、やっぱり孫の顔　見るまで　生きていなくちゃいけないんだって
感じたね。長く生きて、経験してきたことを伝えなくっちゃってね。
先に生きたもの、だから先生というのでしょ？
学校や病院の先生だけでなく、人生の先生として　良いことも悪いことも
教えていかなくっちゃならないんだと。

今日（3月2日）、面会して　息子に言い残してきた言葉。
「勉強も遊びも、いつだって出来る。ママが英語を話せるようになったのも
　30歳くらいだったし、英語の学校も行ってないんだよ。
　ただね、今、あなたが18歳。その年齢は　戻って来ない事は忘れないでね
　16歳に戻りたくても戻れない事だけは　覚えておいてね。」と。

息子は、まだまだ失敗を繰り返すだろう。でも決して、殺人を犯すような子
には　ならない！という確信が数パーセント、見つけられたような気がする

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