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ハーディング/マーラー:交響曲 第10番



リベラ同様、昨日購入した目下ハイライト的アルバムが、ダニエル・ハーディングのDGレーベル第1弾のマーラー/第10交響曲だ。デリック・クック補筆完成全曲版による演奏で、嘗てのウィン・モリスの演奏以来の衝撃となった。
2004年12月、29歳のハーディングが記念すべきウィーン・フィル・デビューを果たしたときの演目もこの曲で、ウィーン・フィルにとっては初めての5楽章版による演奏だった。DGレーベルにとっても5楽章版の録音は初。この100年の歴史の中でもなかったことだ。演奏の詳細はさておき、一度は耳にして良いだろうと思えるものだ。マーラーが第9交響曲を作曲中にこの第10番に手を付け、古今の大先輩たち、ベートーベン以降から9番を最後に逝去している事象にその奇遇を恐れていた。だから第9番の途中からそのジンクスから逃れるためにも、あえて10番の構想に着手した。そして第1楽章を書いて、次章のスケッチを残し、また第9番の完成に向けて執筆を開始した。その束の間、第9番の完成と共にマーラーも古今の名作曲家と同様、死去するという運命に遭遇する。今作品は後にデリック・クックがスケッチを元に復元再生した5楽章形成の全曲盤である。幽門多しこの作品に、今生の境目として聴いてみるのも一考かと思う。第一楽章の悠遠なる世俗との離脱、この不思議な世情にどう耳を傾けるか。中々のものである。私は大好きだ。

それから、ちょっとだけハーディングに触れておこう。彼はバーミンガム市交響楽団でサイモン・ラトルのアシスタントとしてキャリアを開始し、1994年に18歳のとき同オケでプロ・デビュー。続いてベルリン・フィルでアバドのアシスタントを務め1996年ベルリン・フィルを指揮、この年BBCプロムスの最年少指揮者となった。現在、マーラー室内管弦楽団音楽監督、ロンドン交響楽団首席客演指揮者、スウェーデン放送交響楽団音楽監督を兼任する。新世代を確実に歩みゆく、若き巨匠の始まりといえる指揮者だと思える。


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