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巨勢典子/風の道


いつしか在りし日の過ぎ去った風に変わって運ばれてきた~

最近のヒーリング・ニュー・エイジミュージックの傾向は少しずつ変わってきている。時代が及ぼす寵児から、ほんの一握りだけどその人だけのとっておきの扉へと少しずつ。開けようとしても開いてはくれず、自然に重なり合うまでちょっとだけ時間がかかる。

巨勢さんの音楽は全体にどこにも無理のない吐息みたいに憂いに満ちた音楽が多い。大きくもなく小さくもなく、いつも等身大の音楽がそこにある。背伸びしようとすればできるのに、けしてそれをしない。
彼女の歩いてきた道程をふり返れば、そのまま今の音楽に繋がっている。どこかで邂逅しながらも自分の道を探しながら、そう「風の道」を歩いてきた。

音を奏でることは使い分けられる音階や帯域に、恒にさまざまな色彩を持ち合わせ、同時に光を放っている。巨勢さんの色彩は淡い趣の中に常に原色のはっきりした響きを持っているのが特徴だと思う。その色彩から伝わるイメージ、そして感覚は聴く人によって千差万別ではあるけれども、どこかで共通した感情の重なりを覚えるだろう。それが聴く人に共感してひと時の至福を与えてくれる。

「さかさま時計」から一年振りの今新作「風の道」は、自叙伝的な彼女の経過を綴った叙事詩にも通ずる作品といえるかもしれない。より内側に向かっての心情の吐露。世に多くの散乱する音の洪水からすれば、シンプルで言葉少なめに謳いあげる音楽である。一曲一曲に思い入れたメロディはひとこまの時の花束を醸し出している。優しさに満ちた響きが自然に聴き手を包んでくれることだろう。



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