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日本映画の最高傑作の一つ「砂の器」


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今まで日本映画を観てきた中で、これほど涙なしでは観られない映画というのは今のところ皆無である。野村芳太郎監督の作品に対する考察洞察はもとより、「宿命」の副題が示す如く、親と子の絆の強さを描いた清張文学の金字塔的作品だ。単にお涙頂戴の創りではなく、物語映像の流れは実に見事で、身を乗り出すように観る者をどんどん引き込んでいく。

後半残り30分くらいから淡々と語る丹波哲郎扮する今西警部の回想するところからのシーンは、この映画のクライマックスになる。出演している俳優の上手さ、背景となる光景はどれをとっても、これ以上は考えられない素晴らしさであり、完璧な作りである。回想の語りに合わせ、そこに響くこの映画の音楽の良さ、素晴らしさは計り知れない。この名曲に被さるかのように映し出された映像にどれ程か涙も隠せない。哀しさ、淋しさ、辛さ、様々な境遇を垣間見ながら、そしてそれ以上に親と子、その絆の強さに心打たれる。嗚咽を堪えることも出来ず、満水になったダムの栓は壁を破る。気がついたら眼鏡のレンズは遠く曇っていた。
観るたびに、こういう映画、もう二度と創れないのだろうと思った。後にも先にも日本が生んだ邦画史上、最高傑作の一つであると確信するばかりである。


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