第6話          鏡



足立  「あ、じゃあオレ行こかな」

前田  「お前スーパーショートじゃん!打撃はどうなの?」

足立  「それを今から照明すんねんやん」

前田  「だな」

坂本  「あいつ・・・どこかで・・・」

坂本はサードに身構えていた

前田  「じゃあいっくぞー」

足立  「ちょっと待ったってぇな」

前田  「ん?」

足立  「オレもかすったらやなくてヒットならでええよ」

前田  「ふぅん。自信あるの?」

足立  「自信ゆーか・・・不公平やん?」

前田  「わかった。じゃあヒットなら合格な」

足立  「そのかわり守備は気ぃ付けや」

前田  「??」

前田  「ま、いっか。行くぞ!!」

足立  「あいよ!」

というと、グリップを前に突き出す打法をとった

前田  「何?その構え?ローズ?」

足立  「おう。タフィ・ローズの打法や」

前田  「・・・まぁ。いいけどさぁ。振り遅れるなよ?」

足立  「おいっす」

前田  「んじゃ行くぞ!!」

前田  「1球目っと!!」

足立  「うお」

ズドーン!!

佐々海 「ストライク。あんた打つ気ある?」

足立  「もち」

前田  「んじゃ行くぜ。2球目!」

ゴォォォォ!!

足立はグリップエンドでバントした

前田  「なんだ!!??」

佐々海 「グリップエンドでバント!?」

前田  「サード!!」

坂本  「チッ!なんだよ!」

坂本は素手で球をとると、そのままスローイング!!

審判  「セーフ!!」

前田  「すげー!!」

佐々海 「ア、アリエナイわ・・・」

坂本  「そうだ!あいつ『やるきのない黒髪の守備野郎』だ!」

前田  「あ、それ。聞いたことある」

佐々海 「うんうん」

坂本  「オレが昔対戦したときだが・・・」

坂本  「3打数3安打のところを3打数0安打におさえられた経験がある」

前田  「なんで?」

坂本  「全部あいつのファインプレーだ」

前田  「へぇ・・・」

佐々海 「あいつ!中学のショートゴールデングラブ賞とったやつ!!」

前田  「帝国ってやっぱすごいやつばっか集まってんな・・・」

足立  「んじゃオレ合格やな」

前田  「ま、ズルイけどいっか」

足立  「ズルないやん。実力やん」

前田  「はいはい。んじゃ!次!」

川崎  「じゃあ僕やろうかな」

前田  「お、優か。どうする?お前の実力知らないんだけど」

川崎  「う~ん・・・ヒットは・・・多分ムリだと思う」

前田  「じゃあカスったらな」

川崎  「うん」

前田  「んじゃいっくぞ!」



前田  「残念!ちゃんと試験うけろよ」

川崎  「うん」

川崎  「それにしても・・・スゴイな裕平は・・・」

佐々海 「・・・・・」

内田  「じゃ、次ボクが・・・」

前田  「おう。内田どうする?」

内田  「ボクはヒットでいいよ。球見えるし」

前田  「お、自信満々だな」

内田  「うん」

内田は左バッターのボックスに入った

前田  「お前右打ちだとか言ってなかったっけ?」

内田  「え?あ、そ、そんなことないよ」

前田  「?そうか」

前田  「行くぞ!!1球目っと!」

ゴォォォ!!ズドーン!

佐々海 「1ストライク!」

前田  「見えてるのか?」

内田  「うん」

内田  「座標(x、y)=(3,6)速度148・・・ブツブツ・・・」

佐々海 「なに?」

内田  「なんでも」

佐々海 (コイツ・・・打席入ったら雰囲気かわったな・・・)

内田  「次、行くよ」

佐々海 「なにするの??」

内田  「・・・・・」

佐々海 「聞こえてない・・・」

前田  「いくぜ!2球目!!」

すると内田はバットを少し上に放り投げファーストに走る体勢をとった

前田  「!?」

コン

バットにボールが当った瞬間内田が全速力で走り出した

前田  「ファースト!!」

ファーストがボールを捕りに行ってそのままタッチしようとするが
内田が絶妙なタイミングでヘッドスライディング!!

審判  「セーフ!!」

内田  「や、やった!!」

前田  「な、なんなんだ!!」

坂本  「たった1球でサクリファイスをこなしてしまうとはな」

前田  「ああ」

川崎  「サクリファイス?」

前田  「球をよく見てバントに適した腰の位置や目線の位置を
     予測してバントに備えることだ」

坂本  「普通なら2打席はかかるんだがまさか1球で・・・」

内田  「やったやった!!」

前田  「ホントに・・・すごいヤツばっかりだな・・・この高校は」

坂本  「ああ。俺たちのほうが飲まれないようにしないとな」



前田  「よし、終了だ。合格者以外は次の試験を受けるように」

前田  「あーあー。こんな年にもなって無理するもんじゃないわ~」

佐々海 「あんた何歳だよ」

前田  「んじゃ~今日は帰るかな~」

佐々海 「うん。今日はもう遅いし」

前田  「んじゃあ今日は解散。明日は土曜日だから朝練な」

前田  「えーっと・・・9時グラウンド集合でいいよな?」

ういーっす



帰り道

前田と佐々海はいつものように帰り道の河原を歩いていた

前田  「で?どーよ」

佐々海 「ん?いきなり何?」

前田  「わかってんだろ。今日のやつらだよ」

佐々海 「んー・・・わるくなかったけど」

前田  「甲子園。行くんだろ?」

佐々海 「うん。行けたらいいな」

前田  「行けたらじゃなくて行くんだろ?」

佐々海 「そーだね。これから頑張ろう!!」

前田  「おー!!・・・って。話ズレてんじゃん」

佐々海 「そうそう。う~ん・・・坂本君はスゴいのはわかりきってるし」

佐々海 「足立君と内田君はうまいよ。レギュラーで使っていいんじゃない?」

前田  「まだわかんないぜ。こっからがあいつらにとって大変だ」

佐々海 「何すんの?あんたが考えることってフォローが大変なのよ」

前田  「いつもメーワクかけるねぇ」

佐々海 「いいっていいって」

前田  「それより・・・優だな」

佐々海 「優君・・・三振してたからなぁ・・・」

前田  「いや、あいつは絶対才能ある。オレが保障する」

佐々海 「何の根拠よ?」

前田  「まー見てな」

前田  「あいつはオレに似ている。絶対に合格する」

受験者    158人

合格者    3/158人



第7話に続く


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