魂の叫び~響け、届け。~

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「拒めば拒む程、男の気持ちは煽られて燃え上がるって・・・可憐な姫君はご存知ないようだ。



 それとも・・・・、



 ――――判っていて誘っているのかな?」




「そうじゃ無いよ、ヒノエくん・・・。」


「え・・?」


「私は大人しく攫われたりなんかしない。私は私自身の意思で、ヒノエくんを選びたいから。」


「・・・っ・・!」


「ヒノエくんのこれからを、未来を・・・私に、く・・れる・・・?」



泣かない、つもりだった。

こんな時に涙を見せるのは卑怯な気がするから

絶対に、泣かないって・・・そう思っていたのに・・・。





「ホント・・・参ったよ、完全に―――降参だ。」



長い指が、頬を伝い落ちる雫に優しく・・・愛しむように触れる。


「金や銀をいくら積まれてもオレの心を売り渡す事は出来無い。


 けど、姫君の流す真珠の涙と引き換えなら、オレは全てを捧げたって構わないんだ。



 ・・・・怖いか?お前が夢中にさせたのは、そういう男だよ。


 今更後悔したって、もう手遅れだけどね。」




もはや自分では止める事が出来なくなってしまった涙の泉に、

ヒノエくんはそっとその唇を寄せた。




「バカだな、泣くのを我慢してたのか?まったく、お前は本当に可愛いよ。」



「だっ、て・・・こんな・・・時に泣くなんて・・・ずるいっ、て・・・。」



「いいんだよ。オレにだけはどんなにずるい手を使ったっていいんだ。

 お前にはその権利があるんだからさ。




 お前が ―――好きだよ・・・。」




まるで何処か遠くの地へと誘うように、ゆっくりと自分に差し伸べられる手には魔力があるようだ。

その手を取らずには立っていられなくなるような気持ちにさせる。





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