いったいどうしたんだい?

長いこと自分の多忙を理由にして人のことをかまっていられない日々が続いていましたが…何とか時間を作って行ってみようと楽しみにしていただけに残念ですが次に期待します

プレッシャーになりますかねぇ

(2012/10/09 01:00:58 AM)

逆襲のtransit

逆襲のtransit

2012/09/30
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カテゴリ: カテゴリ未分類
中林家の母…つまり俺のお袋の武勇伝は枚挙に暇がない。
俺がまだ子供だった頃、お袋が救急車で帰ってきた事があった。
幼少期の心持ちには救急車がよもや自宅の目前に停まるという事自体も大変な驚きであったが、救急車をタクシー代わりにしてお袋が帰ってきた理由にも大層驚いた。
なんでもお袋は当時勤めていたデパートの自動ドアが開いている…ないしははじめから存在しないと信じて疑わず、真っ直ぐに突進し、脳震盪という誠に残念な結果に至ったらしいのだ。
その後慌てた周囲の人々が要請した救急車にお袋を詰め込んだとの事だが、揺れるストレッチャーの上で意識を回復したお袋は

「カレーの鍋ばつけっ放しにしとりますけん、ウチまで送ってください!!」

と、勢い跳ね起きたという。
聞けばカレーの調理中に材料をそっくり仕事場へ忘れて来た事を思い出し、慌てて取りへ戻った事に端を発するのだそうで、半ば巻き込まれる格好となった親父も俺も、お袋が執念で作り上げたカレーを食いながら、一様に絶句の体であった。

ある時等は包帯グルグル巻きのミイラ姿で帰ってきた。



それは本物のミイラを見た事が無かった俺の、歯に衣着せぬ感慨であったが、なんでも今回は車を運転する親戚ケイコおばちゃんの”一瞬”の判断ミスが災いし、交通事故に遭遇したのだそうだ。

「そう言えば私、ケイコさんと買い物しよる時に、玉子のパックば落として割ったっちゃんね…今思うと多分アレが虫の知らせやったとよ」

お袋は目出し帽の様な包帯の隙間から凛々しく虚空を見つめ、自らの推論を疑う事をしなかったが、母の言う様におばちゃんの一瞬の判断ミスが事故の原因ならば、その玉子を割ってなければ事故そのものに遭わなかったのではなかろうか?という30年近く温めてきたかつての直感に、俺は今でも力強く頷いてしまうのだ。

降りのエスカレーターに登ろうとして膝カックンなんかはザラで、登りのエスカレーターを降りようとして帰ってくる事もある。
ある夜などはCDからPCへデジタル録音中に部屋へ入ってきたお袋に

「今録音中」

と振り返ったら

「しー」

と人差し指を立て、静かに部屋を出て行ったり。
かと思えば覚えたての携帯メールで

『あきおさん、電話代の請求が、大変しつこくきとるよ\(^o^)/』


極めつけは駅での事、切符を入れないまま自動改札に突入したお袋は、まるで流れる様な見事な所作で後ろの人が入れた切符をキャッチしてホームへ雪崩れ込み、切符の持ち主を大いに慌てさせた。(運悪く同道していた親父は知らない人のフリをするのが精一杯だったそうだ)

…以上の様にもしかしたらこのヒトは全て分かってやってるんじゃなかろうか?と邪推されても致し方ない言行に富んでいるのである。



「明日帰ってくるけん、もつ鍋ば用意しとって」

そんな痛快を薄っすらと期待しながら故郷へ切る俺のハンドルは軽かった。
高校を卒業して福岡、東京とかれこれ20年近くも離れて過ごしていたが、Meguruちゃんでの旅を終えてからこっち、一ヶ月近くも家を空けていた事は無かった。


「ん?」

覚悟していた違和感にはすぐに気がついた。
軒先の蛍光灯にチラチラと照らされた中林家のタタキで俺を出迎えたのは、鉄砲玉だった娘息子の代わりに16年、親父とお袋の心の隙間を埋めてきた、愛犬ハナの首輪だった。
手に取った意外に太い首輪の内側には、まだ色褪せていない小麦色の柴毛がみっしりと絡みついていた。
エンジン音に気付いたらしく、玄関先にお袋の気配がした。
俺は慌てて首輪を元の場所に置くと、いつもの様にややムスッと

「ただいま」

とだけ言った。
お袋はどこか嬉しそうに俺に発泡酒とポテトチップスを手渡しながら、親父が俺の帰宅を楽しみにしていた事、しかしながら明日は仕事が早いのでもう寝入ってしまった事を教えてくれた。



明けて昼からは近所の風呂へ行った。
何も考えたくない時、俺は明るいうちから風呂へ行く。
サウナで火照った身体を東屋の板張りに横たえていると、明日をも知れぬ旅の空にテントを乾かしていた頃を思い出す。
そしていつも言い聞かせる

(なんとかなる…なんとかならんかった事が無い)

と。
実際その通りで、人生には都度都度今度こそ絶体絶命!なんていう局面が幾度も訪れた。
しかし結局その度毎になんとかなっている。

…なんともならなかった事は無い

汗の量だけ心を軽くして中林家へ、iPhoneの着信にお袋があったので掛け直すと、もつ鍋の材料を買いに行きたいので車に乗せてくれという。

「準備の悪かね」

と、電話口では悪態をつきながらも、まるでこれから恋人とドライブにでも出掛けるかのように散らかった車内を片付けている自分に少々驚きつつ、俺はお袋を迎えに実家へと向かった。
買い物中は北九州での話を一言もしなかった。
ただ当然の様に投げ掛けられるお袋の問いかけには

「うん、全部上手くいきよるよ、うん」

とだけ、答えた。

二年をかけて歩いて日本一周をした時も

10年越しの夢だった処女作出版の時も

九州一周ゴミ拾いウォーキングの時も

バイクの免許取り立てで日本一周をした時も

その旅が雑誌連載された時も

紆余曲折の果てにMeguruちゃんでの旅が決定した時も

その旅がテレビで特集された時も

お袋はいつも、俺の活躍話しが大好きだった。
そして俺はあたかも乙女のような眼差しで根掘り葉掘りと話を聞いてくれるお袋に、まるで己が講談師かバナナの叩き売りでもあるかのような大袈裟な身振り手振りを交え、誰も全く興味の無い自分語りをするのが大好きだった。

そして今回気がついた。

彼女は知っていたのだ

お袋は俺の自慢話に興味があったワケではあるまい

ただ自分がそうする事で愚息が無二に喜ぶと

彼女は全て、知っていたのだ


ーせめてお袋の前では堂々としておかねばなるまいー

ーそれが渡世人である俺に出来る、唯一の親孝行だー


子供の頃、親父の車窓で流れた故郷の風景にハンドルを切りながら、今の俺にはそれが精一杯の虚勢だった。

「海に行こい、海」

お袋の言う『海』とは有明海に沈む夕日を背負い多良、普賢連岳を遥かに臨む、全長1kmにも及ぶ堤防道路の事であった。
それは今の愛車を8万円で納車した昼下がり、嬉しくてお袋を連れて出した思い出の場所でもある。
車を停め、俺は砂利と貝殻をいっしょくたに練り込んだ古いセメントの堤防によじ登り、お袋はその胸の高さ程もあるセメントに首だけちょこんとのせてしばらく、すっかりと早くなった緋色の落日に目を細めていた。

「上手くいきよらんとやろ、仕事」

背後から突如通り魔の様に俺を追い越したお袋の一言は衝撃的だったが…同時にそれは心の何処かで待ち焦がれていた助け舟でもあった。

自分でも分かっていた。

今回のプロジェクトが明らかな失敗である事に。

しかしそれを認める勇気が、俺には無かった。

表面を取り繕い、なんとかなっていると自分に言い聞かせ、心からしきりに聞こえてくる鈍い軋みに、俺は必死になって耳を閉ざしていた。
お袋はどうやら少し以前から、俺の無言の煩悶に気づいていた様子だった。

「ウンウン」

振り返らず無言で頷き、眼下に拡がる漁を終えた有明海の海苔畑を見つめながら、俺は一人涙が止まらなかった。
如何に森羅万象に通じようと、稀有な経験に身を苛もうと、親の前に子は、いつまで経っても子のままなのだろう。

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

堤防の上に立ち上がり、胸の底に淀んでいた大ボケのカスを故郷の海に盛大に吐き出して、俺は肩でグイと涙を拭った。

「ホラ帰るよ、お父さんの待っとるばい」

俺の泣き顔に気付かないフリをして

そそくさと助手席の人になろうとする

すっかり小さくなったはずのお袋の背中が

その時は何故かかつて手を引かれていた

幼子の頃の様に頼もしかった



「なんね、遅かったやんね」

そして待ちぼうけを食った親父に笑って詫びて、その晩一家で盛大につついたもつ鍋は…なんだか今までで一番美味しく、幸せの味がした。



本日平成24年9月29日土曜日は

『Bar•Transit』

の開業予定日でした。

しかし北九州市門司区中央市場に開業予定だった

『Bar•Transit』

計画はこの度、完膚無きまでに失敗致しました。

それは今まで期限を切り、公表をしたプロジェクトは全て確実にやり遂げてきた俺に取って、初めてとなる手痛い敗北でした。

敗因は全て

『自らの見通しの甘さ』

にあります。

しかし、このプロジェクトの敗北を素直に敗北と認め、徒手空拳に事実を受け止める事が、明日からの中林あきおになにより必要な事だと思い、幻となった独立記念日に、かくなる駄文の筆をとりました。

今回のプロジェクトに於ける数々の無責任な発言、及び発信を猛省するとともに、大変恥ずかしく思っております。

じき40にもなろうとする大の男が

出来もしない事を公表してしまい

大変申し訳ありませんでした










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Last updated  2012/10/01 12:17:38 AM
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Re:敗北宣言(09/30)  
なにわのトム さん
中林さん、こんばんは。
非常にしんみりする文章ですが、中林さんらしくなかばい!
人間は失敗を経験することで、更に大きくなれると
思います。
次のプロジェクト期待してます。頑張って下さい。

俺も有明海の夕日が見たかぁー。
(Meguruちゃんはサヨカ様の駐車場で冬眠中???)

(2012/10/01 06:44:33 PM)

Re:敗北宣言(09/30)  
千葉 隆 さん
中林さん、お久しぶりです。

なぁ~に、命があればどんな事でも必ず成し遂げられますよ。

お身体だけは無理せずに、また新しい一歩を踏み出して下さいね! (2012/10/02 08:38:24 PM)

Re:敗北宣言(09/30)  
ぐむちゃん さん
たまには自分以外のせいにしてみなさい。
全て自分の力で何とかなるとおもう方が思い上がりかも!?

リトライに期待! (2012/10/03 11:02:56 PM)

Re:敗北宣言  
えっちゃん さん
でも、私はちゃんとこの日にカクテルを作ってもらえましたよ。
美味しくて嬉しかったな~。
また行きます。
その時もよろしくです(^-^)/
(2012/10/04 08:09:49 PM)

Re:敗北宣言(09/30)  
丘の上のコンビニ さん

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