「てるてる坊主」(仮題) page2



私が渚の事を聞いたのは高校に上がる春だった。

この街を後にしてから私は この街の人間とは誰一人として連絡を断っていたので
事件から半年以上も経っていた。

あの日 この街の友人と電話していた母の顔がみるみる青ざめ 電話を切る時には泣き出しそうだったのを良く覚えている。
受話器を置いた母は震える声で

「蒼維…あなたが生きていて良かった」
と言いながら私を抱きしめた。

訳も分からず母の腕に抱かれた私は 一体何が起こったのだろうかと思った。

そんな私に母は 暫く考えた後

「あのね、蒼維…一ノ瀬 梨惠ちゃん覚えてる?」
と言い
うなずいた私を確認してから

「学校で…学校で…首を吊って自殺したんだって…もう半年も前なんだけど…」

と告げた。

私は目の前が真っ暗になった気がした。

「何で? 何で一ノ瀬さんは死んだの?
何か原因が有るんでしょ?」

「うん…あなたと同じ。 あなたと同じ目に遭って自殺したみたいなの…」

私はガタガタ震えだしてしまった。




―忘れたくて蓋をしていた記憶達が 頭の中を占拠しだしていた。―



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