9章 潜入・・・投獄
黒いスーツ姿でネクタイの使用人・・・に着替えたオルクス
「あとは・・・髪のほうね」
「布でも巻くさ」
「使用人が頭に布?」
「別に問題はないはずだ」
「思い切って怪しい」
「・・・」
渋々文句を言われつつ、外のエレカーに乗る
エルブンマント等の装備は袋に入れてある
「で・・・どこからい入るつもりなの?」
「玄関からだ、窓から侵入したらかえって怪しい、兵士はお前が話をつければいい」
「分かったわ・・・でも、資料室で何をするつもりなの?」
「お前には知らなくていいことだ」
「・・・・・ふんだ」
―メルトキオ城―
「止まれ!城になんのようだ?」
「中貴族スィラーロ家の娘、アセリス＝スィラーロです。とある用のため来ました」
動揺で兵士の1人は身を引く
「し、失礼しました・・・しかし用とは?」
「研究者として、城から機具を直接借りることになってるので来ました」
「そちらの男は?」
「・・・執事です。動向の許可を」
「は、はい。どうぞ」
(扉が開けば後はこっちのものだ、資料室は多少古びたとこだからな見つけるのはたやすい)
アセリスとオルクスが過ぎた後、兵士の1人は固まっていたがもう1人は冷静にオルクスを見ていた・・・
「このまま資料室に向かう」
「!そうしたら、私達が・・・せめて許可を取りに行くくらい・・・」
「知ったものか・・・来い」
***************
－資料室－
「ここか・・・さてと、さっさと終わらせるか」
「・・・(資料がいっぱい・・・あぁ、あれはマナの存在経路と精霊の生まれ方)」
「(構築上の一定のマナ、そのマナがなくなれば周りから再び来て再構築・・・)」
大量の本の中、二人は何も飽きることなく隅々の本を読み漁っていく
という前に、読んでていいのか?アセリス・・・
「(天命・・・定義のマナがあろうと別のマナと混ざり変化・・・)」
「(・・・ん?現状のままの場合、マナがこちらに来ている以上
隣同士で反映している衰退世界はいずれ滅びる・・・?なんだ、衰退世界って・・・)
・・・おい、アセリスこの衰退世界って分かるか?」
「・・・・(ぶつぶつぶつ)」
「ちっ・・・しゃーない、また資料を・・・」
しかしその瞬間「バタン!」と扉が大きな音を立て開く
『！？』
『アセリス様はおられるか!!』
兵士長と思われる男が叫ぶ
その呼び声に無言で前に出るアセリス
「一緒に居た男はどこですかな？」
「・・・(まずい)」
「此処には・・・もういません」
「ほぅ?・・・おぃ、中を探せ」
指示とともに兵士が中を詮索しはじめる
「・・・」
オルクスはというと本を一気に重ね、天井を見えないようにした
そして角にはりついている
時間は多少経過する・・・
「見当たりません」
「ふん・・・ならば、不法侵入でアセリス様を拘束、スィラーロ家の当主に裁判をけっこ―――」
刹那、兵士長の首に鎧と兜の隙間から手刀がくる
「えっ・・・ぁ・・・」
アセリスは周りの兵士が、と思ったらしいが最初に倒されていたようだ
「さっさと出る――」
しかし何かの気配・・・今度は潜めている
「ちっ・・・おい、こいつを護符代わりに持っておけ」
―刻まれし紅き痕を残すは、凍てつきし爪、その真価 今現れん―
瞬間的にルネの魔術書をアセリスに投げる
オルクスの手にはアイス・クロウの変化形、約60センチほどの氷の剣、フリーズブレイドが現れる
「(接近戦で一気に決める!!)」
全方位に気を配らせる
(・・・まだ幼いと聞いていたがこれは見事、そこいらの賞金稼ぎが倒せないのも納得だな)
「!!(殺気が上がった)」
冷や汗が一つ流れる・・・
しかし、全方位に配らせていた気が無駄に終わる
髑髏の仮面をつけた男が1人、廊下を歩いてきた
それも殺気を出しつつ
「・・・何者だ」
「君が賞金首のオルクスだね」
「ふん・・・だとしたらなんだ」
「まぁ・・・俺も賞金稼ぎとしてやっているが・・・あくまでも表向きだ」
「気配を楽に操れるんだ、アサシンだろう?」
「御名答、悪いけど生け捕りにさせてもらうよ」
パチン、と指を鳴らすとオルクスの後に別の気配
それに気を取られ後ろを向いてしまう
「まだまだ修行が足りないね」
すると髑髏の男の声が再び前から・・・
ドスンと鳩尾に膝蹴りをくらう
「!!・・・(失敗した)」
オルクスはその場で倒れ、気を失った・・・
「さて?アセリス譲。賞金首に脅されたのは仕方ないこと。王へは私が報告しましょう。あなたは屋敷に帰還を・・・」
アサシンが勘違い(?)をしていたのは幸いだっただろう・・・
＊＊＊＊＊
メルトキオ闘技場・牢屋
「くそが・・・不意を突かれちまった」
しかもルネの魔術書をアセリスに渡したままだ
牢屋の中は30メートルほどの高さに窓がひとつ、入り口は鉄の扉だ
さらに御丁寧に牢屋の中に魔術結界まで掘ってある
つまり、独房だ・・・
「しゃーないな・・・今更でも、基礎の復習しとくか・・・」
＊＊＊＊＊＊＊＊
人魔物・管理室
「へー・・・あのS級の賞金首が・・・」
「16歳の子供ってほんとだったんだな」
「しばらくしたら広場で公開処刑がされるらしいね」
「ま、それまで此処で働いてもらおうかな、ドラゴンナイトにワイバーン、やっと試せそうじゃん?」
「・・・オルクス・リィルマクス・・・あの人ならどうかな」
1人、楽しそうにせず、別の期待を膨らませるものが居た・・・
© Rakuten Group, Inc.
