序章 堕ちた心と腐った信念 第三話 後編
せめて静かに・・・
足掻いて見ろ、退屈させるなよ
勇気と無謀は違う・・・恐れない奴などこの世には居ない
序章 堕ちた心と腐った信念 第三話 後編
「あ・・・あぁ・・・
こいつ・・・本当にただのPCか・・・」
戦意を喪失し座り込んでしまっているスピアマン
驚愕の出来事に声も震えている
圧倒的威圧感
スピアマンは耐えられなくなっていた
「ただのPCじゃない・・・
悪魔憑きかな・・・居るんだ、俺の中に」
そう、確かに居るんだ
こいつと一緒に居るのは大分昔から
こいつは俺に力をくれた
だから
俺はこいつに心を捧げた
「心を無くせば・・・何にも感じなくなる
絶大な開放感、もう何も恐くない
人は心が有るから弱いんだ
くだらない情なんて持たない
徹底的にやるんだ・・・己の気が済むまで」
そう言い、両手に持った二本のパルチザンを振り上げた
「光と闇のパルチザン・・・これも悪魔がくれた
ルシファーは・・・俺になんでも与えてくれた
喜び、悲しみ、怒り・・・人の愚かな感情は全て
そして俺は心なんか要らなくなった」
徹底的にとは言ったが
まだ俺は
もう誰も殺さないなど
まだくだらない情に動かされてる・・・
ﾁｯ・・・
もう1人の俺はまだ潰れてないのか・・・
「決めた・・・お前等を殺して
俺はもう1人の俺を叩き潰す！！！」
悪食は二本の槍をスピアマンの首元へ近づけた
恐怖で動けないスピアマンは逃げる事ができない
ただ恐怖に引き攣った面を晒し
悪食を震えながら見つめているだけ
「やめろぉあああああああああ！！！」
いつの間にか悪食の後ろに回り込んでいたソードマン
グリースを振り上げ悪食の背中を斬り付けたが
呆気なく鎧に弾かれてしまう
悪食は二本の槍を一旦地面に刺し
ソードマンの方に振り向き、グリースの刃を片手で掴んだ
「こんなもんで・・・俺を殺そうとしたのか？
ここに座り込んだこいつを守るためにか？
お前は・・・人を守ろうとしたのか？
くだらない人間の情で・・・」
悪食はそう言いながらグリースの刃の部分を握り潰した
ソードマンには何がおきたのか分からなかった
そのまま持っていたグリースはヒビ割れ、バラバラになった
「守れないくせに・・・守れる保障もないくせに
粋がるな・・・所詮無力でしかないくせに
心で動かされる愚かな人間のくせに」
悪食はまるで悪魔の形相になっていた
自然とソードマンは震え、立って居られるのがやっとの状態
しりもちをつくほどの威圧感、そして気迫
どうしようもない恐怖がソードマンに襲い掛かっていた
「なんにも考えず本能で動く・・・
だからお前等弱いんだ 」
悪食はそう言い放ち、片手でソードマンの首を締めながら持ち上げた
ソードマンは苦しそうにかすれた声をあげながら
じたばたと足掻いていた
その光景を呆然と見ているクレリック
戦意はとうに無く、ただ仲間のやられる姿を震えながら見ていた
「そうだ・・・こんなもんさ
もっと恐怖に素直になれ
お前等どうせ、死ぬんだから
せめて、恐怖の中で足掻いてみろよ 」
悪魔は笑う。全ての者を不幸にするために
悪魔は舞う。全ての者に災いをもたらすために
悪魔は戦う。全ての者を滅ぼすために
いかに悪魔らしく、悪魔で在る
悪食の背中からさらに4枚の黒い鋼の翼が現れ
合わせて6枚の翼が開いた
ソードマンの首を絞める片腕の腕力が増し
ソードマンの動きが止まった
「旦那ぁ・・・ちと、やべぇかな
6枚か・・・そこまで成長したってことかい
過去にヘマなんてしたからだな・・・俺も居たかｗ」
誰かが悪食にそう言うと
悪食はソードマンを降ろした
聞き覚えのある声を聞いたからだ
軽くあざけた感じの口調
その声に悪食は呆然としている
「久しぶりっつーか・・・2年ぶり？ｗ
いやぁ～だいぶ見ない間にそんなに変わりなすってぇｗ
楽しくやってんのかな？ｗまぁ結構楽しそうだったかｗｗ
でもさ、これは流石に見逃せないんだｗ
プレイヤーとして、人として、 GMとしてねｗ 」
悪食には見覚えの有る男
2年間感情を表に出さなかった悪食に
どうしようもない怒りが湧き出ていた
悪食の周りに4本の槍が姿を現し
悪食の周りを囲むように宙を舞っていた
「あぁ、久しぶりだな・・・
来るのが遅すぎるんじゃないか？・・・
なぁ・・・旋風」
オレンジ色の長いツンツン頭に迷彩服姿
手にはカンディネという短剣を所持
2年前の事件の関係者、旋風
姿を確認し、落ち着いた口調で話す悪食
そして、地面に刺した二本のパルチザンを引き抜いた
その瞬間、宙を舞っていた4本の槍は一斉に旋風へと狙いを定めた
「あ～ぁ、やる気まんまんかよｗ
今日はちょこっとお話しに来ただけなんだけどなｗ
・・・・・聞いてる？」
旋風が言い終わった瞬間、4本の槍が一斉に旋風に向かって飛びかかった
旋風は大きく溜め息をつき、4本の槍を全て弾き返した
そして一瞬の内に旋風の体は白く光り輝く鎧に覆われていた
両手には【パタ】という武器に相似している光り輝く武器を持っていた
「殺り合う気は無いんだってのｗ
旦那には、生きててもらいたいからねｗ」
ニコニコしながら語る旋風
昔見慣れていたはずが、今では怒りが絶えず湧き出る悪食
「生きててもらいたい？
どういう意味だ？俺を殺して悪魔を回収するんじゃないのか？」
この状況で口を開いた悪食に少し驚く旋風
そしてまたニコリと笑って話を続けた
「まぁ、目的なんてコロコロ変わっても別におかしくはないさｗ
殺しはもうやめｗ
やっぱり旦那のPCって、興味持たれるんだよね
最高位悪魔を宿して精神崩壊無しｗでも心は無くなっちゃったかな？ｗｗ」
心はまだもう1人の悪食が持っている
あの事件以来ずっと奥に閉じ込めたもう一人の悪食
最近はほとんどボロボロになってきているが
だからまだ悪食には感情が少しばかり残っている
「そんな逸材殺しちゃう訳にも行かないっしょｗ
だから、 旦那ごと捕獲する事にしたんだｗ 」
序章 堕ちた心と腐った信念 第三話 完
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