三章 私から君に狂喜ヲ 第三話
「チェイサーなど・・・私達の敵ではありません」
「もっと厄介な連中が居ますからね」
厄介な連中・・・？
「さぁ、行きますよ！『中傷する者』アスタロト！！！！」
三章 私から君に狂喜ヲ 第三話
同じ力・・・なんとなく分かる
チェイサーというのは、あの真っ黒のモンスターの事・・・
そいつ等に攻撃されれば命の保障は無い事・・・
命の保障は無い・・・ここが一番引っかかる・・・
「悩んでいますね」
「私としてもいきなり理解しろとは言いません」
「少しずつで良いですよ・・・ｸｸｸ」
狂鬼は見透かしたように俺に言った
「え・・・あ、あぁ・・・」
「聞いてもいいか？」
「どうぞ。」
「同じ力って・・・お前もこの力を使えるって事だよな？」
俺と同じ境遇の奴が他にも居るということ
今はそれが一番気になる
「えぇ、そうですよ」
「あなたより長い事、この力と付き合ってますよ・・・ｸｸｸ」
「そうか・・・」
それと・・・なんだ・・・・
聞きたい事がいっぱいあるのに・・・
どう聞いていいのか・・・
すると不意に狂鬼は語り始めた
「チェイサーを・・・あなたはどう思いますか？」
どう思う・・・か
「・・・・常識から外れた存在」
「バグか・・・ウイルスか・・・だな」
今はこれくらいにしか思えない・・・
そして狂鬼はまたﾆﾔﾘと笑みを浮かべながらこう言った
「そうですか・・・いや、結構です」
「教えましょう・・・私が知ってる限りの」
「Chaser in the darkの・・・事をね・・・ｸｸｸ」
Chaser in the dark・・・
闇の・・・追跡者・・・・
「Chaser in the dark・・・GMがそう名付けたんですよ」
「なんのために生み出したのかは分かりませんが」
「ｸｸｸ・・・ハッキングした甲斐がありましたよ」
ハッキング？
こいつ・・・ハッカーか・・・
GMが名付けた・・・生み出した・・・・
バグなんかじゃない・・・ウイルスなんかじゃない・・・
「なんなんだ・・・チェイサーって」
「バグでもない、ウイルスでもない」
「じゃあ一体・・・」
狂鬼は少し困った顔をしながらこう言った
「・・・私が思うに、限りなくAIに近い存在としか」
「しかし・・・たかがAIなどで片付けられる問題ではありません」
「奴らは危険・・・ですが」
「私達のように力を持った者なら」
「撃退も可能ですよ・・・ｸｸｸ」
「あぁ、良い事を思いつきました」
困った顔から急に笑みに変わり
「これから」
「チェイサーに会いに行きましょう・・・ｸｸｸ」
チェイサーに会いに行くだと・・・
急に何を・・・
「なんで急に・・・」
「危険なんだろ？わざわざ何の為に？」
正直俺はもう会いたくも無い・・・
あんな目にあって・・・もし攻撃されていたら
死んでたんだろ？・・・
「あなたに理解して貰わねばなりません」
「自分の力を、自分の中の【彼】を」
「あなたは受け入れなければいけません・・・ｸｸｸ」
彼・・・俺の頭の中で聞こえたあの声
あの声の主の事を言ってるのか・・・
「まぁ・・・チェイサーは自ら会いに行くと言うより」
「待つほうが早いかもしれませんね」
「悪魔の化身がここに二人」
「チェイサーはもう嗅ぎつけていますよ・・・ｸｸｸ」
狂鬼がそう言った直後
地面の一部がが突然真っ黒に染まった
分かる！・・・来る！！
「来ましたね・・・ｸｸｸ」
「決して目を離さないように」
「これから見る事は全て受け入れるように」
「お願いしますね・・・ｸｸｸ」
真っ黒くなった地面からチェイサーが這い出てきた
俺達を見つけ確認すると
あの時のように裂けた口がﾆﾔﾘと笑う
「おい・・・どうするんだ？」
「このままじゃ・・・」
「おい！狂鬼！！・・・」
狂鬼もまた笑っていた
目を見開いて
さっきまで感じなかったこいつから
恐怖が感じられた
「チェイサーなど・・・私達の敵ではありません」
「もっと厄介な連中が居ますからねぇ」
厄介な連中・・・
そう言い、狂鬼はチェイサーを一点に見つめた
「さぁ、行きますよ！『中傷する者』アスタロト！！！！」
狂鬼が叫び、一瞬眩い光に目が眩んだ
そして・・・俺は・・・初めて目にした
狂鬼は・・・【変わっていた】
体中を覆う黒い鋼の鎧
背中に生えた巨大な黒い鋼の翼
体から沸き出る黒い瘴気
「ほら、良く見てください・・・ｸｸｸ」
「これが・・・あなたの持つ力ですよ！！」
・・・馬鹿な
これを俺は今から全て受け入れろと・・・
狂鬼の目は完全にイッている
俺にはこの時点で分かった
【あいつ】はこれからぶち殺される
三章 私から君に狂喜ヲ 第三話 完
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